忘却少女の英雄譚
鷲宮 乃乃
0章
第1話 ミリア・アムラント
1人の少女が廊下を走って逃げている、その後ろから数人のメイドが声を出しながら追いかけているという奇妙な光景だ
「お待ち下さい!ミリア様!」
「嫌ですよーだ」
ミリアと呼ばれる少女は空いている窓を発見すると窓のふちに登るとメイド達の方を向いて
「では!サダラバー!」
そう言い残し飛び降りたが
「そこは「さらばだ!」ですよ...お嬢様」
下にいたもう1人のメイドに捕えられていた
「...なんでここにいるのジル」
「あれは私達の罠ですよ」
「...さいですか...だがここで諦める私ではないぞよジル君」
ミリアは懐から球をだし地面に投げると煙がまい、ジルと呼ばれたメイドの腕からはミリアは姿を消していた
「お母様に伝えといて、夕飯までには帰るって!...ではサバダラー!」
少女は一目散に逃げていき屋敷の森を抜け広い城下町へと出ると、店をキョロキョロと見ながら歩いて行くと店を出しているおじさんに声をかけられ足を止める
「おっ!ミリア様じゃねーか...今日は逃げられたみてえだな」
「ふふんっ!私にかかればちょいもんよ!ハッハッハッハ」
「やっぱ、ミリア様本当に貴族の子とは思えねえな」
「これこれ、そう褒めるでない」
「褒めてねえぞ」
コントみたいなやり取りをしているとミリアの周りに人が集まりはじめ賑やかだった城下町はさらに賑やかになった
「ミリア様、これどうぞ、今朝取れたリンゴでさぁ」
「いいの?いくら?」
「金は取らねえですよ」
「それはダメよ、こういうのはキチンと払うのが礼儀なの」
ミリアはポケットからリンゴの料金をわたし受け取るのを確認するとリンゴに齧り付く
「うんまぁー!...そうだ!ねえねえもう十個もらってもいい?リンにもあげたいから!もちろんその分は出すからさ!」
「また城に忍び込むんですかい」
「捕まらないようになミリア様」
「大丈夫よ、城の兵とも仲良しだもの」
ミリアはリンゴが入った袋を受け取る
「それじゃあみんなまたね!いざ商売繁盛ありがたやー!」
訳のわからない言葉を去り際に言って周りを困惑させながらもミリアは城下町を走り去り、シーンとなったがおじさんが手をパチンと叩き喝を入れた
「嵐のように去っていったな」
「さ、商売すっか!静かだとミリア様に怒られちまうしな」
「んだな、再会すっぺよ」
城下町は再びざわめきを取り戻した
一方ミリアは城の壁を巧みに登っていき目的地に着くと窓をコンコンと叩くと窓が開かれた
「フフッ、どちら様ですか?」
叩いた人物を知っているがあえて彼女は聞いた
「正解はー...あなたの大親友リンちゃんのミリアちゃんでーす!」
ミリアはリンを抱きしめながらベットに飛び込んだ
「ミリアったら、遅かったじゃない、また町の人と話してたの?」
「うん...あ、でねでね!これリンゴ!町の人から買ったんだ!」
「まあ新鮮ね、ただここでは食べないでね、私のベットがリンゴの匂いになっちゃうから」
「リンゴの匂いがするベットか...めちゃくちゃ良くない?」
リンは良くないと言いながらミリアの手を取りベットから降りる
「それで?今日もリンゴで何か作ってくれるの?」
「フッフッフ、今日はねアップルパイを作っていくよ」
「あっぷるぱい?」
リンは馴染みのない言葉に戸惑うがミリアはこれが普通なのですぐに冷静さを取り戻した
「まあ食べてみればわかるよ、ちなみにウチのメイドには拍手喝采雨嵐だったよ」
「それは楽しみね」
「じゃあキッチン行こうか」
城のキッチンに移動し誰もいない事を確認するとてきぱきと道具を用意し、あっという間に作り上げた
「いい匂い...これがあっぷるぱい?」
「せやせや、さあさあ、お食べんしゃい...そこで見てる人達もどうぞ」
扉の方を見るとこの城のメイドさんや兵の人達が入ってきた
「すみません、お嬢様...その覗き見するつもりはなくてですね、いい匂いがしたので、つい」
「警備しなきゃなんねえってのにすいません」
「別にいいわ、あなた達も一緒にサボりましょ、ミリアがあっぷるぱいなるものを作ってくれたの、一緒に食べましょう」
そう言い席に座らせるととリン達はまずはひとくち食べるとサクサクと音をたて飲み込んだ
「こ、これは...美味しい」
「なんて美味しいんでしょう」
「うめぇな、このあっぷるぱいってやつ」
「沢山あるから食べてね」
ミリアは食べているリン達をニコニコしながら眺めていた、その後ミリアはリンと部屋に戻るともうすぐ日が暮れそうだった
「あちゃー、もう帰らなきゃ」
「泊まってもいいんですよ?」
「うんにゃ、帰るよ...お父様とか兄上達が帰ってくるし」
リンは少し考え「そう」とだけ返すとミリアは窓を開け来た時と同じように帰ろうとしているた腕を掴まれた
「リンちゃん、どったの?」
「また...会えるよね?」
「何その今生のわかれみたいなセリフ...あ、そういえばこれ渡してなかった」
ミリアは懐から四葉のクローバーのしおりを渡す
「これって」
「リンちゃん、本好きだししおりとかあったら便利かなって思って作ったんだけど...どうかな」
「貰っていいの?」
「もっちよ...じゃあ帰るね、またね」
照れたのか逃げるようにしてミリアは帰っていった、リンはしおりを抱きしめるようにぎゅっとしてミリアの帰ってきた方角に
「ありがとう、ミリア」
その感謝の言葉は空に消えていった、この時リンは知らない、これがミリアと会った最後の日だったという事を
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