第7話 人攫いと封印の祠
セツナがクオンの娘となり2年がたち、セツナは9歳となり、今日も稽古に取り組んでいる
「いい?今日は式神について教えていくわね」
クオンが紙を着物の裾を取り出した
「式神よ主の命に答えよ」
詠唱が終わると紙の中から鳥のような生物が火を纏い現れクオンの肩に止まる
「これが、私の式神・セキです」
「こんな近くで見るの初めてかも、よろしくねセキ」
セツナが手を差し出すとくちばしで優しく突いてくれた
「今日はセツナちゃんに式神と契約してもらうらね...はい、これ」
クオンが持っていた紙、式紙を受け取った、式神と契約をして式紙は式神となるのだ
「さあセツナちゃん、教えた通りにやってごらんなさい」
「うん、ええっと、式神よ我を主とし我の前に姿を表したまえ」
昨日クオンが教えた通りに式神を呼び出す詠唱を唱えたが、何も起きなかった
「おかしい、詠唱は合ってたはず」
「うーん、私もしかして式神さんに嫌われちゃったかな?」
「そんな式神がいたら私がぶちのめすから心配しないで、もう一回やってみて?」
そこからセツナは何度も試したが式神は出てこなかった
その翌日、セツナはミコトにその事を相談してみた
「っていう事があってさ、私が問題なのかな?」
「うーん、ちょっと借りてもいい?」
セツナから式紙を受け取り見てみるが外傷は見当たらず綺麗な紙だった、紙を返してもらうとまあいいや、と切り替え包みからあるものを出した
「じゃじゃーん、作ってみたんだ食べて」
「これは、いなりの中にお米?」
「うん、お米をいなりでくるんっと包んでみた」
ミコトは箱の中に入っているいなりを手に取り口に運んだ
「お、美味しい...」
「ほんとう?よかった〜」
「でも、どうして急に料理なんてし始めたの?」
「わかんない、けどなんか作りたくなってさ、ツバキが言うには前の記憶の影響かもって...私ってここに来る前はとんでもない料理人だったりして」
なんてね、と冗談混じりに笑っているとミコトがうとうとし始めているのに気づいたセツナは肩を寄せた
「眠いなら、私の肩を貸すよ?」
「いや、大丈夫、膝をかりるね」
どこまでいってもぶれないミコトはセツナのふとももに頭を置くと幸せそうに眠り始め、しばらくするとセツナにも睡魔が襲いかかり気絶したかのように寝る直前、誰かが近づいてきた気がしたがそのまま眠りについた
・・・・・・・・・・・・・・・
セツナが次に目を覚ました時、男達の下卑た声が聞こえてきた
「こんなうめえ仕事はねえよなぁ、ガキ2人を誘拐するだけで金が貰えるなんてよ!」
「兄貴、本当にこの2人誘拐して大丈夫なんですか...あの将軍の子と宮司の子ですよ?」
「兄貴」と呼ばれた男の子分だろうか、心配する声をだしたが兄貴と呼ばれる男は「心配すんな!」、そう言いながら手に持っている酒を口に運んだ
「忘れたのか?俺たちが今いるここは、封印の祠がある洞窟だ、まさかここ奴らもここにいるとは思わねえだろうよ!」
「封印の祠なんて大層な呼ばれてるが、どうせ名ばかりのもんだろ」
「そ、そうっすよね、ははは!」
子分の男はごまかし笑いをしながらセツナの作ったいなりを口に運び食べ始めてていると、ふと牢に入れてる2人の様子が気になりチラリと見るとセツナの姿が消えていた
「あ、兄貴!将軍の子が消えてます!」
「んだと!?おい!周りを探せ!まだここから出てねえはずだ!」
セツナは牢の扉を強引に開け、隙を見てここを抜け出し、今は物陰に隠れている
(ここもバレるのは時間の問題かな...待っててねミコト、こいつら片付けるから)
物陰から冷静に何人組の犯行か確かめ、周りを見渡す
(相手は4人、武器になりそうなものはこの小さい刀...1人ずつ落ち着いてやれば出来るはず)
クオンとの稽古を思い出し、イメージを固めて覚悟を決めると、風魔法で飛び小刀を握りしめて落ちる勢いを利用してまずは1人に斬りかかったが腕を掠り狙いを外してしまう
「っく!まずった!」
「くぉっ!?いってえな!!」
男に勢いよく殴られ吹き飛ばされ壁に体を打ちつけてしまった
「うっ!」
「依頼主から傷つけるなって言われたけどよお、これは正当防衛だよなあ?」
倒れているセツナの服を掴み上げると殴られ、追い討ちをかけるかのように蹴りも喰らい祠がある方に投げられる
(...せめて...せめてミコトだけでも...ダメだ、体がうごない...ごめんなさい母上、ごめんね、ミコト)
諦めかけていたその時セツナの頭の中に声が聞こえた
(...助けてやろうか?)
(...誰?)
(ワシが貴様ら2人を助けてやる、だから体を貸せ)
(ほんとう?)
(本当じゃ、キツネは嘘はつかんのじゃよ)
いいよ、とそう言った瞬間セツナは意識を失った
クオンたちが場所を突き止め、たどり着いた時、場はひどい状況だった、ミコトは倒れているセツナを呼びかけていた、そして2人を誘拐したであろう4人組の男は全員首から上がなくなっており、身体の方は黒焦げと化していたからだ
「...ミコト、何があったのですか」
「...わかりません...目が覚めたらこうなっていて、セツちゃんが倒れていたんです」
「...!?ク、クオン様!祠が!」
「これは...まずい状況ですね」
壊れた祠からはとてつもない邪悪なものが溢れかえっていた
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