第9話 道標

「ふっ!!!やぁ!!」


セツナは刀で相手の攻撃を弾き、距離を詰める


『中々やるではないか!ならこれならどうじゃ!』


九つある尻尾が光ると雷が降り注ぐが、風魔法を駆使し全て避けれたと思ったが左肩に直撃してしまう


「いだっ!?」


セツナは両手で持っていた刀を落としてしまう


『その状態では、碌に刀を振るえんじゃろう...トドメをさしてやろう!!』


尻尾で持ち上げられ、じわりじわりと力を入れられ更に雷を纏っているため痺れと痛み同時に襲いかかってくる、この慈悲のない攻撃にセツナは意識を飛ばしかけたが、尻尾を噛み怯んだ隙になんとか抜け出す、それが精一杯だったのかその場に倒れてしまい、クオンが駆け寄り支えた


『き、キサマ!ワシの高貴な尻尾を噛みおって...ゆ、許さんぞ!』


毛が逆立つぐらいに激怒している、クオンはセツナに変わって戦うために刀を出したがセツナが腕を掴み止める


「...まだ、動けるよ!」

「その体では無理です!セツナちゃんは休んでて...ね?約束したでしょ?」

「やだ、これは私の喧嘩だもん!」

「あっ!セツナちゃん!」


静止を振り切り、再び戦場に出る


『馬鹿なやつじゃ、そのまま守られていれば死なずに済んだものを!』

「ふん!!」


セツナは風魔法で自信を纏う


『「喧嘩」と言ったな、貴様の様な童がワシと喧嘩?クックック...ハッハッハ!!!お前などワシが本気を出せば喧嘩にもなら...』


嘲笑い馬鹿にしていると、ヒュンっと横を何かが掠る


「よそ見したら危ないよ?」

『クク、まだ楽しめそうじゃ』


セツナは魔力を使い切る勢いで避けては殴りを繰り返す、動かない左肩というハンデがありながもなんとか前線している、だがセツナの体に異変が起きる


「ハァ...ハァ...」

『もう、降参したらどうじゃ?それだけ魔力を使い続ければ童は死ぬぞ』

「ハァ...いや...だ...ハァハァ...」

『なぜ、そこまで意固地になる?』 

「...そんなの決まってるじゃん!」


目の前の化け狐をジッと見つめ言いきる


「私の...式神になってほしいからだよ!」

「『...は?』」


クオンと化け狐は思わず、会いた口が塞がらなかった


『ワシを、式神に?』

「せ、セツナちゃん、この妖怪が封印されたのか知らないの?」

「知ってるよ、私の中にいた時、記憶が見えたんもん」


「だからこそ、式神」にしたいんだと、セツナは言った、だがそう簡単に「なります」とはならない


『ワシは誰のものにもなるつもりはない!』

「...私は裏切らないよ」

『...!う、嘘をつくでない!人間はそうやって!ワシを裏切り封印した!500年じゃぞ!!

...ワシはもう自分の名前すら思い出せない!』


「もうこんな思いはごめんじゃ、それに...」と、セツナは言葉を遮るように口元に抱きつき泣きながら名前を呼んだ


「...「コハク」...それが君の名前でしょ?」

『...なぜ、貴様が泣いておるんじゃ』

「こんな事しても気休めにもならないけど、昔の人達に変わって謝る...ごめんなさい」


コハクと呼ばれた九尾の狐はかつて自分のセツナを剥がした



『最初から式神になって欲しいと、どうして頼まなかった』

「...実力もないのにいきなり頼んだって、認めてくれないでしょ?だから喧嘩して、勝って実力を認めてもらおうとしたの...それで、どう...かな、私の式神になってくれる?」


そう言うとコハクは笑った


『いいだろう、ただしワシの主人になるからにはもっと強くなれ、それが条件だ』

「うん、なる...なるよ!あと、ミコトを助けてくれてありがとう!」

『...ほら、さっさと式紙を出さぬか』


セツナが式紙を出すと、コハクは自らその紙の中に入り、真っ白だった紙にキツネのような紋章が浮かんだ


「これからよろしくね、コハク」


唇を紙につけ、一安心すると一気に疲れが来たのか倒れる、だかその寝顔はとても良い笑みを浮かべていた

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