33.リアムと部活
一方、少し時は遡り、部活紹介に参加したリアムはというと――
「そこの新入生! この筋肉部に入らないか? 将来、どんな仕事をするにしても筋肉はあった方がいいぞ!」
「あはは、女の子にそれはちょっとねえ」
「うわあ、先輩凄いですね」
「筋肉……」
――フィーシアとミトラに付き合ってひとつずつ見ていた。
「君は男子だったのか! そう、君のような細い子に! ぜひ!」
「あ、いえ……遠慮しておきます……」
「女の子も歓迎よ! どう、この腕!」
「えっと、間に合っていますから……」
ミトラは圧に負けずに拒否し、続いていい筋肉の付き方をしている女生徒がリアムに話しかけた。
しかしリアムは口をへの字にしてやんわり断る。
「間に合っているってどういうことよ! ほら、こんな鉄の棒もこの通りよ」
「わ、すごっ!?」
女生徒は鉄の棒をぐっと握り、ぐにゃりと曲げた。フィーシアがそれに驚いているが、そこまで曲がったという感じではない。
「貸してもらっていいですか? 私はこれくらいなら――」
「「……!?」」
「リアム!?」
リアムは鉄の棒を借りると、デコピンをした。するとほぼ直角に鉄の棒が曲がっていた。フィーシアが驚いてリアムの背中をバンバン叩いていた。
「というわけなの。ごめんなさい先輩」
「Oh……」
「あなたがナンバーワンよ……」
先輩二人はポカーンと口を開けたまま立ち尽くしていた。リアムは次へ行こうと歩き出し、ミトラもハッとしてから先輩に頭を下げてから追いかけた。
「ちょっと、リアムって剣と魔法以外も能力が高いの?」
「まあね。隠しても仕方が無いし言うけど恐らくこの学院の先輩方を混ぜても私に勝てる人は種族を問わず居ないと思うわ」
「凄い自信だ……でも、ロイ君とリアムさんはそれくらいできそうだよね」
「……ロイの話は止めて」
「え?」
リアムはポツリと呟いてから次の部活へと向かう。フィーシアとミトラは肩を竦めて並ぶ。
「なんかこう、こういう部活なら入りたいってあるの?」
「そうね、古書とか文献が見れる部活とかあると嬉しいけど」
「図書館じゃ駄目なのかい?」
「もっとマニアックな本、例えば信憑性の薄い占い本みたいな娯楽みたいなのでいいの。とにかくあまり目にしないような本が読んでみたいの」
「ふうん? 面白いわね、それ」
「僕はてっきり戦闘系の部活だと思ってたよ」
「これ以上強くなる必要はあまり感じないもの」
リアムが笑うと、フィーシアが確かにとコロコロと笑っていた。そういうことならと、戦闘系の剣術・魔法部を避け、演劇部や薬学実験部といったところも駆け抜けた後、文芸系の集まるところへ到着した。
「ふう……恐ろしいわね部活紹介……昆虫料理研究部なんて冒険者前提じゃない……」
「僕は自然工芸部、ちょっと面白かったよ」
「音楽は悪くなかった気がするわ」
フィーシアは虫が苦手らしく、昆虫料理研で卒倒しそうになっていた。リアムが彼女を抱えていた。
「この辺が文芸系の部活らしいけど……」
「閑散としているわね」
ミトラが困惑気味にそう言うと、リアムも周囲を見ながら返す。
各部活にある程度の敷地にテントなどを張って場所を確保しているのだが、長机に座って本を読んでいたり、自作の詩や物語を作ったものを置いているだけで特に勧誘らしいことはしていない。
「あの、すみません。なにか面白い本を研究している部活などはありませんか?」
「え? ああ、歴研かしら?」
「歴研?」
「歴史研究部よ。あの三つ向こうのテント。部長は……まあ、行けば分かるわ」
「「「?」」」
案内をしてくれた女生徒がフフフ……と何故か不敵に笑い、リアムが求めている本を中心とした部活を教えてくれた。
「行ってみましょうか」
「うん」
「僕はなににしようかなあ」
三人はテントへと近づいていく。その中でリアムは胸中で呟く。
「(ここでなにか実績を積んで、王都の書庫に入れればいいんだけど……。あるかどうかも分からないけどとにかくやれるだけのことはやらないとね)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます