21.ロイとリアムという存在

「面白い生徒、か?」

「はい、ダリューン陛下。まだ実力は見ていませんが、もしかするとこの国に利益をもたらす可能性があります」

「ほう」


 ダリューンと呼ばれた国王が窓から目を離してソファに座っているテリア学院長へ視線を移す。柔和な笑みを浮かべたテリアがソファに座るように促す。

 座ったのを見届けてから彼女は口を開く。


「特に隠して欲しいとは言われていませんが、今から話す内容は内密にお願いします。もし口外したら、とんでもないことになります」

「おいおい、脅かさないでくれ。わざわざここまで足を運んだのだから相応だと考えているが……それで?」

「実は――」


 テリアはロイとリアムのことを告げる。

 勇者と魔王の記憶を引き継いでいて、能力は申し分ないはずであろうこと。

 今日から学院でその能力を測ってもらうように教員へ伝えていることなどを。


「……!? それは勇者と魔王の生まれ変わりということか?」

「いえ、あくまでも人格はロイ君とリアムさんですね。ただ、二人の最期は相討ちだったので、決着をつけるため彼等に憑りついているような感じと見ています」

「なんと迷惑な……」


 ダリューンの言うことはもっともである。テリアは肩を竦めてから話を続けた。


「ただ、戦闘力・魔力・勉学は勇者と魔王の記憶を頼りに鍛えているらしいのでそれは助かったと言っていました」

「魔王……アルケインとしてまた世界を牛耳ると言い出さないだろうか?」

「リアムさんがいい子みたいなので大丈夫かと……絶対はないのでその時は私を含めて止められるようにという意味も込めてお伝えしています」

「だといいが」

「勇者の記憶があるロイ君と千試合すべて引き分けですので、彼が居ればなんとかなるのも大きいです」


 テリアが昨日の話から概ね今後の指針を計算し、起こりうる対策を考えていた。

 この国王陛下との会談もその一つであった。


「なんにせよ、頭痛の種が増えたと言えるか」

「まだ魔物が多くなった原因は判明しませんか」

「ああ。冒険者とギルドへ調査依頼を出しているし、騎士達も野外訓練としてチームを出しているが遭遇戦ばかりだ」

「……ふむ」


 そこでテリアが顎に手を当てて考える。しばらく無言の時間が過ぎ、ダリューンが声をかけた。


「なにかあるのか?」

「ああ、申し訳ありません。少し学院でも出来ることを考えておきますね」

「学院……学生に無理はさせない方がいいと思うが……」

「そこは教員と相談で。それでは私は戻ります。お忙しいところ申し訳ありませんでした」

「いや、いい。この国に勇者と魔王が居ることが吉と出るか凶と出るか……」

「二人ともいい子ですよ。陛下に会わせてもいいかもしれません♪」

「勘弁してくれ」


 ダリューンは苦笑しながらそう言い、立ち上がったテリアへ言う。彼女は一礼をして部屋を出て行った。


「勇者に魔王、か。いや、今は大人しくしてくれているならそっちはいいか。テリア学院長、任せたぞ――」


 今はそれどころではないとダリューンは再びソファから窓際に移動し、騎士達の訓練を見るのだった。


◆ ◇ ◆

 

「では、ゴルド君ここを答えてみてくれ」

「は! 三ですね!」

「残念! それじゃロイ君わかるかい?」

「えっと、五ですね」

「お、正解だ。これはマイナスを――」


 昼休み前の数学。

 ゴルドが差されて回答を促されたが、正解を出せなかった。次にロイが差されるとしっかり正解していた。


「ぐぬぬ……」

「あはは……ロイ君、凄いねリアムさんもだけど、正解ばっかりだよね」


 ゴルドが悔しそうにロイを睨む中、真ん中に座るミトラが小声でロイとリアムを称賛する。その言葉にロイが視線だけミトラへ向けて答えた。


「まあ、色々あってな。勉強と戦闘はまあまあ出来るんだ」

「私もロイと同じくらいは知識があるわ。戦いもまあまあできるわ」

「へえー」

「くっ……ランチ後の剣学と魔法学の時を覚えていろよ……!」

「まあ、ゴルドじゃ無理そうだけどねえ」

「うるさいぞフィーシア!」

「うるさいのはゴルド君だけどね……!」

「あ、あ……」


 フィーシアがからかい、ゴルドが大きな声をあげた。そこで教員が渋い顔でため息を吐いていた。

 そのまま軽く教科書で叩かれた後、授業が再開した。しかしすぐに授業終了を告げる鐘が鳴り、お昼休みとなった。


「ふう、結構長く感じるなあ」

「授業?」

「ああ。割と分かっていることがやっぱ多いなって。だから長く感じるのかもしれない」


 新入生は一律、十三歳スタートだがロイとリアムには知識がある。数十年前だが、常識や勉学はそれほど変化がないため概ね出来るのだった。

 そんな話をしていると、初老の男性が教室に入って来た。


「あ、じいや。ランチを持ってきてくれたの?」

「はい。お嬢様、お弁当でも良かったのですがコックがどうしてもということで作りに来ました」

「え?」


 フィーシアの執事だったようで、じいやと呼んでいた。そして不穏なことを言った瞬間、コックが教室へ入ってくる。


「フィーシアお嬢様、本日はわたしめが鴨のオレンジソースを手掛けさせていただきます」

「ちょ、ちょっと!? ここでキッチンを広げるつもり!? 外、外へ……いや、それだと恥ずかしいわ……」

「凄いなフィーシア」

「お嬢様って感じだわ……!」

「やめてよ、ロイ、リアム!」


 フィーシアは拳を振りながら顔を赤くして自分の家が派手なことをするのを照れるのだった。

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