第10話 隠し事

リッカは城から外に出て、眩しい月が迎えてくれる夜道を歩いていた。


彼女は今日の数時間でたくさんの経験をした。


(私は今まで、王国に忠義を示すことが正しいと信じて人生を歩んできた。それは、今でも間違いではないと思ってる。……ただ、疑うことも忘れちゃいけないですね、ネームレス部隊、精鋭の中の精鋭、調べなくては。)


考え事をしていると、気づけば自分の家についていた。


ガチャンッ。

ドアを開けると、彼女の鼻をミルクを使った料理が迎える。


「うーん!!良い香り!アイラ、先に帰ってたんだね!」

「お帰り、リッカ!てか、先に帰ってたんだねじゃないよ!今何時だと思っているの!」

「え?」


リッカが時計を見ると、



その針は21時を回ろうとしていた。


「あ、あれ〜、まだ18時くらいかと思ってたんだけどな?」

「はぁ、少し予想はしてたけどネームレスについて調べてたんじゃないの?」

「いや、違わないような違うような?」

「何、あたしにははっきり言いなさい!」


アイラが母親の如き迫力でリッカに迫る。


「はい!ネームレスの部隊長と話してました!」

「え、そんなことできたの!?だって、ネームレスよね?」

「え、うん、部隊長のシュウ…… 死神隊長リーパーヘッドとこれからのことについて話したよ。」

「ふーん、ネームレスって外部と連携を取れるような存在だったんだ。」


アイラの料理がテーブルの上に並べられていた。



今日の夕食は、ゴロゴロと野菜を使ったシチューに、ふわふわのパンが用意されていた。



「今日もありがとう、アイラ!いただきます!」


2人は食事をすすめ、話題はネームレスのことになる。


「アイラは、ネームレスのできた理由とかって聞いたことある?私より2年くらい先に王国にいるよね?」

「まあ、リッカより長くいるけど特に聞いたことはないのよね。そもそも、ネームレスの存在は噂でしか聞いたことなかったのに、リッカが部隊を持つって聞いて本当に存在してたんだって驚いたくらいなんだから。」

「やっぱりそうだよね、部隊長にネームレスが生まれた理由を聞いたんだけど全く教えてくれなかったんだよね。本人から聞き出すのは難しそう。」

「何でだろう?話しても悪いことじゃないと思うけどね。」


アイラの言葉を聞いて、さらにリッカは頭を回す。


(そうだ、あの部屋では私とシュウのビットしか通信できない設定にしていた、それはシュウも知ってるはず。なのに言わないのだとしたら、かなり近くに拘束してる存在がいるのかしら。それとも、ビットが私以外に盗聴されている?)


考え込むリッカに、アイラの手がゆっくり伸びてくる。


そして、


ピチッ!

デコピンがリッカのおでこに直撃。


「痛い!いきなりなにするの!?」

「今、どうすればネームレスを知ることができるか、あるいは彼らに近づけるか考えてたでしょ?」

「え、あ、いや、そんなことないよ!美味しいご飯に感動してただけだよーー。」

「嘘つく子には、この後のデザートのプリンは渡さないよ。」

「プ、プリン!大変申し訳ございませんでした!」



リッカは瞬時に頭を下げる。


「はぁ、まあ追求しようとするのはリッカの良いところなんだけど、それに集中しすぎて危険な領域に入りそうで怖いのよ。」

「ごめんね、アイラ。心配かけないように、自分でももっと気にかけるよ。」

「あたしに心配かけるとかはどうでも良いの!リッカがリッカのままでいられるように、自分を大切にして欲しいだけ!あたしは心配性だから、お節介になるくらい気にかけちゃうと思うから。」

「……ありがとう、アイラ。私と一緒の部屋になってくれて、褒めたり叱ったりしてくれて。とても支えになってもらってるよ。」


そうして夕食を食べ終え、各々着替え寝る準備に入る。


「明日あたしは朝早いから先行くね。リッカは寝坊しないように気をつけてね。」

「大丈夫だよ!目覚ましたくさんかけるから!」

「フラグにしか聞こえないけど、まあ平気か。じゃあ、お休み。」

「お休みなさい、アイラ。」



消灯し、2人は眠りにつく。



リッカの頭には、ネームレスのことが残り続けていた。


(シュウ、あなたはどれくらいネームレスにいて何人の方の最後を見てきたのですか。どう考えても、あのメンバー表の微妙な空欄はもう1人存在してる証拠。それが消されてたということは、国が隠そうとしてるということ。)


リッカの推測はさらに深くなる。


(私のやれることはまだ少ない、でも、ネームレスをこれ以上減らさないために出来ることは沢山ある。もっと勉強して、彼らともっとコミュニケーションをとらないと。遅くなっちゃダメ、1)


これからの決意を固め、リッカは眠りにつく。




そして、こちらはネームレスの住む家。


シュウはベッドの上で、リッカのことを考えていた。



(見送り人アンダーテイカー、リッカは今までの指揮官とは明らかに違う。多分、俺たちのことを調べようと無理をするかもしれない。それは止めないと、彼女が消されかねない。次の作戦から、見送り人アンダーテイカーのことも気にかけておこう。使える者は、何でも使う、みんなと生きるために。)


シュウもこれからのことを考えながら、眠りについた。



(叶うなら、もう誰も失いたくない、そのためなら俺は死神だろうが、何だってなってやる、あいつらに顔向けできるように。)





そして3日後、再び戦いが起きてしまった。

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REVERSI〜真実を知るため、かの者は道を作る〜 スズキチ @suzu34

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