第9話 神懸
「
「そうですね、自分も何代前から始まったことなのかは知りませんが、この武器も含め皆同じものを使っています。」
「そうなのですね、具体的にはどのような戦いができるのですか?」
「大剣で言えば、身体能力の一時的な強化です。銃は、銃自体の性能を伸ばせます。」
「そんなことができるのですか!?ということは、エメさんを助けられたのは。」
「はい、この力のおかげです。」
時は少し戻り、
警報が鳴り響いた戦場で、レイダーを殲滅していたネームレスの姿。
リッカもコントロールルームから敵の位置を把握し、ネームレスに指示を出していた。
しかし、
レーダーに映るや否や、エメに急接近し殺さんとする敵の姿が。
エメは感じ取った。
自分は死ぬのだと。
だが、その感覚はシュウによってかき消された。
シュウはダイア達とエメの間にポジションを取っていた。
そのおかげで、一瞬エメに迫るレイダーを視認するのが早かった。
「エメ、させるか!
ボワァ!
シュウの体に灰色の魔力が覆われ、腰を低く構え、狼のような四足歩行に近い姿勢になる。
次の瞬間、
周りの枝や葉っぱを吹き飛ばし、目で捉えるのがやっとの速さでエメに接近、そのまま大剣でレイダーを斬り伏せた。
レイダー発見から、技の発動、そして殲滅までの動作は多く見積もっても2秒。
エメまでの距離は30mはあっただろう。
一般的な人間なら、このような判断や戦いはできない。
だが、場数を数え切れないほどに重ね、レイダーの危険性をよく知っているシュウだから取れた行動だ。
「これが、自分のあの時の動きです。」
「……、シュウ、そのような芸当を私だけではなくこの国の人たちですらみたことがないと思います。初めて聞くだけでなく、明らかに第1-第9部隊の部隊長を担当できる力を持ってます、なぜネームレスにいるのですか?」
「……それだけは、リッカであってもお話できません。」
「何か理由があるのですか?」
「これ以上、ネームレスのことは自分には話せません、今日のお話はこれくらいでしょうか?」
シュウは頑なにネームレスのことを語ろうとはしないため、リッカは話題を変えた。
「もう少しだけ、付き合ってもらえますか?」
「問題ありません。」
「シュウは、趣味って持ってますか?」
「趣味、ですか?」
予想の斜め上の質問に、シュウは疑問を抱く。
「そうですね、読書でしょうか。」
「良いですね、その落ち着きや言葉の丁寧さは本を読んで学んだのですかね。私も、読書は好きです。」
「どうでしょうか、読んでいる本が身になっているのなら嬉しいとは思いますが。」
それから何度か質問が続き、シュウが答えていくと、
「……シュウ。」
リッカは、少し怒り気味で話しかける。
その異変を、シュウは感じ取っていた。
(指揮官が怒っている?何か間違いを言ったか?)
「シュウは私に対して、あるいは王国のことで質問とかないんですか!これじゃあ、コミュニケーションじゃありません、キャッチボールじゃなくてドッジボールです!私は、何か質問を求めます!」
「え、あ、失礼しました。そうですね……リッカは何でネームレスの指揮官になったのですか?」
「詳しくは私も分かりません、ただこの部隊はとても強いこと、そして他の部隊とは違うということははっきりわかりました。私が任命された理由は、私が見つけ出します。」
「そうですか。……あ、後は、あ!趣味は何かありますか?」
シュウは無理やり質問を捻り出す。
「甘いものを食べることですね、甘いものは世界を救うきっかけになるとすら信じてます!まあ、後はもっと興味を持ってもらえるように私が努力しないといけませんね。」
「それは気にしないでください、今までの指揮官方とリッカがあまりに違うので自分を含め皆困惑しているのです。なので、もう少し慣れればもっとコミュニケーションを取れると思います。」
「うーん、分かりました、ではお互いが努力するということで!今日はお時間をいただきありがとうございます。お疲れでしょうから、また明日ご連絡します。」
「了解しました、1日お疲れ様でした、リッカ。」
「よし!名前呼びは継続できてて偉いです!お疲れ様でした、シュウ。リッカ、アウト。」
リッカは通信を終え、コントロールルームの電源を落とす。
その静寂にリッカは身を包まれ、自分のやるべきことを考えていた。
「ありがとうございます、シュウ。私に話せないということは、誰かに口止めされている、あるいは話してはいけない状況にある。それも、仲間に止められているのではない。まだ私は階級が1番下、ということは王国の中に彼らを縛ってる存在がいる、調べることは決まりました。」
シュウも通信を終え、息をつく。
近くにある椅子に腰をかけ、
「リッカ、あなたは何かやろうとしている。……正直彼女がどうなったとしてもネームレスには関係ない。……だけど何故だろう、無理はしないで欲しいと感じている。彼女は、王国に奇跡を起こせる稀有な存在な気がする、こんな簡単に失うのは惜しい。それに、上手くすれば、リッカは使える存在だ。」
少しずつ、シュウとリッカはお互いのために理解しようと進み始めた。
そして、リッカは帰り道についた。
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