しみじみ……最後はちょっと元気になれるかも。

「うんと若い頃、私は自分が世界の全ての問題を解決できるものだと信じていた」

これは当然、「だけど今は……」と続くわけですが、その続きの感覚は、成美さんに似た境遇で近い年齢にならなければ実感しづらいかもしれません。

若いときには自分の世界を広げることに夢中で、身の丈なんて考えず、先へ先へと進んでいっていたような気がします。それが、身近な人の退職、病、死を経験するごとに、等身大の「自分」に目を向けるようになります。

そうなって、ようやく、手に入れたあと足元に転がしっぱなしだった「お楽しみ」を開封するようになる、そんな気がしています。結構、良いものが落ちてるものです。

年を取ると、若い間は必要なかった後始末を常に考えながら行動することになります。気づまりなこともありますが、これまでどおり挑戦もできるわけで、結構奥深くって忙しそうだぞ、年を取るのって! って感じさせられます。なにより、成美さんが日常をしっかり生きているのを見て、救われた気分になりました。