誰かの夢

私には名前がない

小暗い山を

いくつか越えて

ここまでやって来た


私には過去がない

目の前には

月に照らされた

道だけがあった


道の先には

大きな扉があり

その向こうに

百の窓をもつ

建物があった


橙色の窓には

長い髪の女人

瑠璃色の窓には

物思いする女人

桜色の窓には

歌を唄う女人


それぞれの窓に

映る影を

ひとつひとつ

確かめた


どこかに

母がいるような

気がした


振り向くと

青い月の下

孔雀が横切った


私は誰かの

夢の中にいた


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16818093083598900972

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