火星にあった海

夕暮れの空が

杏子あんず色から

紫へと変わるときに

よぎる思い


それは

火星の海辺で

目覚めた記憶


無音の波が

水際で白く泡立ち

夢の名残のように

千々に引いてゆく


天に在るふたつの月は

軍神マルスに捕らえられた

フォボスとダイモス

「狼狽」と「恐怖」



ふたつの月に惹かれて

海が満ちるとき

遠くの方で

懐かしい

波の音がしたような


火星の夕暮れ


https://kakuyomu.jp/users/rubylince/news/16818093082599163112

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