第10話 鎧甲の覇者ドゥルガニス(中編)
「ガルムクラブ団」
「ランク2」
「ドゥルガニス」
スート兵を撃退したばかりの龍香達だったが、ナルシストの男の態度は奇妙でありながら、明らかに敵意を含んでいた
「あなた…まさか妖魔軍団インデックスの…!」
龍香が厳しい視線を向けながら、冷静な口調で尋ねる
「その通りですよ」
愛奈の顔が険しくなる
「まさか、動き出したの?」
鈴音も表情を引き締めた
「悠斗を狙ってきたのは、その組織の指示ってこと?」
ドゥルガニスは軽く肩をすくめた
「そうですよ……私が興味があるのは彼だけ……それだけだ」
龍香がさらに鋭い視線を向ける
「でも…あなたは人間じゃないですか!…どうして?」
その問いにドゥルガニスの笑みが広がり、やがて彼の体が徐々に変化を始めた
「人間だと?フッ、くだらない」
ドゥルガニスの体が光に包まれ、漆黒の装甲が全身に浮かび上がる。次第にその姿は巨大化し、230㎝の筋骨隆々とした巨体へと変貌を遂げた
「どうだ、この完璧な姿は…これこそが私の本当の姿…見よ、この漆黒の装甲、この力の象徴である角を」
額から生えた一本の黒い角が鋭く輝き、彼の全身を覆う甲殻が光沢を放つ。その胸部にはガルムクラブ団の紋章が赤く輝き、手には漆黒の手甲剣が装着されている
「まさか…」
愛奈が驚きの声を上げる
「これがドゥルガニスの正体」
「嘘…」
龍香が後ろを見ると、悠斗は表情を硬くし、明らかに困惑していた
「君のことなど知らないが、君には価値がある。それを奪わせてもらうだけのことだ」
ドゥルガニスは悠斗を見下ろしながら冷酷に言い放つ
「っ!?」
その言葉に悠斗は小さく震えた。自身が作成した召喚獣に知らないと言われさらに襲われるのだ。彼の心を深く揺さぶっていた
「なんで…なんで僕のことを…」
悠斗の声はか細く、戦う気力を失ったかのように聞こえる
「悠斗、しっかりして!」
龍香が声をかけるが、彼の動揺は収まらない
「悠斗は下がっていて!」
愛奈が強い声で言い、鈴音とともにドゥルガニスに向き合った
「フフッ、相手になるつもりか。いいだろう、だが覚悟しておくことだ。君たちごときでは、この手甲剣を傷つけることすらできまい」
ドゥルガニスは手甲剣を構え、一瞬で間合いを詰めた。そのスピードに驚く間もなく、鈴音が最初に斬撃を受け止めた。だが、その一撃の重さに、彼女は後方へ弾き飛ばされる
「重い…!」
鈴音は歯を食いしばりながら起き上がる
「隙やり!」
愛奈は素早く相手の背後に回り、攻撃を試みた。しかし、ドゥルガニスの装甲は非常に硬く、彼女の斬撃はただ火花を散らすだけだった
「まるで鋼鉄の壁みたい…!」
愛奈は苦々しい表情を浮かべる
「これならどう?
龍香は盾を前面に構えて突進し、敵に強烈な体当たりを叩き込んだ後、素早く剣で追撃を加える
「フフフ…そんな程度では私の装甲に傷一つつかない」
しかし、彼の装甲にはほとんど傷がついていなかった
「そんな……」
ドゥルガニスは冷笑を浮かべ、再び手甲剣を振るう。その速さに龍香が反応しきれず、肩を斬り裂かれる
「ぐっ…!」
龍香が膝をつく
「お姉ちゃん、大丈夫!?」
鈴音が駆け寄ろうとするが、ドゥルガニスの次の攻撃が彼女を阻む
「姉上!」
愛奈も援護に回ろうとするが、次々と放たれる斬撃に押され、次第に三人とも追い詰められていった
「……」
悠斗はその光景を見ながら、彼の心には恐怖と無力感が渦巻き、手を握りしめて震えていた
しかし、どうすることもできない。
「悠斗!」
愛奈の叫び声が遠くから聞こえる
「私たちだけじゃ、こいつには勝てない!あんたの力が必要なの!」
「でも…僕は…」
悠斗はその場で立ち尽くしたまま、前に出ることができなかった
「どうした…君の仲間がこれほど苦しんでいるというのに、君はただ見ているだけか?」
ドゥルガニスは悠斗を挑発し、さらに追い詰めるように嘲笑した
「何もできない無力な自分を恨むんだな!」
その言葉に悠斗は歯を食いしばりながら拳を握りしめた。だが、心の中に渦巻く恐怖と無力感は、彼の足を縛りつけていた
「そろそろ決めましょう」
次の瞬間、ドゥルガニスは再び手甲剣を振り上げ、三人を完全に押し切ろうとする。その圧倒的な力の前に、三人の表情には焦りが滲んでいた
ドゥルガニスの手甲剣が再び振り下ろされ、愛奈がそれを太刀で受け止めた。鋼がぶつかり合う激しい音が響くが、愛奈はその一撃に膝をつきそうになるほどの力を感じた
「このままじゃ持たない…!」
愛奈がつぶやくと
「鈴音がやる!
鈴音が大剣を低く構え、敵に向かって力強く突進しながら突きを側面から攻撃を仕掛ける。本来なら一撃の重さで敵を吹き飛ばすことができる
「効きませんね」
しかし、ドゥルガニスは硬質な体表の装甲で攻撃を弾き返し、まったくダメージを受ける様子がない
「効かない!この装甲、どうなってんの!」
鈴音が苛立ちながら声をあげた。それも当然だった。ドゥルガニスの特殊能力の一つである【硬化強化】によって 体表をさらに硬化させ、物理攻撃をほとんど無効化することができるのだ
「その程度では、私の美しい装甲を傷つけることすらできない」
ドゥルガニスが冷たく言い放つと、右手の手甲剣を振り上げ、一瞬で龍香に迫った。間一髪、愛奈が割り込んで攻撃を防いだが、衝撃で二人とも吹き飛ばされる
「愛奈ちゃん!鈴音ちゃん!」
「貴方もです」
龍香は盾で咄嗟にガードするが、同じように飛ばされダメージを負う。ドゥルガニスの特殊能力のもう一つである【猛撃連打】は短時間で手甲剣を用いた強烈な連続攻撃を繰り出すことが可能。攻撃の速度と重さは、ドゥルガニスの身体能力に比例して強化されるためである
「皆!」
その様子を目の当たりにしていた悠斗の心は揺れ動いていた。さらにドゥルガニス言われたことがショックだった彼の心の中には微かな絶望が広がっていた
「ふふふ」
ドゥルガニスは余裕の笑みを浮かべながら、次々と攻撃を繰り出す。その速さと重さは三人の防御を次第に崩壊させていった
「なんて硬さ…!攻撃が全然通らない!」
愛奈が息を切らしながら後退する。彼女の太刀には無数のひびが入っていた
「はぁ…はぁ…」
鈴音も傷を負い、肩を押さえながら戦況を見渡す
「まずい…!このままじゃ全滅しちゃう…!」
龍香は回復技発動しようとするが、ドゥルガニスの突進に阻まれ、失敗する
「君たち、もう終わりにしようか」
ドゥルガニスは手甲剣を構え、最後の一撃を見舞おうとした
「もうやめろ!ドゥルガニス!」
悠斗が震える声で叫ぶ
「…!」
その声に一瞬動きを止まる
「……気のせいか…貴様はそこでこいつらが死ぬを見ているんだな……」
悠斗の心は揺れ動く
「そして私は勇者様はもちろんオーマ様にも、褒めてもらうんだから」
「……え?」
オーマというその言葉に驚く
「待て……オーマ様だど……マスターと読んでいないのか?」
「知りませんね……我々はオーマ様と呼び忠誠を誓っているのですから」
ドゥルガニスの言葉を聞いて嘘を付いているように見えなかった
「……」
その言葉を聞き、悠斗は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。そして、ゆっくりと息を吐くと、悠斗の雰囲気が一変した
「魔人武装!!」
悠斗が魔人武装をする。そして覚悟を決めた眼差しをしている
「ドゥルガニス」
「……はい?」
「貴様を倒す!!」
次なる激闘が始まる
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