第5話 魔人武装!スート兵の襲撃

病院は静寂に包まれていたが、悠斗の心は激しく揺れていた。彼は病室の窓から外を見つめながら、遠くで感じる不穏な気配に心を乱されていた


「…スート兵が襲撃してきたわ」


龍香がその冷静な声で告げた時、悠斗の不安は現実となった。モニターに映る病院の外では、40体ものスート兵が病院の周囲に集まり、さらにその背後には、体色は白で正方形が規則正しく並んだ黒の鎧姿で、編笠を被っており、胸にスペードのマークがあり、刀を持った足軽。体色は白で赤と黒の甲冑姿で、胸にハートのマークがあり、剣を持った兵士。体色は白で 赤いローブを被っており、胸にダイヤのマークがあり、メイスを持った魔導士。体色は白で黒の中世ヨーロッパの歩兵の様な容姿で頑丈な鎧に身を包みに胸にクラブのマークがあり、三叉槍を持った戦士の4体の上級スート兵が控えていた


「愛奈、鈴音…私たちが迎撃に行くわよ」


白羽愛奈が厳しい表情で立ち上がり、飛鳥鈴音も彼女に続いた。二人は一言も言葉を交わさず、意思を確かめ合うように頷く。そして、すぐに病院の外へ向かって駆け出した


「悠斗、ここで待ってて。私も病院に残るから、安心して」


龍香が優しく悠斗に微笑みかけるが、その目は緊張で微かに曇っていた


「でも、あの数…大丈夫なのか?」


悠斗は焦燥感を抑えられない


「心配しないで…愛奈と鈴音は、魔人武装まじんぶそうが使えるから」


龍香はそう言って、モニターに視線を戻す


「魔人武装…?」


「うん。魔人武装は、この世界で最も強力な戦闘技術の一つなの……魔界にいる魔人との契約することで、一時的に圧倒的な戦闘力を発揮できるの」


龍香が説明している間も、モニターの映像には、病院の外に集結するスート兵たちの姿が映し出されていた。愛奈と鈴音はすでに病院の裏手に抜け出し、スート兵の群れに向かっていた


「行くよ……鈴音」


「……うん」


愛奈が低く声をかけ、互いに視線を合わせる


「「魔人武装!」」


次の瞬間、愛奈の腕に巻かれている炎の形をしたブレスレット、鈴音に付けている氷の形をしたイアリングが一瞬光に包まれ、彼女たちの姿は大きく変わった


焔天えんてん騎士きし閃光せんこう


愛奈の身体は、真紅の鎧に覆われ、兜には深紅の羽がついており、両手に持った太刀「焔閃刀えんせんとう」が力強く輝いている


氷冥ひょうめい騎士きし剣姫けんき


そして鈴音の身体は、青白いに鎧に覆われ、兜は氷の冠のようなデザインで、両手に持った大剣「氷影剣ひょうえいけん」持って戦闘態勢に入った


「行くわよ!」


愛奈が先陣を切り、鈴音もそれに続いていく


「はっ!」


愛奈の鋭い声とともに、太刀が閃く。瞬時に、3体のスート兵がその場に崩れ落ちた


「やっ!」


続いて、鈴音が大剣を振り回しながら突進していく。鈴音の一撃は、力強さそのものであり、一撃で複数のスート兵を粉砕する。彼女の大剣が振り下ろされるたび、地面が震え、スート兵たちは無惨に倒れていった


「まだまだ!」


鈴音は笑みを浮かべながら、さらに大剣を振り回した。彼女の豪快な攻撃に、スート兵たちは成す術もなく次々と崩れていった


「これが終わったら、一息つけるね」


鈴音が冗談混じりに言う


「その前に全員倒さなないと!」


スート兵たちは数の上では圧倒的だが、二人の魔人武装の力の前では無力に等しく、次々とスート兵が倒れていく


「やっぱりすごいな、二人とも」


龍香がモニターを見つめながら呟いた


「これが……魔人武装」


悠斗はその様子を黙って見守っていた。だが、状況はすぐに変わった。スート兵の大半が倒れたその時、後方に控えていた4体の上級スート兵が動き始めたのだ


「厄介な相手が出てきたわね…」


愛奈が太刀を構え直し、険しい表情で言った


「こいつら、普通のスート兵とは格が違う…」


鈴音も大剣を握りしめた


「鈴音が行く!!」


鈴音が呟きながら、スペードの上級スート兵の一体に向かって突進した。だが、ダイヤの上級スート兵が魔法を放ってきた


「ぐっ!!」


鈴音は咄嗟に大剣でそれを受け止めたが、その威力に一瞬ひるんでしまった


「鈴音、気をつけて!」


愛奈が駆け寄り、彼女をかばいながら剣を振るう。しかし、クラブの上級スート兵がそれをガードし、逆に押し返す


「ぐっ…! こいつ、力が違う!」


愛奈は歯を食いしばりながら、三叉槍の勢いを抑え込む


「くっ…強すぎる!」


鈴音は必死に立ち向かおうとするが、今度はハートの上級スート兵に押され、動きが取れない




「二人とも…頑張って!」


モニターの前で、龍香は祈るように呟いた。だが、その言葉は届かない。上級スート兵の力は圧倒的だった。二人は息を合わせて攻撃を繰り返すが、徐々に押されていく


「……」


悠斗もその様子を見る


「悠斗さん!」


「はい!!」


「私も行きます!」


「えっ!?でも……」


「心配しないでください!」


そういって、出て行く龍香


『お前は行かないのか?』


「えっ?」


その時、突然頭の中に響く声がした


『戦え…悠斗。彼女たちを救うために』


耳を澄ますと、その声はさらに強く響いてきた


『戦わなければならない。お前にはその力がある』


「力…?でも、僕は…!」


『このままでいいのか……戦え……そして救え』


「やめろ…!僕は…」

悠斗は声を出して拒絶した


「自分の作った軍団と戦うなんて無理だよ!!」


悠斗は震える声で叫んだ。スート兵と上級スート兵そして妖魔軍団インデックス……それらは、自分が制作した軍団。悠斗のゲームの世界で共に過ごした存在……だからこそ、自分がそれらと戦うことは、自分自身を否定する行為に等しい


『悠斗、彼女たちを見ろ!』


悠斗は視線をモニターに向ける。モニターに映る愛奈と鈴音の姿は、ますます追い詰められていた。上級スート兵の圧倒的な力の前に、二人は徐々に防戦一方となり、もう限界が近い


『このままだと、二人はいや…三人は死ぬぞ!』


悠斗はその言葉に、胸が締め付けられる


『貴様ではない…の命令によって殺されるぞ……』


その言葉に悠斗は驚く


「別の者…あんた、何か知っているのか!?」


『そのためにも戦え…悠斗。君にはその力がある』


再び、謎の声が頭の中で響く。その声は、悠斗に決断を迫っていた


「…わかった」


悠斗は深い息をつき、震える拳を握りしめた


「俺も、行く」


悠斗はそう呟き、病院を飛び出していった

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