第6話 激闘、上級スート兵
「鈴音、大丈夫!?」
愛奈が声をかけるも、鈴音は辛うじて立っている状態だった
「…うん、まだ…動ける…!」
鈴音は息を切らしながら返答するが、その言葉には明らかな疲れが滲んでいた
「二人とも、大丈夫!」
後ろから響いた声。その声は、白崎龍香のものだった。彼女は冷静な顔つきで、愛奈と鈴音の元へと駆け寄った
「姉上!!」
「お姉ちゃん…!来てくれたんだ!」
鈴音が少し笑みを浮かべて彼女に叫ぶ
「ええ…私も加勢するわ」
龍香は静かに微笑み、前を向く
「魔人武装!」
首から下げている太陽を象った金色のペンダントが光を放ち、彼女の身体が眩い光に包まれる
「
龍香の身体は、光り輝く純白の鎧を纏い、天使のような羽飾りがついた兜を被り、右手には バスタードソード「
「回復させるね」
龍香は雷光剣を地面に突き刺す
「
次の瞬間、周囲に光の結界を展開し、中にいる二人の傷と体力が癒されいく
「ありがとう、姉上!」
愛奈は、再び太刀を握り直した。鈴音も立ち直り、大剣を構え直す
「みんな、準備はいい?」
「もちろん!」
二人は即座に応じ、三人の結束は固くなり、上級スート兵に挑もうとした
「待て!」
だが、その時だった。突如として鈍い音と共に地面を駆けてくる足音が聞こえた
「僕も来たぞ!」
その声は悠斗のものだった。彼は息を切らしながら、急いで三人の元に駆け寄ってきた
「悠斗!? どうしてここに!?」
愛奈が驚いて叫ぶ。鈴音も目を大きく見開いた
「ここは危険よ、悠斗!早く避難しなさい!」
龍香が即座にそう言うが、悠斗は頑として首を振った
「鈴音たちがやるから、安全な場所に…」
「大丈夫……俺も戦う」
悠斗の眼には、確かな覚悟が宿っていた。彼の表情は、今までと違っていた
『そうだ、それでいい』
謎の声は、悠斗の覚悟を歓迎するように言った
『戦え……悠斗』
「でも、あなたには戦う力が――」
『そして、叫べ!……魔人武装!と』
「魔人武装!」
彼の身体が光に包まれ、鎧が形成されていく
「
悠斗の身体は、黒と銀色を基調とし、風を表す翼のモチーフがあしらわれた騎士風の鎧を纏い、精巧で威厳で、瞳の部分が影に包まれた不気味な雰囲気なデザインの兜を被り、右手には刃のついた弓「
「「「なっ!!」」」
三人はその姿に圧倒されていた。悠斗が魔人武装を使えるとは誰も思っていなかったからだ
「お兄ちゃん…魔人武装が…できるの!?」
鈴音が驚きの声を上げた
「嘘…悠斗、どうしてそれが…!」
愛奈も驚きと困惑を隠せない
「(声を頼りにしたけど…本当にできたよ!)」
もっとも彼自身が一番戸惑っているが
「話は後!今は目の前の敵に集中して」
しかし、今は考えている暇はなかった
「「はい!」」
「わかった!」
龍香と愛奈と鈴音の3人は剣を構え、それぞれが、上級スート兵と対峙する
「「「「……スート」」」」
悠斗はダイヤの上級スート兵、龍香はスペードの上級スート兵、愛奈はハートの上級スート兵、鈴音はクラブの上級スート兵と
「……」
悠斗は武器を構え、ダイヤのスート兵と対峙する
「(まさか……こんなことになるとはな……それにこの武器、僕がゲームで愛用していた武器に似ている……っといけない)」
悠斗は改めて視線を向ける
「……スート」
その手に握られたメイスは重々しく、周囲には冷たい空気が漂っていた
「(…来る!)」
杖を掲げた瞬間に周囲の空気がピリピリと緊張感に包まれた。悠斗は直感的に察し、すぐさま横に飛び退いた。その瞬間、地面が爆ぜるように光り、赤い魔法の衝撃波が走った
「……」
ダイヤのスート兵は余裕のある表情を浮かべ、杖を構え直す
「させない!」
弦を手前に引き絞り、引き手を放す。黒いエネルギーの矢が放たれた
「スート!!」
敵はそれを躱し、すぐにもう一度魔法を発動させた。今度は、火の玉が空中に現れ、それが次々と悠斗に向かって飛んでくる
「くそ!」
悠斗も次々と矢を放つ。まさに激しい撃ち合い
「!!」
だが魔法の一撃をかすめてしまう。しかし、倒れるわけにはいかない
「(こうなったら)」
悠斗は突進し、間合いを詰める
「スート!!」
が来てはその動きを読んだかのように、メイスを高く振り上げて迎え撃つ
「ぐっ!!」
重い一撃が悠斗を襲うが、ギリギリで受け止める
「(さすがの一撃)」
手が痺れるほどの衝撃
「……けど」
しかし、次の瞬間、敵の杖を蹴り払い、バランスを崩した隙に悠斗の刃が閃いた
「!?」
魔導士が杖を落とし、動きを止める
「はあっ!!」
悠斗は矢を放つと、それが当たると同時に爆発し、後ろに後退するダイヤのスート兵
龍香が剣を構えると、足軽は無言で間合いを詰め、一瞬の静寂が広がる
「(隙が無い)」
次の瞬間、敵が踏み込んだ
「(!?)」
龍香は盾でガードする
「重い…」
その一撃は重く、鋭い。足軽の動きは滑らかで、無駄が一切ない。さらに攻撃の手を緩めず、精密な一撃を次々と繰り出す。龍香は防御を固めつつも、反撃の機会を狙う
「スート!!」
相手の刀が一瞬高く振り上げられたその瞬間、龍香は敵の膝を狙って切り込んだ
「隙やり!!」
敵がバランスを崩すやいなや、次の斬撃が胸元に決まり、後ろに後退する
愛奈はハートの兵士と向き合った。赤と黒の甲冑が朝日を浴びて輝き、胸のハートのマークが不気味なまでに際立っていた
「参る!!」
愛奈の体が疾風のごとく動き出した
「スート!!」
鋭い剣先が愛奈の視界に閃き、瞬時に防御するが、その力は予想を超えていた
「速い…!」
足元がわずかに揺れ、体勢が崩れそうになる。敵はさらに攻撃を畳み掛ける。赤と黒の甲冑が踊るように動き、剣撃が次々と襲いかかる。左からの斬撃を受け流すと同時に、右から素早く突きが放たれる。愛奈は何とかそれを避けるが、次の一撃がすでに迫っていた
「見切れない…!」
圧倒的な速度に対処しながらも、わずかな隙を狙う愛奈。剣が振り下ろされた瞬間、身体を捻ってその斬撃をかわし、反撃の一太刀を繰り出した
「スート」
鋭い刃が敵の甲冑をかすめ、僅かな隙に一撃を入れたことで、動きに一瞬の迷いが生じる
「っ!?」
今こそチャンスと、全力で太刀を振り下ろすと、敵の武器が真っ二つに切れた上に、敵も大きなダメージを食らい、後ろに後退する
鈴音はクラブの上級スート兵と向かい合う
「……スート」
三叉槍を持つその姿は、まるで城のように頑丈で、隙が見当たらない
「(…やっぱりこいつ…強い)」
次の瞬間、敵は槍を低く構えると、地面を蹴り上げて一直線に突撃してきた
「!!」
鈴音は急いで身を翻し、槍の突きをかわしたが、その衝撃で後ろへ吹き飛ばされる
「すごい衝撃!」
その突撃はまるで壁が押し寄せてくるかのようだ
「スート!」
再び槍を構え、前方に突進してきた
「!?」
鈴音は大剣で防御の構えを取るが、その槍の一撃は圧倒的だった。大剣が弾かれ、足元が揺らぐ……が槍が再び前に突き出される瞬間、鈴音は真横に飛び込み、敵の側面に素早く大剣を打ち込んだ。鎧は硬いが、少しだけ切り裂く手応えがある
「もう一撃…!」
鈴音は呼吸を整え、歩兵が再び突進してくる瞬間を狙っていた
「スート!!」
槍が再び前に突き出される瞬間、鈴音は真横に飛び込み、敵の側面に素早く剣を打ち込んだことで、敵は後ろに飛ばされた
「「「「スート」」」」
4人の攻撃により、上級スート兵たちが一ヶ所に集まった。そして悠斗たちも集まる
「皆!必殺技を放つわよ」
「はい!」
「おう!」
龍香が叫び、愛奈と鈴音も返事をする。3人に魔力が集まる
「(必殺技って……そんなの)」
悠斗が困惑するが
「(いや……頭に浮かんだ!!)」
弦を力強く手前に引き絞る
「
「
「
「
それぞれが技を放つ
「「「「!!」」」」
一瞬の静寂の後――上級スート兵たちは、その場に崩れ落ち、消滅した
「やった…!」
鈴音がその場に膝をつき、安堵の息を吐く。愛奈も疲れ切った様子で、剣を地面に突き立てた
「みんな、無事でよかった」
龍香も息を切らしているが、戦いが終わったことに安堵した
「はぁ…はぁ…なんとか…勝てたね」
愛奈が息を整えながら言った。彼女の顔には安堵が広がり、その身体は疲労で限界に近づいていた
「本当に…危なかった…」
鈴音も地面に膝をつき、額の汗を拭いながら返答した
「悠斗…ありがとう」
龍香が優しく声をかけた
「君が来てくれなかったら、私たち…」
だが、その時
「…っ!」
悠斗が突然、膝をついた
「悠斗!?」
愛奈が驚きの声を上げ、駆け寄ろうとする
「大丈夫…ただ、少し…疲れただけだ」
彼は苦しげに笑みを浮かべたが、その声には明らかに無理が感じられた
「無理しないでよ!」
龍香も心配そうに悠斗に近づく。悠斗の顔色は明らかに悪く、魔人武装の力が彼に大きな負担をかけているのは明白だった。魔人武装を使ったばかりの彼にとって、上級スート兵との激しい戦闘は想像以上に過酷だったのだろう
「本当に…大丈夫だから」
悠斗はもう一度弱々しく笑みを浮かべ、立ち上がろうとしたが
その瞬間――
「…!」
彼の身体は力を失い、そのまま倒れ込んでしまった
「悠斗!!」
三人が一斉に駆け寄ることを感じながら意識を失うのであった
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