第4話 異世界の常識、困惑する悠斗
「すまないが、もう一度言ってくれ」
「この世界では男女の役割が逆転しているの。つまり、女の人が強くて、男の人が守られる存在なの。例えば、男の人が家事をしたり、女の人が働いて外で稼いだりするのが普通なの」
しばらくして、悠斗は3人からこの世界のことについて教えてもらうことにした。資料を見ると、微妙に違うが普通の日本の街に似ていた。少し驚いていたが、それ以上に貞操観念が男女逆転していることが一番の驚きであった
「貞操の概念も違うの。男性が慎ましく、女性が積極的に求愛するのが一般的なの…つまり、女性が主導権を持っているってこと……」
「そう。男が貞操を守る立場で、女がそれを求める立場って感じかな?」
龍香は悠斗を見つめながら、微笑みを浮かべる
「は、はい!だから、こっちでは悠斗みたいな男の子は、すっごく大事にされるんだよ!」
彼の心の中では、少しずつこの世界の奇妙さが明らかになっていく
「(これがこの世界の常識)」
悠斗は、自分の世界の価値観とあまりに違う現実に、理解が追いつかないでいた
「そうです……ここじゃ、男の貞操が何よりも重要視されてる。だから、女性が積極的に男性にアプローチしてくることが普通なの……」
「待って、じゃあ、俺がいきなりここで…誰かと…?」
悠斗はその事実に顔が赤くなり、龍香の前で身をよじる
「大丈夫、大丈夫!」
鈴音がケラケラと笑いながら、悠斗の肩を叩く
「すずね達がちゃんと守ってあげるから!心配しなくてもいいよ!」
「いや、そっちの方が心配なんだが…」
悠斗は顔を手で覆いながら深いため息をついた
「でも悠斗さん、まだまだ覚えておかなきゃならないことは他にもたくさんあるの。例えば、魔法のこととか」
次の瞬間、龍香が真剣な表情を浮かべる
「…魔法?魔法があるの!?」
「うん、この世界には魔法があって、その魔法は魔石っていう特殊な石を使って発動するんだ」
龍香は手のひらを広げ、彼女の指先に光る小さな青い石を見せた
「この魔石をエネルギー源として、火を起こしたり、風を操ったりできるの。魔石がないと、魔法は使えないのはもちろん、魔石を使った道具も動かせないんです」
「なるほど…(魔石が燃料の変わりというわけか)」
悠斗は理解が進んできたようにうなずく。
「それだけじゃないよ、悠斗」
愛奈が前に出て、悠斗の方へ視線を向ける
「ここには魔界、地上界、天界っていう三つの世界が存在しているの。今私たちがいるのは地上界なんだけど」
「えっ、魔界、地上界、天界?」
悠斗は驚いて目を見開いた
「そう、天界は日本って呼ばれて、過去に天界から天人が来たんだ」
龍香が微笑みながら続ける
「えっ!?本当なの!!」
「私たちのご先祖様は、天界から来た天人なんだ。だから、その影響を受けて、今の街並みになっているんだよ」
悠斗は信じられないといった表情で、もう一度、廃墟となった街並みを思い出す。確かに現代的なビル群やカフェの風景は日本の都市とさほど変わらないことを
「それで魔界ってのは?」
「魔界は、地上界とは異なる時空を越えた世界。そこには魔人という種族が住んでいるんだ」
「そうなんだ」
「通常、結界によって厳重に隔てられていますが、特定の場所や時間帯では結界が薄くなり、魔人や魔界の力が現世に影響を及ぼすことがあるの」
「昔はここで大きな戦争もあったみたいだし」
鈴音が話を引き継いだ
「その戦争の原因は、魔界から現れた魔王っていう悪い魔人だったの」
「魔王…」
悠斗はその言葉に反応する
「それでどうなったんだ?」
「魔王は、結局、地上界と魔界の連合軍によって退治されたよ」
龍香が説明する
「その後、地上界に二度と進出しないことを条件に、魔界と和解したの」
「……今ではお互いに協力し合ってる。魔石や魔法も、魔界の技術を教わって、今は自由に使えるようになったんだ」
「魔界と和解…信じられない話だな……でも、それで魔石が地上界で使えるようになり、魔法も使えるように…」
悠斗はますますこの世界の複雑さを感じながらも、徐々に理解を深めていった
「そうなんだ…だから、魔界は今でも地上界に魔石を提供してくれてるし、魔法も自由に学べるんだよ」
鈴音が嬉しそうに話す。
「そういう意味じゃ、かなり平和になったんだよね!」
「うん…………インデックスが現れるまでは」
小さい声で何かを呟く龍香
「何か言った?」
「なんでもない」
「そういえばさ……魔人たちは援軍に来なかったの?」
「来たけど、駄目だった」
「魔界には来なかったらしいけど、援軍に来た魔人たちはあっという間に全滅したよ」
悲しい表情をする愛奈
「………」
「けど、協力はしてくれているよ」
「協力?どんな?」
「それは後で説明するよ」
「わかった。ありがとう……僕も少しずつ理解していかないといけないよな」
悠斗は自分に言い聞かせるように話し、少し決意が芽生えたようだった
「悠斗さん、私たちがいるから心配しなくていいよ」
龍香が優しい声で励ます
「これからいろいろ教えてあげるから、ゆっくり慣れていってね」
「そうだね……悠斗さん」
愛奈も冷静に続ける
「あなたにはまだ学ぶことがたくさんあるけど、私たちがサポートするよ」
「ありがとう…みんな」
悠斗は心から感謝し、少しずつこの異世界に馴染んでいこうと決意する
が、その時サイレンが鳴り響いた
「なっ!何だ!?」
敵襲!敵襲!インデックス襲撃!直ちに避難を!
新たな事件が始まる
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