第12話 激闘を終えて
広々とした病室には、白いカーテン越しに柔らかな午後の夕日が差し込んでいた。無機質な白が支配する空間の中で、白崎龍香は、ベッドの隣に座り、静かに義理の姉妹たちの寝顔を見つめていた。彼女の横には、神楽木悠斗が立っていた
「愛奈ちゃん、鈴音ちゃん」
病室内は静寂に包まれている。ベッドには二人の少女――白羽愛奈と飛鳥鈴音――が、それぞれ包帯を巻いた腕や脚をベッドの上に横たえている。二人とも深い眠りについており、穏やかな呼吸音だけがかすかに聞こえる
「龍香、もう少し休めば二人とも回復するって聞いているから、大丈夫だよ」
悠斗が低い声で励ますように話しかけた。その言葉には、彼なりの優しさが込められていた
「そうね…ありがとう」
龍香は穏やかに微笑むが、その目の奥には複雑な感情が揺れている
「失礼するわね」
その時、病室のドアが静かにノックされた。振り返ると、水野鏡子が現れた
「……先生」
「事情はあとで聞くわ。まずは、あなた達が無事でよかった」
鏡子は優しく龍香の肩に手を置いた。その瞬間、龍香の張り詰めた表情がほんの少し緩む
「僕はここで失礼しますね」
突然、悠斗が口を開いた。彼は時計を見ながら、静かにそう告げた
「どこに行くの?」
「用事があるんだ…すぐに戻ります」
彼は静かに病室を後にした
「先生……あの…」
「ここでは話しにくいわ。別室で聞きましょう」
鏡子がそう提案し、龍香を促した。二人は病室を出て、近くの応接室へと向かう
応接室は病室とは異なり、温かみのある木目調のテーブルと椅子が並べられていた。窓の外には、冬枯れの木々が見える。鏡子は椅子に腰を下ろし、真っ直ぐに龍香を見つめた
「それで、何があったのか話してもらえる?」
鏡子の声は冷静だが、龍香に全てを話すよう促す確かな力が宿っていた
「……はい」
龍香は深呼吸を一つすると、静かに語り始めた
「私たちがパトロールをしている時に、一人の男が声を掛けてきたんです」
「一人の男?」
「はい、その人は悠斗さんに用事があるって言っていたですけど……愛奈ちゃんが、その人を怪しんで、知らないと言った後に3人でその人を尾行したんです」
「それで?」
「尾行していたら、その人と悠斗さんと会っていたんです。悠斗さんが驚いた後に、その人をスート兵を出したんです」
「スート兵を!!」
「はい、私たち3人は魔人武装して、スート兵を退治して、その人が何者なのかを聞いたんです」
「誰だったの?」
「その人……いや、怪人が言ったんです。『ガルムクラブ団ランク2!鎧甲の覇者ドゥルガニス!』って」
「なんですって!!」
思わず大声を上げ、椅子から立ち上がる鏡子
「せ、先生」
「あ…ごめんなさい。続けて」
「はい……ドゥルガニスは人間の姿から、怪人の姿になったんです。私たちは戦ったのですが…」
龍香は一瞬、言葉を詰まらせた
「どうしたの?」
鏡子が促す
「まったく歯が立たなかった…私たちの攻撃も技も効かなかったんです!!」
彼女の言葉には、まだその時の恐怖が滲んでいた
「でも、悠斗さんも戦ったおかげで、ドゥルガニスを倒すことが出来たんです」
「っ!!それは本当なの!?」
「はい……その後、この病院に自力で来たのですが、愛奈ちゃんと鈴音ちゃんが、負傷してしまって」
「貴方は大丈夫なの?」
「私と悠斗さんはそれほど……」
「……」
鏡子は数秒の沈黙の後、静かに頷いた
「状況は分かったわ。あなたたちが無事で本当によかった。だけど……これからのことを考える必要がある」
彼女の瞳に、深い意志の光が宿る
「これ以上、誰かが傷つかないようにするためにも、調査を進めましょう」
「はい……お願いします」
龍香の声には不安が混じっていたが、それでも彼女の中に少しの安心感が芽生えたようだった
「私は一旦、拠点に戻るわ。あなたはゆっくりしていきなさい」
そういうと、鏡子は部屋を出ていた
龍香は病室に戻ると、愛奈と鈴音はまだ眠ったままだった
「愛奈ちゃん、鈴音ちゃん」
龍香は再びベッドのそばに座り、優しく二人の髪を撫でながらそっと呟いた
「大丈夫。私が、必ず守るから……」
龍香の瞳に浮かぶ決意は、少しだけ強く燃えていた
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