第13話

「では次の懸案事項です。現在人間世界において勇者と聖女が発生したようです。人間の国周辺の森を中心に魔獣や魔人の数が著しく減っている。このため先ほど説明した瘴気の発生場所が変わったり、高濃度の区域が広がる可能性があります」


 妖術師は対策について考えて意見を出してほしいと言っている。


 魔族は瘴気を吸収するし、瘴気で成長するわ。けれど、小さく弱い魔獣等は許容量も小さいためおのずと強いものしか高濃度の場所に住めなくなる。


 強い魔人の街を更に増やすかダンジョンを増やすしかないだろう。


 魔人の街を造っても魔族の行き来が自由に出来なければ栄えることは難しいのかもしれない。


 そうか!

 私はこの情報を得るために呼ばれたのね!


 私は一人で納得し、うんうんと頷いた。


 私は一人納得していると、会場にいる魔人達は各々意見を出している。


 最も瘴気の濃い場所が生まれたら私やファーストしか対処出来ないかもしれないけれど。すると、会場から一人の魔人が声を上げた。


「現在の瘴気の濃さであれば我々でも十分対処出来ますが、魔王城の建つ前、この場所ほどの濃い瘴気では対処不可能です。

 魔王様がその度に足を運ばれるのも我々としては心配でなりません。

 どうか、ここは一つ、魔王様の跡継ぎを作られてはいかがでしょうか?」


 その言葉に魔人達は騒めき、賛成する声が聞こえてきた。


 それを切っ掛けに会場が沸き始めている。妖術師がコホンと咳払いをすると、ピタリとその声も止んだ。


「魔王様、皆がそう言っておりますが、どうお考えですか?」


 ファーストは足を組み替えてつまらないと言いたげに肘をついている。


「……却下だ。毎回同じ話題が出ているだろう。愚問だな。俺が持つ瘴気に耐えうる種は存在しない。耐える事の出来る魔人は瘴気から生まれた者でしかない」


 ファーストがそう答えると魔人達は一斉に表情を暗くする。


 すると会場内で一人の魔人が立ち上がり、ファーストの元へと駆け寄ってきた。


「魔王様!! どうか、私に魔王様の子種を与えて下さい。この命と引き替えても構いませんわ!」


 ファーストの前に現れた魔人はどうやら悪魔種の雌。


 豊満な胸が特徴の彼女はうるうると懇願するように足元で膝をついている。


 ファーストはどうするのかしら?


 殆どの種は交尾により増えるが、厳密に言うと雌のお腹に瘴気の塊を宿す作業なのだ。


 この辺は最近判明したことなのだが、人間とは仕組みが違うらしい。


 種から生まれた魔人や魔獣は自分の持っている瘴気を子に分け与えるため、魔王の配下から逃れられないのはこのせいだと思う。


「くだらん。お前は器ではない」


 ファーストは興味のない感じで言っている。


「どうか! どうか! お願いいたします」


 彼女はそれでも引き下がる気配がない。どうするのか見ていると。


「では瘴気を与えてやろう」


 ファーストは指の先に体内の瘴気を集め始める。そして悪魔種の雌の額に指が触れた瞬間、パチリと彼女は灰になった。


 まぁ、そうよね。


 何十万もの種を生み出す程の強さに成長したファースト。

 瘴気を吸い込む量は凄まじい。


 会議をしている現在でも生み出される瘴気を吸っているのだから。


 まぁ、それは私にも言えることだけれどね。


 馬鹿だなと冷めた目で見ていた私とは違い、会場内はどよめきが起こった。


『消えたぞ、やはり無理なのか』『魔王様はやはり唯一無二の存在なのだ』と様々な声が聞こえてくる。


 その中で一人手を上げた。


「魔王様、もし、この場所以外で高濃度の瘴気が溢れ始めた場合はどのようになさるのでしょうか?」

「あぁ、俺が直接行ってその場で瘴気を吸うか、俺のパートナーを召喚するだけだ」


 ファーストの言葉に会場に居た魔人が騒めき始めた。


 ファーストのパートナー??


 私も聞いたことが無い。

 あれだけ天然で涌いていた魔獣や魔人を潰しまわっていた彼のパートナーに興味を持った私。


「魔王様のパートナーとはどういうお方なのでしょうか??」


 妖術師が静まれと声を出している中で聞こえてきた一言。

 誰もが気になる事よね。

 するとファーストがフッと笑みを浮かべた。

 その瞬間に雌たちはバタバタと倒れてしまった。


 普段から笑わない魔王様の笑顔で気絶したのか、敬愛して止まない魔王様のパートナーがいたことで気絶してしまったのかは謎。


「毎回、魔族会議で跡継ぎを聞かれるのも面倒だから言っておこう。俺のパートナーはダンジョンを作る魔人だ」


 !!!! 私!? 

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