第10話
「!! ギルド長! ここはまた違って明るい。外にいるみたいだ」
「あぁ。凄いな。これがダンジョン管理者が造ったダンジョンなのか」
やだっ。褒められちゃったわ。と、喜ぶ私。
ダンジョンを造り始めてここが正式には四個目なのよね。
私も造る毎に管理者の力は増しているわ。最初に造ったダンジョンという名の洞穴は光もないただの洞窟のようなものだった。
そこにはスキルでスライムや薬草などを生やすだけのものだった。
二個目はそれに照明が加わって距離が伸び、魔物を増やした。三個目でようやくダンジョンと呼べるような物を作り上げた。
彼等は背の高い草むらに隠れていた魔猪に驚きを隠せないようだ。
「おい! この魔猪、小さいぞ!?」
「初心者用だからなのか?」
二人は突撃してきた魔猪を避けながらどうすべきか考えているようだ。
森に住むような魔猪はとにかく大きい。二メートルはあるだろう。かなり好戦的なので見つけたら身を隠すのが一番良いのかもしれない。
狩りの対象として見るのなら落とし穴で動けなくなった所を攻撃して倒すのがいいらしい。
ここにいる小さな魔猪は大型犬程度の大きさ。好戦的なのには変わりないが、サイズが違えば格段に倒しやすくなるだろう。
けれど、突進してくるとそこそこにダメージを負うため馬鹿にしていると痛い目に遭う。一匹ずつ倒したようだ。
先ほどの鳥や兎と違いこれは担ぐしかなさそうだ。
二人とも難なく魔猪を担いで次の階にとりあえず進むらしい。
次はオークよ?
魔猪を担ぎながらは難しいわね。オークは貪欲だから猪を降ろせばすぐに持っていかれるわね。
私はどうするのかワクワクしながら付いていく。
「次はオークのフロアか。チッ。魔猪を捨てるしかないな。オークを倒してフロア全体を確認するか」
「ギルド長。ここのオークは外のものと同じ強さなんだな。普通はここまで群れで生活はしないから倒すのに苦労しそうだ」
「あぁ。そうだな。ここだけなんでこんなに厳しいんだ? そういう時にどこに言えばいいんだ?」
……なるほど。
初心者用のボスとしてオークを置いたけれど、数がいると弱い人間には難しいのね。
数を減らしてボスっぽく一匹だけにすればいいのかしら?
でもこの広いフロアに一匹だけというのも勿体ないわ。
折角森のようになっているのだからを色々と配置しておけばいいのかしら。
私は考えながら二人を見守っている。高ランクの冒険者である二人にとってもオークが沢山いるのは苦戦するものなのね。
徐々に体力を消耗しているようで怪我が増えている。
初心者用ダンジョンを謳っておいて上級者でも怪我するのはまずいわね。
私はオークを種に戻していく。そしてギルド長達に治癒魔法を後ろから掛ける。
残ったオークは一頭のみ。
これなら大丈夫でしょう。
種を回収しながら薬草の種や毒の花など森の生態系に似せた動植物の種を蒔いていく。
これでいいわね。
「おい! ここを、俺達を管理者は見ているのか?? 突然オークが居なくなった。それにさっきまでの怪我が治っているぞ!? それに何だ?? 一気に植物が成長して森になったぞ?」
「あぁ。どこにいるか見当もつかないがどうやら俺達は見られているようだ」
後ろにいるんだけどね。
そう思いながらも黙って二人を観察する。どうやらオークが減った事ですぐに倒し終わり、のんびりとフロアの探索に勤しんでいるようだ。
「どうやら初心者用ダンジョンは地下五階までのようだな」
「強さも初心者向けでちょうどいい。それに魔猪や一角兎、魔鳥などの食糧を得るために何度も入る事になるからダンジョンに閑古鳥が鳴くことはなさそうだ」
二人は探索を終え地上へまた歩いて戻っていった。彼等はギルドと王城の人達とで話し合い今後どうするのか詳細に話し合ったようだ。
制度が確立されるまで何度もここへ足を運び、情報を落としてくれている。
一ヶ月は過ぎただろうか。
ようやく一般の人達がダンジョンに入り始めた。学生が騎士や魔法使いなどの職業訓練の一環として利用されるようになったようだ。彼等から様々な情報を得ていく。
歌劇なども最近は流行り始めたらしい。人間は魔族に比べて感情表現がとても豊かなようだ。
そうしている間にファーストから預かった二人は十分に知識を得たようでファーストの元へ帰っていく事になった。
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