第15話

「じゃあ、作るわよ?」

「あぁ。お前の動きに合わせる」


 そうして私がスキルを使う時に合わせてファーストは瘴気と魔力を種に注ぎ込んだ。


 オークキングの種とオークの種五個は無事に変異種として成功したようだ。


「ふふっ、私がおかあちゃまでファーストがおとうちゃまですよー☆」


 なんて種に語りかけてみる。


 ファーストは私の言葉に興味が無いのか黙ったままだ。


 種の種類を考えなければこうして跡継ぎなんてポコポコ出来るから跡継ぎに躍起になる部下の気持ちが理解出来ないという事もある。


 会議に参加していた魔人達はあくまでファーストの後継者になるほどの者が欲しいのだろうが。


 まあ、そうよね。


「ああ、ついでだ。ウォール、俺の部下の変異種も作りたい。ついでに手伝え。あと、あのダンジョンに帰るなら育てる種も持って行ってくれ」

「いいわよー」


 先ほど私とファーストがしたように彼がスキルを使った時に私の魔力と瘴気を当てて変異種をいくつか作った。


「じゃぁ、そろそろ帰るわ。あ、そうだ。妖術師の宰相が言っていた魔人でも住めないような瘴気が湧き出したら教えてちょうだい。今度は最高難易度のダンジョンを作りたいと思っているのよ」

「あぁ、分かった。ではな」


 そうしてあっさりと私は元に居た初心者用ダンジョンに戻ってきた。


 アラクネには泣いて喜ばれたのは言うまでもない。


 ファーストからの変異種と種、私の方のオーク変異種を住居区画に蒔いた。


 すぐに種達はポコポコと芽が出るかと思いきや、普通の種は芽が出て魔人達が生まれてきたのだが、変異種は根っこが出てきただけだった。育ちが悪いようだ。


 自分で作った変異種は丸一日掛ったけれど、これは生まれてくるまでに一週間はかかりそうね。


 生まれるまでの間に階層を広げておけばいいわね。





 私はダンジョンの最深部に降りてきた。

 そこで階段を作り、更に階下の空間を作っていく。


 ここから下の空間は地上に似た空間を作る。


 太陽を作ることは出来ないけれど、それなりに雰囲気は出ているのではないだろうか。


 ふかふかな土に様々な数種類の魔木を一定間隔で植える。魔木の栄養はもちろん瘴気。


 実は甘いようだ。魔木にも様々な種類があり、用途別に植える事ができる。


 今は食べる物を作るための植物を植えている。


 基本的に魔族にとっては嗜好品だ。


 食に興味のない者も沢山いるのだ。地上にいる人間達は植物や動物を食べて栄養を取るため、様々な物が育てられているのは知っている。


 ただ、ダンジョンにそのまま植物を持ってきても太陽もなければ雨が降ることもない。


 植物が育つ環境としてはあまり良くないと思っている。



 さて、ここにきて問題が発生している。


 人間達が住む国は瘴気がどんどん生産される。それを吸い込む植物は実を沢山付けてしまうのは仕方がない。


 だが、これを毎回採るとなると管理者一人では手が足りない。


 ゴブリンや普通のオークでは知能が低すぎる。


 ここはエントを数体出すべきね。


 水場は上の階にいけばあるし、問題ないわ。知能も時間を掛けていれば大丈夫だ。


 私はエントを五体出した位にアラクネが呼びに来た。


「ウォール様、変異種が生まれました」

「分かった、今行くわ」


 私はいそいそと階段を上がり、種を植えているフロアへと急いだ。変異種から生まれた魔人達はまだ子供サイズだったが、自分達が変異種であることは自覚しているようだ。


「我が主、ウォール様!」


 五体のオーク変異種は片膝を突いて礼をしている。どうやら知能は高く、変異種としては成功したようだ。


 そしてファーストから託された種達も私の前に跪いている。


 よく見ると、彼らは私の魔力も感じる。私が生み出した変異種達も同様にファーストの魔力が見て取れた。


 半々とは言えないまでも六対四といった感じかしらね。


 ファーストから生み出されたのはドラゴニア、アラクネ、奇術師、エント、ドライアドなどの変異種だった。


 最高幹部になりそうな子達ね。


「一杯瘴気を吸って成長しなさい。自分達で好きな部屋を使うといいわ。

 何か必要な物があればこのダンジョンの管理者をしているアラクネに言いなさい。あと、オークキング。

 貴方は成長したらこのダンジョンのシェフになるように。部下はそこにいるオーク四体よ」

「「「ハッ」」」


 私はそう命令すると彼らは話し合いをした後、各自部屋へと散っていった。


「アラクネ、彼らが成長するのにどれくらい掛るかしら?」

「通常であれば上位種でも三ヶ月程度あれば育ちます。ですが、変異種ともなれば半年は掛るのではないでしょうか?」

「そうねぇ。やっぱりそうよねぇ」


 生まれるまでに倍ほど掛ったのだから成長もゆっくりだと思う。


 まぁ、こればかりは仕方がないわね。半年なんてすぐだから気にすることもない。


「さて、私は引き続き階層を広げる作業を行うわ。何かあったらまた呼んで頂戴」

「畏まりました」


 そうして先ほどの魔木を植えた階に戻った私。エントは同じ植物系なので魔木との相性はとても良い。


 魔木の手入れをしたり、丁寧に実を収穫したりしてくれる。


 収穫した実は三階へ持っていき、オークキングが調理をしてくれると思う。一部はアラクネが魔王城に送るように手配している。数も少ないので余ることはない。

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