第2話
瘴気に塗れた池で育った私達は魔物を取り込む事で知識や強さも自分のものに出来る。
何故私と彼が知識を得たのかといえば、瘴気が薄くなったこの地に人間が偶にやってくるようになった、と言っても瘴気を出す沼があるのは深い森の中。
私達が瘴気を吸い続けていたため沼の周辺は瘴気が薄くなり、動物が活動出来るようになってきた。
動物が多くなれば自然と人間も森に足を踏み入れるようになる。
そうすれば動物に襲われて亡くなる人間が必ず出てくる。
私達は動物や人間の死骸も取り込み、人間並みの知恵を得たのだ。
世界は此処だけではない事を知り、人間の存在を知り、瘴気という存在を知った。
私の名前はウォールウォール。
歳は不明。ずっと、ずーーーと昔に瘴気から生まれた。
生まれた時は羽根の生えた毛玉だったけれど、成長するにつれて私達は人型を取るようになった。
私の区分としては魔獣ではなく魔人なの。
瘴気から生まれた原初の魔人だから魔族の縛りは存在しない。
人間からの知識で理解したのだけれど、瘴気を糧にして生きている動物全般を魔族というみたい。
その中で人の形をしている者は魔人。
獣に近い形をしているのは魔獣と呼ばれているわ。
そうそう、魔族の縛りが何かって?
魔王や私がスキル『魔族の種』で作った魔人や魔獣達は魔王や私には逆らえないようになっているそれが魔族の縛り。
生み出された魔人や魔獣などの魔族は種類により限界があるが瘴気を吸収することが出来る。
もちろん私やファーストは瘴気を吸収するのに限りはないわ。
瘴気を取り込んで自分の力に変えた彼は魔族の王となった。そして自ら魔族を生み出し、魔族の国を作ったの。
瘴気が濃い場所は人間が立ち入る事が出来ない。
魔族達は瘴気を自ら取り込む事で森の環境も良くしている。
もちろんそれを知らない人間たちは見てくれの悪い魔獣や魔人達を悪と決めつけて戦いを挑んでくるのよね。
私はというと、ファーストと違い人間達と直接関わることがない。いつも地中に潜み、ダンジョンを作るだけ。
羽根の生えた毛玉が成長し、知恵を付けて人の姿になった今でも魔法は得意ではないし、身体強化も上手く出来ない。
私に与えられたのはダンジョンを作ること。
瘴気を取り込む事でスキルはどんどんと強化されていくみたい。
どうやらこの世界は人間の悪意などの負の感情が瘴気を生み出すのだと誰かが言っていた。
それは大気に放出され、森を汚染し、土にも浸みわたる。私は土に浸みこむ瘴気を利用し、スキルで地下にダンジョンを作っていく。
これが私に与えられた使命なのだと最近思うようになってきた。
スキルでダンジョンを作ったとしても中はただの迷路にしか過ぎない。そこで活躍するのが『魔族の種』。
スキルで生み出された魔獣や魔人は作り主には絶対服従という制約が付いている。
私の生み出した魔獣達は瘴気を取り込み強くなる。ただ、種の種類によっても強さの上限はあるようだ。
スライムはドラゴンにはなれないの。そして瘴気を取り込んで強くなっていく魔族の力の一部は作り主に還元される。
私自身、瘴気を取り込み、種から生まれた魔物たちのおかげで少しずつだが強くなっていく。
もちろんダンジョンに入ってくる人間も時として栄養の一部になる時があるわ。
魔族が人間たちを取り込んだ場合、少しだけ栄養になる。ただ、瘴気ほどの栄養はないから見向きもしない魔族が殆どかしら。
瘴気を取り込んである程度成長した魔族達は少しずつ意思が芽生えはじめる。彼らは人間が居ない時はのんびりと過ごしている事が多い。
意思のある魔族からすると人間は自分たちの住処を荒らす邪魔者でしかない。
私は人間の知識が欲しくて魔物達が倒した人間を吸収することにしているの。
私は一度に得る量は少ないけれど、瘴気や人間を取り込む限界はない。
これは瘴気から生まれたからなのだろう。
きっとファーストが魔王になれたのもそのおかげなのかもしれない。
普段の私の生活といえばダンジョンを作っていく事。
地道に少しずつ広げていく。そして一つのフロアが完成すれば魔族の種を植え、魔族のはびこるフロアになる。
「ウォールウォール様、人間が来ます。隠れて下さい」
注意を促す言葉がどこからともなく響き、私は壁を作り自分だけの部屋に入る。
どうやら魔物から採れる素材は人間たちの間で高く売れるらしく、それ目当てにダンジョンに入るようだ。
まあ、どれだけ人間が魔族を倒しても魔族は種から生まれるので例え人間に討伐されても種を出せばいくらでも出てくるので全く問題はない。
しばらく避難し、配下の魔獣の目を借りて人間の行動を観察する。
ダンジョンに入ってくる人間はどうやら冒険者と呼ばれているらしい。人々は得意な武器や魔法をそれぞれの職業としているらしく、剣士や魔法使い、治癒師、弓使い、盾使い等様々なものがあるらしかった。
人を取り込む時に多少の記憶は覗く事が出来る。覗いた記憶の中に人間の街がいくつも築かれているようだ。
まぁ、私にはあまり関係のない話だが。
そうして何十年もかけて一つのダンジョンをコツコツと作っていった。
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