第17話
その後、私は変わらずダンジョンの細かな部分を作っていると、ファーストの部下から連絡が入った。
「ウォールウォール様!ただいま勇者一行が魔王城を攻めてきております!!!」
「……分かったわ。ファーストにくれぐれも注意するように伝えて」
「畏まりました」
……やはり来たのね。
「ウォールウォール様、少し休まれては?」
「ドラン……。そうね」
私は自分の部屋に入り、ソファへ足を投げ出した。
カーくんが器用にお茶を淹れてくれている。
最近初心者ダンジョンの魔木から茶葉を作れるようになったらしくこうして送ってくれるの。
私自身はダンジョンを作る仕事のため勇者の動きは把握していなかったけれど、部下達は初心者ダンジョンから得る知識で大まかな把握はしていたつもり。
そして人間の国の宰相が初心者ダンジョンにやってきて私に面会したいと言ってきたようだ。
……何かしら?
「ドラン、カーくん、国王に呼ばれたわ」
「もちろんお供します」
私は一度初心者ダンジョンに戻った後、ドランとカーくんを連れて王宮へと向かう。もちろんドランもカーくんも人間の格好に変身する。
ドランは人間でいうイケメン執事、カーくんは愛くるしい小さな男の子の格好になっている。久々に街を歩いていると人間たちは私達を見ている。
「ねぇ、ドラン。私達って変な格好をしているのかしら?」
「違うよ! ウォール様の美しさに驚いているんだよっ」
「私? 仮面を付けているのにそれはないんじゃないかしら?」
カーくんがドランの代わりに応える。
「私達からすればムロー様は女神様ですよ」
「ふふっ。二人とも、ありがとう」
三人で雑談しながら城に入る。門番は予め話が通っていたようですぐに通してくれたわ。
待ち構えていた従者の案内で謁見の間に呼ばれた私達。
あら、やはり人間の十年? という時間はかなり長いのね。
国王は白髪になっていて貫禄が出ている。隣には息子と思われる人間と宰相が立っていた。
「ムロー様、ようこそおいでくださいました」
「歳を取ったわね。次の王は彼?」
私がそう言うと、息子は頭を下げる。
「そうです。我が息子を宜しくお願いします」
「で、私に何か用?」
「勇者達一行が魔王城へ向かいました。我々としては止めることも出来ず、ただ貴女に知らせることしか出来ない。……面目ない」
「お前達が勇者を殺せば良かったのでは?」
「……殺せば国民は怒り狂い、国は成り立たなくなります」
「私の知ったことではないわ。瘴気で人間が生きていけなくなっても問題ない」
私がそう言うと人間たちの顔色は悪くなった。
「仕方がない。暴徒化しても面倒だし、今回は目をつぶる。けれど、そろそろ公表した方がいい。人々も気づき初めているのでは?」
「未だごく一部の者しか理解しておりません。民衆はまだ勇者が魔王を倒すと、瘴気が薄れると信じ切っております。聖女もまた然り」
「……そう。ここら辺で一度痛い目にあうといいわ。魔王は勇者達に倒される。人間達が気づいた頃にまた来る」
この王は理解しているようで良かったわ。
第二、第三の勇者達が生まれないようにしなければいけない。
私は仮面をしているから人間に近いように思われているけれど、ドランやカーくんの見た目は人間だけど、明らかに人間と違うのよね。
魔力なのか、雰囲気なのか?
王達人間への牽制になっているようだし、これはこれでいいのかもしれない。
私達はそのまま最難関ダンジョンに転移した。
「……はぁ、今日はもう何もしたくない気分だわ。カーくん、あとはお願い」
「わかったよっ! ウォールウォール様、ゆっくり休んでいてね」
ベッドに寝っ転がり、天井を見上げた私。
……。
ファーが死んだわ。
身体中からファーの力がうねり出しているのを抑える。
仕方がない。
面倒だけれど魔王城に行くしかない。
約束だものね。
私はパッと立ち上がり、魔王城の前まで転移した。
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