第14話 アリアナへの愛が芽生えた魔王
『魔王妃の間』に移ったアリアナは、隣の部屋(魔王の間)から毎日うなされる声が聞こえてくることに、心を痛めていた。
「どうやら、魔王様が怖い夢を見ているようなのよ。なぜ、毎日うなされるほど見るのかしら?」
「魔王は魔力量が多すぎるから、常に制御していないと魔界が吹っ飛んじゃうのよ。寝ている時は気が緩むから特に危険だわ。だから、自分に怖い夢を見るように魔法をかけたのだと思う。緊張感があれば魔力の暴走を止められるからね」
アリアナの問いかけに、
「それは可哀想だわ。魔王様は一生、穏やかに眠ることはできないの? なんとかしてあげたいわ」
「そうねぇ。方法はあるわ。霊薬をつくることね。希少な薬草や魔獣の素材を合わせてつくるのよ。そうすれば、魔力の暴走を止められるわ」
「だったら、それを取りに行かなきゃ。どこに行けば手に入るの?」
「魔の森よ。それから火山地帯に住む炎鳥や、沼の奥底に住む巨大魚の鱗も要るわ」
「そんなところには、とても行けないわ」
アリアナが途端にがっかりとした顔をした。
「大丈夫よ。私が取ってきてあげる。私の能力をアリアナは知っているでしょう?」
「だって、危険でしょう? そんなことを頼むのは気が引けるわ」
「私にとっては、とても簡単なことだわ。気が引ける、というのなら、私にアリアナとお揃いの服を作ってよ。大好きなアリアナと同じ服が着られたら、とっても嬉しいもん」
「そんなことなら簡単よ。私のドレスとお揃いの服を着たいなんて、なんて可愛いお願いかしら。早速、作るわね」
アリアナは
☆彡 ★彡
「おかしいぞ? 自分に怖い夢を見るよう魔法をかけていたのに、最近は全く悪夢を見ない。ぐっすり眠って魔力の暴走もない。なぜだ?」
アリアナが魔王の食事に霊薬を混ぜてから数日ほど経ったある日、爽やかな朝を迎えた魔王は首を傾げた。
魔王はアリアナのお陰とも知らず、自分の魔力を制御する能力があがったのだと思い込んでいたが、アリアナが毎日のように、小さな服を縫っているのを不思議にも思っていた。
そんな時、『魔王の間』から
魔王は中庭にゆっくりと向かい、
「
魔王はアリアナに魔王城で、もっとゆっくりと寛いで欲しかったのだ。
「嫌われないわ。だって、アリアナは喜んで私のために作っているのよ。私がねだったのは、お揃いのドレス一着だけなのに、アリアナが『それでは恩に報いることはできないわ』って、たくさん作ってくれるんだもん」
「恩だって? いつ、
「アリアナじゃなくて魔王を助けたのよ。アリアナは霊薬を魔王の食事にちょっとづつ入れていたわ。その霊薬の原料は私が調達したのよ。アリアナは魔王に穏やかに寝てほしいんだって」
「霊薬? 幻の薬と言われているものだよな。やはり、
「いいのよ、別に魔王のためじゃないから。私はアリアナの望みを、できるだけ叶えてあげたいだけだもん。炎鳥の羽根とか沼に住む大魚の鱗とか・・・・・・収集作業は、けっこう大変な仕事なのよ。でも、アリアナの喜ぶ顔が見たいから、私は進んで自分からやってあげたのよ。魔王はアリアナの優しさに感謝するのね。アリアナをもっと大切にして必ず幸せにしてよ」
「もちろんだ。アリアナは私が、世界一幸せな花嫁にしよう」
「そうよ。アリアナには最高に幸せになってもらいたいわ。私、アリアナを不幸せにする者たちには、片っ端からお仕置きしてやるもん」
「あぁ、賛成だ。私もお仕置きしてやるぞ。アリアナを虐める奴は皆殺しだ!」
生まれつき膨大な魔力量を誇る魔王は、一度も穏やかな眠りについたことはなかった。しかし、初めて安心して眠ることができて、最高の幸せを感じていたところだった。それがアリアナのお陰だったと聞き、感謝と愛が心の奥底からあふれだす。魔王の過剰すぎる愛は、この瞬間から育まれた。
ふたりの不穏な会話をアリアナが聞いていたら、思わず眉根を寄せたかもしれない。しかし、ふたりは共通の愛すべき
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