第9話 ゼインとカイルに認められるアリアナ
アリアナが侍女として生活を始めた三日め、魔王の領地の各地から代表者たちが集まる会議が開かれた。この会議は魔王の統治に関わる重要な議題を話し合う場であり、魔王の威信を示す大事な機会でもあった。
ところが、会議の開始直前、魔王の側近が重要な書類や資料を『評議の間』に運んでいる最中のことである。突如現れた魔界の悪戯っ子、
「また、あいつの仕業か。こういう大事な時には決まって悪戯をしかけてくる。困ったものだ。あれは、とても重要な書類だったのに」
『評議の間』の廊下で右往左往する魔族たちに、アリアナは
「庭園で一番大きくて立派な木はどこにありますか? その木の上に登り、小さなツリーハウスがないか探してみてください」
「は? 私たちは遊んでいるわけではないのだぞ。そんなところにツリーハウスなど、あるわけがない。魔王城の庭木で一番大きく立派なものは魔尊木と呼ばれ、とても大事にされている。登るなんて不敬であろう」
「確かに、魔尊木には誰も近づかない。
「ふむ。魔尊木に魔軍団を登らせろ。書類を見つけた者には褒美をだす」
魔王の命令に、
だが、驚いたことにアリアナまでその木に登りだし、楽しげな声をあげた。幼い頃、アリアナは裏庭の大木に登り、秘密基地を作って遊んでいたことを思い出したのだ。そのころは
「やっぱり、ツリーハウスがありましたわ。それも小さくて可愛いのがたくさん! なんて芸術的センスがあるのかしら。それぞれのツリーハウスには綺麗な彫刻がしてあるし、いろいろな物が隠してあるわ」
アリアナがひときわ豪華なツリーハウスを覗き込むと、なかには可愛いドレスを着た小さな
「怖がらなくていいのよ。でも、さきほど奪った書類を返して欲しいの。あれはね、これから使う大事な物なのよ。代わりに、私のブレスレットをあげる。首にかけたらネックレスになって、きっと素敵よ」
「本当に、もらえるの? それなら、さっきの書類を返してもいいわ。私は好奇心旺盛で、特に貴重なものや珍しいものを集めることが大好きなの。魔王の側近たちが大事そうに抱えていたから、つい手がでちゃった」
「わかるわ。きっと、あなたはちょっぴり寂しいのだと思うわ。側近の方たちに構ってもらいたかった気持ちもあるわよね? 私とお友達になりましょうよ。書類を集めるよりも、キラキラ光るビーズや可愛いリボン、甘い木の実を集めた方が楽しいわよ」
「そう、あなたの言う通りだわ。私は寂しかったの。誰からも歓迎されないし、話しかけてくれる魔族もいないから、いつもひとりぼっちだったもの」
「あなたの他に同じ種族はいないの?」
「いないわ。よくわからないけど、私は生まれた時から一人だったもん」
「それは寂しかったわね。でも、もうひとりじゃないわ。私がいるもの。持っていってはダメなものと、良い物を、私が教えてあげるから、みんなを困らせてはだめよ」
アリアナの説得に深くうなずいた
(初めてのお友達ができたわ。アリアナは私のお友達・・・・・・ふふっ、嬉しいな)
それ以来
「なんとまぁ、魔界いちの悪戯っ子、
その事件以降、
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