第23話 魔界の楽しいお祭り(炎の舞踏祭)

 今日は炎の舞踏祭だ。炎の精霊に感謝の意を示し、彼らの力や存在を称えることが主な目的になる。炎の精霊は魔界の力強い存在であり、その恩恵や影響を受けることが多いため、祭りを通じて感謝の気持ちを表すのだ。

 魔王とアリアナは祭りの中央に位置する特設の観覧席に座り、周囲には踊る炎の精霊たちと、炎を使ったパフォーマンスが広がっていた。


 魔王はアリアナのために、自らの力を使って特別なパフォーマンスを準備していた。炎の精霊たちが踊る幻想的なショーが始まると、魔王もアリアナの目の前で「炎の愛のデモンストレーション」を始めた。魔王は器用に火の玉を操り、アリアナの名前を炎で形作りながら、アリアナのためだけに作られた愛のメッセージを作ったのだ。  

 魔王の視線がアリアナだけに向けられていることを、他の観客たちは微笑ましく感じていた。魔王夫妻が仲睦まじいことは、魔界民としては喜ばしいことなのだった。


 さらに、魔王は祭りのさなか、アリアナに次々と贈り物を手渡す。最初は美しい炎の花束、これは永遠に消えることがない炎を花束のようにまとめたもので、魔界では愛する者に贈る習わしがある。次に炎の力を宿した宝石で作られたネックレス、指輪にピアス。これに加えて、魔王はアリアナの周りに炎の鳥や炎の蝶を作り出し、それが彼女を取り囲んだ。やがて、魔界民たちはアリアナの周りに魔王しか入れない結界が張リ巡らされていることに気がつく。

 人々からは「これほどの溺愛は見たことがない」と呆れる声が飛び交ったが、魔王は全く気にかけなかった。なにしろ、アリアナは運命の相手、最愛の妻、唯一無二の宝物なのだ。誰がなんと言おうが、全力で愛する、そんな気持ちでいたのだった。


 祭りの終わりには、魔王は「炎の祭壇」にアリアナを連れて行く。そこで、魔王はアリアナのために特別な儀式を行うと言いだした。炎の中に願いを込めた紙を投げ入れる儀式で、魔王は自分が投げるべき紙を準備し、それに「アリアナを永遠に愛し続けます」「アリアナにすべての幸福を捧げます」といった愛の誓いを書き込んだ。

 魔王が紙を何度も何度も投げ入れるので、祭壇の周りはアリアナへの愛のメッセージだらけになった。それが炎の中で次々と燃え上がり、その勢いは凄まじく火柱が天にも届きそうなほどになる。


 その光景に魔界の住人たちは呆れながら「魔王様にここまで愛されると、ちょっと怖いかも」と苦笑いをするのだった。しかし、アリアナは過剰すぎる溺愛を喜んで受け止めた。なぜなら。二人は相思相愛の運命の相手なのだから。


 そして、このいささか度を超しているかのような重い溺愛は、まだまだ始まったばかりなのだった。



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魔王は人間の公爵令嬢を溺愛する 青空一夏 @sachimaru

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