第四話 夢に向かって足掻いているだけなのに
書くべきかどうかは分からない。いや、書くべきではないのだろう。
何故かというと、僕は別に彼のことを語る必要はないし、一言で言うと“無駄”で“失礼”な内容だから。
そして、僕は他人を気にする立場にいない。僕がするべきことは“他人を気にせず面白い話を書き続ける”ことだ。
しかし、書きたくなってしまった。気になってしまった。
他人の人生に干渉したくなった。それが、人好き物好き物書きのサガだから。
本題に入る。
僕と同じくらいの時期にweb小説を投稿し始めた同期のような存在がいる。
ファンタジーと現実世界を混ぜ込んだ作風が持ち味の一般ワナビー。
もちろん、名前は伏せたうえで話を進める。
おそらく向こうはこちらを意識していないが、僕は同時期に交流のあった人はほんのりと覚えている。
彼は僕が知る限りで六回くらいペンネームを変えていた。彼が元々どんなペンネームをしていたか覚えて……いる。が、途中のペンネームはあやふやだ。
そして、今現在彼は今までに書いた作品を手直しして、色々なサイトに投稿している。
僕はしばしば知り合いの作品を読みに行く。そして決まって足跡はつけない。
それはあくまで情報収集だし、評価せずにフラットな視点で批評したいから。
性格は悪いかもしれないが、僕は交流に関してはドライな方だと思う。
金も貰っていないのにおべっか使ったコメントしたくないし、人間関係は自然とできるものだと思っているので、最低限のマナーと思いやりだけ持って後は成り行きに任せている。
後は、純粋に才能の集まる場所、もしくは自分の才能が発揮できそうな場所に顔を出している。
面白い文章で皆を笑わせたいし、逆に脳が刺激を受ける人たちと一緒にいることで自分の新しい側面を開拓できると思っているからだ。
だから、自分が面白いと思えない“無駄”な場所からはフェードアウトするし、自分が何かを与えられない“無駄”な存在だと思ったらこちらもフェードアウトする。
良くも悪くも孤独になるが、僕はそれも必要なコストだと割り切っている。
話がずれてしまったので彼の話に戻る。
前置いたうえで、彼の作品はあまり評価されていない。
ズバリと言ったが、評価されていないと判断した理由は読者からの反応が少ないことにある。
これは、僕も自分事としてとらえていて、創作を長くやっていくにはある程度の外部評価を得られた方が健康にいいと考えているからである。
正直、完全に周りの目を気にせずに創作を長く続けることが出来るか?
と、聞かれると、僕は無理です。むしろ、他人を喜ばせるために試行錯誤するという指針があった方が創作技術が伸びる気がしています。
コメントもいいねも少ない。こんなに長くやってきているのに。
おそらく、彼も同じ気持ちだろう。なぜ自分が評価されないのか。
きっと、自分が花咲く場所を間違っているからだ。
だから、自分の作品を色々なサイトに投稿し、自分のペンネームを変えて心機一転を図る。最近、彼のツイッター投稿が空元気に見える。
彼が評価されない理由は何となくわかる。どれもほぼほぼ前作の焼き直しで中身は昔のものと変わらないからだ。読者もどこかで、既視感が頭をよぎるのだろう。
タイトルとペンネームを変えて初心者ブーストを利用しているのも分かるが、すでに効果も切れ始めている。もはや末期の麻薬中毒者のごとし。
長く創作をやっていると、途中で創作を辞める人を沢山見る。
新しいものを生み出し続けることはつらい。結果が出ないのも辛い。
書かなければならないことと、シンプルに書くことが好きというモチベーションが創作という生き方を成り立たせていると感じた。
その点から考えると、今の彼はどうなんだろうか。
もう戻れないところまで来ているのかもしれないし、実は本気で創作を愛しているから続けているのかもしれない。そこは僕には分からないし、出来れば後者であってほしい。
だけれど、これを自分事に当てはめたとき、本来辿り着く場所に破らなければいけない殻を、僕はちゃんと理解できているのだろうか。
それはおそらく正しい努力と呼ばれるものだ。
今回、この話を書いたのは、ひとえに自分が転換点に来ているような気がしたからである。
創作とどう関わっていきたいか。改めて考えなおしたい。
無駄だと思ったことがまわり回ってとんでもないことになる話 鷹仁(たかひとし) @takahitoshi
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