イタリア、ヴェネツィア暮らしの日本人留学生が、迷いつつも決めた物件を襲った恐怖。
ヴェネツィアの街を襲う高潮「アクア・アルタ」とはどんなものなのか。
十分注意していても、時に現実はその上を行くことがあるのを実感しました。
この経験の後、作者様は住まいについて、とある決断をされるのですが。
歴史のあるイタリア、世界遺産のヴェネツィア島での暮らし。
国立音楽院で学ぶ日々、バールで飲むマッキアトーネ(コーヒー)はまるで映画のようでうっとり。
だからこその高潮が運ぶ現実感が半端なかったです。
タイトルにある『運命の7cm』の顛末を、ぜひご自身でお確かめください。
作者の綾森さまのファンの方、海外暮らしのお話が好きな方、予想を超えてくる現実を体験したい方、いろいろな方におすすめのエッセイです!
ヴェネツィアに留学していた作者様は、半地下の家に住んでいた。そこに迫りくる、観測史上二番目のアクア・アルタ(高潮)の記憶。
まず、ヴェネツィアって美しいなぁと思いました。さりげない日常のやり取りや景色が日本とは違っていて、それだけで興味深いエッセイでした。アクア・アルタというのも初めて知りました。
家を借りる時、きちんとアクア・アルタのことを気にしていたのに、このような危機に直面したのが、こちらの作品の怖いところではないかと思います。目に見えて楽観的過ぎた、というわけでもないように思うのです。(というのは、日本の感覚なのでしょうか?)
でも、災害はいつだって予期せぬ時にやって来ます。
ホラーでは「逃げられない状況で危機が迫ってくる」というシチュエーションが用いられますが、こちらに描かれている体験は、まさにそれの現実版です。めちゃくちゃ怖いです。
人間、生きていたら危険だらけです。例えば、外出したら交通事故に遭うかもしれないから外には出ない、とはいきません。
備えていても備えていなくても、自分事と捉えていても他人事と捉えていても。危機とは、私たちの背後に音もなく忍び寄り、気づいた時にはもう遅い、あるいは気づく間もなく……というものなのでしょう。
自分は本当に最善を尽くしているか? 今一度見直してみようと思いました。
カクヨム公式自主企画「怖そうで怖くない少し怖いカクヨム百物語」にエントリーした作品なワケなんですが。
怖い!
なんとかなるのではと思ったのですが(だって作者様、お元気に更新してくだっていますから)そんな勝手な安心を担保にしつつ読み進めて、いや怖かった。
舞台はヴェネツィア。
水の都ならではの災害、「アクア・アルタ」です。
もうその名前そのものがファンタジックですが、作品内の出来事は、映画になりそうなくらい手に汗握る、ヒヤヒヤ感。
このエッセイで、学ばせてもらったのは
軽視したらいけないっていうこと。
最近なかったから「ない」は無いということでしょうか。
でも、このスパイラルに誰しも嵌まりそうな気がします。
だって、まさか自分にって思うじゃないですか。
災害って、得てしてそういうものだって思うんです。
水の都から冷たい手招き7㎝
背筋を氷らせながら、読む価値があると思うんです。
怖いをなくした瞬間、僕らは油断するんだろうなぁ、って。
このエッセイを読みながら、思ったのでした。