迫りくる災害。現実での危機が最も怖い。

ヴェネツィアに留学していた作者様は、半地下の家に住んでいた。そこに迫りくる、観測史上二番目のアクア・アルタ(高潮)の記憶。

まず、ヴェネツィアって美しいなぁと思いました。さりげない日常のやり取りや景色が日本とは違っていて、それだけで興味深いエッセイでした。アクア・アルタというのも初めて知りました。
家を借りる時、きちんとアクア・アルタのことを気にしていたのに、このような危機に直面したのが、こちらの作品の怖いところではないかと思います。目に見えて楽観的過ぎた、というわけでもないように思うのです。(というのは、日本の感覚なのでしょうか?)
でも、災害はいつだって予期せぬ時にやって来ます。
ホラーでは「逃げられない状況で危機が迫ってくる」というシチュエーションが用いられますが、こちらに描かれている体験は、まさにそれの現実版です。めちゃくちゃ怖いです。
人間、生きていたら危険だらけです。例えば、外出したら交通事故に遭うかもしれないから外には出ない、とはいきません。
備えていても備えていなくても、自分事と捉えていても他人事と捉えていても。危機とは、私たちの背後に音もなく忍び寄り、気づいた時にはもう遅い、あるいは気づく間もなく……というものなのでしょう。
自分は本当に最善を尽くしているか? 今一度見直してみようと思いました。

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