赤いオッサン3
あっという間だった。
血だらけで横たわる男達。赤いオッサンはそれを踏み越えて家族に近寄る。
「ひ、ひぃいい」
そのあまりの出来事に家族は怯えていた。
赤いオッサンはどうしたものかと思案する。
子供にプレゼントを渡したいだけなのだが……なんとか怯えさせずにプレゼントを渡すにはどうしたものか……
何かを思い付き家族の方を見て指をピンと立てる。
赤いオッサンは白い大きな袋を取り出すと、その袋の中に男達を詰め始めた。歌を歌いながら半ば強引に男を詰める。
不思議な袋だった。どう見ても大の男3人が入る大きさではないがスッポリと収まっている。
「I'll make the bad kids Santa♪《悪い子はサンタにするぞ♪》 I'll make the bad kids Santa♪《悪い子はサンタにするぞ♪》 I'll make the bad kids Santa♪《悪い子はサンタにするぞ♪》」
やがて歌が終わると、赤いオッサンは家族に向けて指を立てた。よく見ててごらん、と言わんばかりの笑顔で。
やがて男達が入っていた袋がモゴモゴと動きだした。そして……
ゴキン……バキ……グチャ……
という、およそ人間から奏でることは出来ない音が室内に響いた。真っ白な袋は、やがて赤く染まり始める。
「ひ、ひぃいいい!」
家族から悲鳴があがる。
その悲鳴を聞いた赤いオッサンは慌てて人差し指を口に当ててもう片方の手を前にかざして落ち着かせようとする。
「Oh……wait wait wait! 《待って。待って。待って。》don't worry it's fine《心配ない大丈夫だよ》」
恐怖のあまり声も出なくなった家族を、落ち着いたと判断した赤いオッサンはニッコリと微笑むと袋を指差す。
袋はみるみる内に赤い染みがおさまっていく。染みが消え、真っ白な袋に戻ると今度はモゾモゾと動き始めた。
「here we go. Take a look《さあ 見ててごらん》」
赤いオッサンがそう言うと……
「ホッ!」
「ホッホー!」
「イィヤッホー!」
袋の中から元気よく赤いオッサンが3人飛び出して来た。
「
赤いオッサンが4人になった。
目の前で起きた信じられない光景を家族は呆然と見ているだけだ。
「It's gift time《プレゼントの時間だ》
Now it's your first job as a new employee. this kid is... yeah! It's a puppy Give this boy a small, cute puppy as a present!《さあ新人、初仕事だぞ。この子は確か……そう! 子犬だ! 小さくて可愛い子犬をこの子にプレゼントするんだ! 》」
「ホゥ ホゥ ホゥ」
袋から飛び出して来た赤いオッサンの一人は笑いながら白い袋をまさぐる。探し物が見つかったのか。ニンマリとすると袋から取り出し男の子に手渡した。
ビチャ……
「ひゃっ……」
手渡されたモノの感触に男の子は思わず手を引っ込めてしまい、それを落とした。ドチャッっと床に落ちたピンク色の物体はヌメヌメの液体にまみれてビクビクンと微かに動いていた。
「オ、オエエエエエエエェェ!」ビチャビチャビチャ
男の子はそれを見た瞬間に吐いてしまった。
「It's a failure…… It's not a puppy, it's a fetus. You're still immature, you're new.《失敗だ……子犬じゃなくて、それじゃあ胎児だ。まだまだ未熟だな新人。》」
少年には申し訳ないが……出せるプレゼントは一年に一人につき一つ。
まあ……さっきまで強盗をしていたド新人だ。技術も英語もまだまだ……今回はこれで我慢してもらおう。
なぁに……まだ生きてる。成長すれば可愛いくなるさ。
赤いオッサンはゲロを吐き続ける少年の頭に手を置き「Please take care of your dog《可愛がってあげるんだよ》」と笑いかけると家族に背向けて窓に向かう。
さあ。行こう。まだ
「
そう言って部屋を後にする赤いオッサン達。
雪が舞い降りる中、窓から飛び出すと空高く舞い上がり、迎えに来たトナカイの引くソリに赤いオッサン4人が乗り込み次の目的地へと旅立つ。
夜の空に、彼らの姿が小さな光となって消えていく。
クリスマスのプレゼントは、ただの贈り物ではない。
それは、愛と希望、そして未来への願いを乗せた、小さな魔法なのだ。
メリークリスマス。
メリークリスマス皆さん。また来年。
赤いオッサン ナカナカカナ @nr1156
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