颯樹の日常 ー過去ー

…好き。


だけど、それは友達として。


友達だって知られてしまったら、碧にまで被害が及ぶかもしれないし。


どう答えたらいいんだろう。


「ぼ、僕は…」


「お前さっきから何なの?」

碧が苛立ちを隠せずに問いかける。


こんな怒ってる碧、初めて見た。


「何って"友達"だけど?そうだよな?」

そう言ってニヤニヤしながらこっちを見てくる。


友達なんかじゃないって。

そう言いたいのに。


俺が、否定できないことを分かってるんだろう。


「う、うん」


虐められてるって知られたくない。


「颯樹にちょっかいかけてたのってお前ら?」

碧が鋭い目で問い詰める。


「そうだって言ったら?」

相手が挑発的に返す。


「許さねぇ…!」

今にも殴りかかりそうな勢いだ。


碧が、どうして怒ってるの…

俺なんかのために、問題起こして欲しくない。


「あ、碧、落ち着いて」


こんなことで問題を起こしてしまったら、一生後悔することになると思うから。


「はっ、何まじになってんの?あ、お前の方が好きだったりして…」


そう言って嘲笑う。


僕の方が思わず手が出そうになった。


自分のことには怒れなかったのに、碧が馬鹿にされたとたん怒りが込み上げてきた。


「当たり前だろ!」

碧の声が震える。


「っ、」


それって、碧は俺の事…


「颯樹は大事な友達だ!」


友達だって言われて、

嬉しいはずなのに喜ぶべきなのに。


何故か痛かった。

苦しかった。


「というか、さっきから突っかかってきて、何なの?もしかして颯樹と友達になりたいのか?」


「ふ、ふざけたことぬかしてんじゃねぇよ!」


「…じゃあ、さっさと目の前から消えてくれない?」

冷たく言い放つ。


碧が碧じゃないみたいだ。


「もういい。こんな奴と話す価値もねぇ。行くぞ」


良かった。


これ以上、碧に被害が及ぶことは無さそうだ。


「あ、待って」

碧が呼び止める。


「なんだよ」

「次、颯樹に何かしたらその時は…分かってるよね」


碧、俺のために…


「こんな奴どうでもいい」

そう言い放って去っていった。


それってつまり、もう俺の事を虐めたりしないってこと、だよね。


「…ごめんね碧、」


僕のせいで迷惑かけた。


「颯樹は何も悪くないだろ?どうして面倒な奴に絡まれてるって言わなかった」

碧が優しく問いかける。


「…迷惑かけたくなかったから」


それと、こんなかっこ悪い姿見られたくなかったから。


「は?迷惑なんて思うわけないだろ」

碧が真剣な表情で言う。


「僕と一緒にいると碧まで変な目で見られる」

碧の顔を見ることができず、目を伏せた。


「颯樹のどこが変なんだよ」


変…

なんだって。


「僕の目は…女みたいで気持ち悪いから」


「何言ってるんだよ。お前の目は綺麗だ」

碧が優しく微笑む。


その瞬間、僕は恋に落ちた。


いや、気づかなかっただけで前から好きだったんだ。




だけど、あの時、碧に助けられて好きが確信に変わった。

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