楓樹の日常 ー過去ー
碧とは幼稚園の頃からの友達だった。
何をするにも常に一緒にいた。
だけど、小学校にあがると碧は僕以外にも沢山友達ができた。
碧の周りにはいつも友達がいて、人見知りの僕に友達なんて出来るはずはなく、教室の隅にいた。
僕に碧の隣は似合わない。
きっと碧も僕から離れていってしまうと思った。
だけど碧は…そんな僕をいつも気にかけてくれた。
こんな僕のことをみんなに紹介して、輪の中に入れてくれた。
何か困ったことがあればすぐに駆けつけてくれた。
そんな碧が好きだった。
僕のヒーローだった。
中学生になった僕は、何故か女子からよく声をかけられるようになった。
"目がキレイ"だと言う理由で。
それを、一部の男子はよく思わなかったみたい。
「女にチヤホヤされて調子乗ってんじゃねぇよ!」
調子に乗っているつもりはなかった。
「っ、僕は別に…」
「男のくせに女みたいな顔しやがって」
それから、"男女"とからかわれるようになった。
みんなの前で堂々と虐める勇気がなかったのか、影でコソコソ嫌がらせをするようになった。
碧には気づかれたくなかった。
これ以上情けない姿は見せたくなかったから。
それなのに、
「何かあったのか?」
「え?」
何で、まさか気づかれた?
いつ、どこで、
「違ったか?」
「違うけど…何で?」
お願い、知らないでいて。
「いや、最近元気ないから」
「そんなことないよ」
「ならいいけど、何かあったらいつでも言えよ?」
「うん、ありがとう、」
良かった。まだバレていないみたいだ。
「あ、楓樹じゃん」
どうしてっ、よりにもよって碧と一緒の時に見つかるなんて、
「友達か?」
「いや、それは…」
やっぱり碧は何も知らないんだ。
こんな奴ら友達なんかじゃないのに。
「もしかして…最近楓樹が元気なかった理由ってこいつらのせい?」
僕の表情から何かを読み取ったみたいだ。
「たしかお前は隣のクラスの…」
「小湊碧だけど」
「そうそう。てか、お前みたいな人気者が何でこんな女みたいな奴と仲良くしてんだ?」
やめて、
「女…?」
お願いだからやめてくれっ、
「特に目」
碧には虐められてることを知られたくないのに。
「楓樹の目がなんだって言うんだ」
「男のくせにおん『もういい加減にして!』」
これ以上、惨めにしないで。
「お前、誰に向かって吠えてんの?」
明日から、今まで以上に虐められるようになるんだろうな。
だけど、今はそんなのどうでもいい。
「え、何?もしかして…お前こいつのこと好きなの?」
好き…?
僕が碧を?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます