結衣の日常

「ただいまぁ」


「あ、帰ってきた。どうだった?」


様子を見る限り、あまり仲良くなれなかったみたい。


「まず腐女子なのは合ってた。でも私とは合わない」


「性格がってこと?そんな短時間話しただけで相手の全部を理解することは無理だと思うけど」


「好みが合わないの!地雷連発なの!」


「地雷?」


爆発…的な?


「ツンデレ受けは地雷だとか言って来たの!喧嘩売ってるでしょ!」


ツンデレウケハジライ…?


呪文か?


「なにを言ってるのかよく…」


「まぁまぁ。好みは人それぞれだからね」

理解できるなんてさすが…あ、そっか。花菜も腐女子だった。


「でもさぁ、超ドSでツンデレのツンを出すことさえ許してくれない攻めとか、逆にデロデロに溺愛してツンをもまとめて包み込んでくれる攻めとかカップリングは無限なのに、、」


「そうだね」


「だから何を言ってるのかさっぱり…」


ただでさえ理解できないのに、オタク特有の早口で、そもそも聞き取れない。


「極め付きは女体化ものが一番大好きだって!そんなものはHLだろうが!」


女体化…?どういう状況?


「へー好みは人によって違うけど一番か。確かにそれは珍しいかもね」


「女体化?BLってファンタジーなの?なんでもありなのか…?」


「残念ながら同志を見つけたが仲間にはなれそうにない」

「それは残念だったわね」


えっと、とりあえず仲良くなれそうにないってことかな。

「話の90%理解できなかったんだけど、とりあえず、どうやって声掛けたかだけ聞いてもいい?」


「え?普通に耳寄りに腐女子って聞いたんですけど事実ですかー!?って。」


うるさ。普通にうるさい。


「はぁ、その音量で言ったらクラスの子にバレちゃうじゃない」

「そう?向こうは別に気にしてなさそうだったけど、」


「あんたが鈍感なだけじゃない?腐女子ってみんな隠れて生息してるものなんでしょ?」


そう何かで聞いたことがある。


「何その偏見!」

「だって花菜は隠れて生息してるでしょ?」


「まぁ、そうなるのかな」

「いやいや、花菜は3Lだから!」


3L?DとKはどこいった


「3L?ダイニングとキッチンは?」

「なにそれ」

「え?」


なんの話しをしてるんだっけ、


「2人とも落ち着いて。3LっていうのはHL、BL、GLを読む人のこと」

HLってなんだ…?


「はい先生」

「なんでしょう」


「HLってなんですか」

「結衣がいっつも読んでるやつ!」


花菜に聞いたのに杏奈が答える


「少女漫画?」

「はい。ヘテロラブの略で異性愛者の恋愛を扱うもののことですよ」


花菜が先生口調で答える。うん。花菜は教師がよく似合ってる…ってなんの話だよ。


「日本ではNLの言う言葉が広く浸透しているけど、何がノーマルだ。同性愛はノーマルじゃないのか!?ってならない!?」


「多様性が歌われている世の中だけどまだ同性愛者に対して物珍しい目で見る人は少なくないでしょ?自分もそういう風に見られるのが嫌で隠してる子も沢山いるわ」


「でも、花菜は違うんでしょ?」

「どうして?」


「だって花菜は偏見とかないし、そもそも偏見が無くなることはないって気にも止めてなさそう」


「よく分かってるね。多様性って言わば諦めのようなものじゃない?全員と分かり合えるなんて端から願っても信じてもないのよ」


「分かり合えるよきっと!」

「うん。杏奈はそのすてきな心を大事にしてね」


私は、分かり合えないとも分かり合えるとも思わない。けど、何を言いたいんだって聞かれても私だって分からない。


「じゃあなんで腐女子って言わないの?」


「聞かれないから。別に、わざわざ自分から言うことでもないのかなって。結衣もわざわざ友達に少女漫画大好きって言わないでしょ?聞かれるから答える。違う?」


確かに…今まで自分で公言したことないかも、


「そうかも、」


「それに、腐女子だということで、クラスの男子たちに俺たちも勝手に妄想されてるのかなって思わせちゃったら可哀想じゃない?」


「お優しい。でも杏奈が公言しちゃってるから意味ないかも、、」


あの時はほんとに、びっくりしたなぁ。


「ふふ、確かに。自己紹介の時に、私は腐女子です。私の前でイチャイチャしないでください。妄想が膨らんで興奮します。って言った時は凄い子がいるとは思ったけど、まさかこんなに仲良くなるなんてねぇ」


…私もです。


「姉さんってばツンデレなんだから」

なんてデレデレして言っているが、


「それは私も同感」

「えぇ、結衣まで…そんな冷たいとこも好きだけど」


べったりひっついてくるのはいつもの事だから、軽くあしらう。


「っていうかもう漫画返してもらっていい?」

「あ、はい。お納めください。ありがとうございました。」


急に少女漫画貸してって、何でだ?普段は読まないのに


「てかなんで急に少女漫画読む気になったの?あ、まさか少女漫画の良さに気づいたか!?」

「いやー、先輩と付き合いたいなぁと思いまして」


「は?先輩?」

「少女漫画読んで今どきの恋愛マスターしてとこーかなーなんて」


あ、それで参考書とか教科書とか言ってたんだ。


「何?好きな人出来たの?」

「はい!」


「またぁ?」

最近隣のクラスの男子好きになったって報告聞いたばっかりなんですけど。


「なにその反応!」


そりゃ、こんな反応にもなるよ。


「本気なのね」

「え?」


「今までは眺めていただけで、付き合うために何かしようとしなかったから」


「そーか、私本気なのか!」


杏奈なの本気、いつまでもつか。

「今回はいつまでもつのかな」


「いつまでも!なんたって本気なんだから!」

「うんうん。素敵ね。応援するわ。」

「姉さん…」


「私もまぁ、見守っとく」

「私のバックには力強い味方が…」


いちいち大袈裟なんだから。

「ちなみに誰」

「えーそれ聞く?聞いちゃう?」


聞かなければよかった。めんどくせぇ。

「いや、やっぱりいい」


「ごめんごめん!海斗先輩です!」

「海斗先輩…ってあのハイスペックイケメンの!?」



成績優秀、運動神経も抜群の王道ハイスペックイケメンの海斗先輩のこと言ってる…?



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