高校生の日常
@hayama_25
結衣の日常
「なんだよこれ!」
後から机を叩く音が聞こえる。
「どうしたの」
「この漫画ありえないんだけど」
思ったより痛かったのか手首を回しながら訴えてきた。
「ちょっと借りといてその態度は何?」
朝遅刻ギリギリで教室に入ってきたかと思えば、今持っている漫画を全部出せだのなんだのって
「だってありえなく無い?」
「何が」
「学年一の地味子が学年一イケメンと付き合うって…漫画かよ!」
「漫画だよ」
この子はさっきから何を言っているんだ。
「漫画じゃ困るんだよ。あくまで参考書として、いや私の教科書として存在してくれないとさぁ、」
何を訳の分からないことを…
「まず漫画って非現実的だからいいんだよ。漫画にリアルを求めるな。この、BL漫画大好き腐女子が」
「はいー今全世界の腐女子敵に回したー」
「そもそも、少女漫画を教科書代わりにするのは無理がある」
「少女漫画がこんなにも非現実的だとは思わないじゃん」
「現実的な少女漫画なんて誰が見たいわけ?イケメンは美女と付き合って美女はイケメンと付き合うのがこの世の定めなのに、漫画でぐらいイケメンと付き合いたいじゃない」
漫画ではキュンキュンするのに、現実でそれされたらなんか萎える…みたいなことはよくある。
「はい!完全アウト!今の発言はアウトです!彼氏がいるやつの言うセリフじゃねぇ」
「今のは語弊があった。あくまでみんなの意見を代弁した迄であって、私の彼氏は素敵な人です」
「そうだよ!あんな優しくてイケメンな男を捕まえて文句まで言うとはなんて贅沢な奴なんだ」
捕まえてって、私をハンターかなんかだと思ってるのか?
「私だって彼氏欲しいのに」
うーん。
「とりあえず、男を見るなり攻めだの受けだの言うのやめてみるとか?」
杏奈のせいである程度のBL用語を覚えてしまった。
「それは腐女子の宿命。致し方のないことであります。」
腐女子…で言うと、
「あ、そうそう!この前あんたのせいで腐女子だと思われたんですけど?」
「え?それって私のせい?」
「私は人生で一度もBL漫画を読んだことがなければ触れたことすらないの。それなのに勘違いされるなんてあんたと絡んでるから以外思いつかない」
「ちなみに誰。この学校の腐女子は全員顔見知りなんだが」
うん。杏奈のコミュ力はバカ高い。それは、いや、それだけは尊敬する。
「隣の組のえーっと、そう、渡辺さんだ。急に攻めの反対はって聞かれてつい受けって言っちゃって。あんたが毎日念仏のように攻め受け攻め受け言うから…」
「なに!?渡辺さんも腐女子だと…私としたことが同学年の腐女子を見落としていたなんて!早速声をかけに」
「やめときなよ」
彼女にだって周りに知られたくないことぐらいあるはず
「何で!」
「だって私に単刀直入に腐女子なのって聞かずに遠回しに聞いたってことはだよ?もしも違うかった時のリスクを考えて…ってあれ?」
「もう行ったわよ」
ずっと傍で黙って聞いていた花菜が静かに口を開いた。
「はぁ、その行動力とコミュ力だけは凄いんだけどなぁ」
「まぁ、そこが杏奈のいい所じゃない」
「そうだけどさぁ。花菜はよくそんなに落ち着いてられるよね」
「そう?」
「杏奈にしょっちゅう振り回されて私はクタクタなのに。花菜は疲れるどころか楽しんじゃってるじゃん」
「まぁ、実際楽しいし。私一人だとこんな体験出来なかっただろうなって思ったら何か新鮮で、むしろ楽しくなっちゃうのよね」
そう言って笑みまでこぼしちゃうんだもん。ほんと、
「大人だなぁ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます