颯樹の日常
「んだよそれ!漫画みたいじゃんか!」
「そうかな」
杏奈ちゃんが興奮する理由がよく分からなかった。
「いやぁイケメンなのに中身までイケメンとは。いや、中身がイケメンだから顔もイケメンになるのか?性格が顔に出るってよく言うもんな。うんうんきっとそうだ」
ただただ彼女の熱意に圧倒されていた。
「あ、あの..」
言葉に詰まり、どう返事をすればいいのか迷っていた。
「あぁ、ごめん勝手に一人で盛り上がってた。それで、その碧くんとは最終的にどうなりたいの?」
「どう...」
そこまでは考えたことなかった。
今はまだ思いを伝える勇気すらない。
「どうにかなりたいから私に声掛けたんでしょ?」
「それは、」
確かにそうだ。
後悔したくないから、告白は出来なくてもどうにか行動に起こせないものかと思って、杏奈ちゃんに声をかけたんだ。
「私の力じゃどうにか出来ないけど、、姉さんの力を使えばどうにかできるかもよ」
それはだめ。
僕はすぐに首を振った。
「ほ、ほかの人には言わないで欲しいんだ」
男を好きだなんて知られたら...
「分かった。じゃあ川島君の名前は出さずに聞いてみる」
「本当?ありがとう」
それなら他の人にバレる心配は無さそうだ。
「その代わり、、その眼鏡は外すこと」
「え、」
眼鏡を...?
僕は驚いて杏奈ちゃんを見つめた。
「1週間待ってあげる。心の準備もいるだろうし。その間にコンタクトも買って」
「でも、俺の目は、」
眼鏡を外すなんて。
あの時以来ずっと眼鏡をかけてきた。
高校生になって、人前で眼鏡を取ったことはない。
"女みたいで気持ち悪い"
あの時みたいに嫌な思いはもうしたくない。
それに…碧にも迷惑かけたくない。
「綺麗だから!」
「っ、」
驚きと戸惑いが一瞬にして顔に広がる。
そんなことを言われるなんて思ってもみなかった。
「非モテの男どもが嫉妬して絡んできただけだから。絡まれたら私に言ってよ。直ぐに退治してあげるからさ」
どうして、会って間もない俺のためにそこまでしてくれるんだろう。
「碧くんだってそう言ってくれたんでしょ?」
「それは、」
碧の言葉を思い出しながら、少し俯く。
僕に気を使って言ってくれただけで、本心ではないかもしれない。
あの時は純粋に嬉しかったけど、今思えば多分、きっとそうなんだと思う。
「碧くんが嘘つくと思ってるんだ」
「そんなわけ、」
慌てて顔を上げる。
「じゃあ、外してきてよ。川島君の気持ちも分かるけどさぁ、これを機にトラウマ克服してもいいと思うよ?」
克服…。
僕は克服できるんだろうか。
「…そうだよね。うん。分かった」
深く息を吸い込み、決意を固める。
トラウマを乗り越えるために、今こそ一歩踏み出す時だ。
高校生の日常 @hayama_25
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