花菜の日常 ー過去ー
私はレズだ。
そのことを誰かに話したことはない。
隠していた訳じゃない。
ただ単に聞かれなかったからだ。わざわざ自分から言う必要も無いと思ってた。
小学生の時に初めて好きな人ができた。
同じクラスの咲良ちゃん。
その頃はまだ知らなかった。
私は他の人とは違うということに。
咲良ちゃんが同じクラスの佐藤くんを好きになって始まったみんなの恋バナを聞いて分かった。
みんな当たり前に異性を好きになる。
道端でもテレビの中でもみんな当たり前に異性に恋をする。
初めて付き合ったのは私が中学二年生の時。
隣のクラスの女の子から告白された。
正直、なんで私なのか分からなかった。
特に話したことなかったから、どうやって断ろう。それしか考えていなかった。
だけど、
「ごめんね、女に告白されても困るよね。」
"女に"
という言葉が引っかかった。
腹が立った。女子が女子に告白することの何がダメなのか。
私がいくら女子だからじゃないと否定したとして、この告白を断ってしまうことで、彼女は一生自分の気持ちに蓋をして生きていくことになるんじゃないか。そう思った。
だから付き合うことにした。
私も、付き合ってみたら好きになれるんじゃないかと思ったから。
結局最後まで好きになることは出来なかったけど、幸せだった。不思議なぐらいに。
一年付き合ったあと高校が離れ、お互いなかなか会えず、そのままお別れした。
沙耶とは半年前から付き合い始めた。
同じお店で働いていて、シフトがよく被り、自然と仲良くなった。
告白したのは私からで付き合えた時は嬉しかった。
でも、沙耶は誰かと付き合うのは初めてで、自分が女子を好きなのも今初めて分かった。
そう言った。
友達の好きと恋愛の好きの境界線がまだ曖昧なんじゃないか。と思った。
それでもいい。沙耶が気づいてしまうまで私も気付かないふりをしよう。
だけど、最後まで気付かないふりは出来なかった。
沙耶を騙してるみたいで、申し訳なくなって、苦しくて幸せを自分から手放そうとした。
「今までずっと黙っててごめんなさい。」
嫌われても仕方ない。そう思っていたのに、
「……手出して」
「…手?」
「いいから」
恐る恐る両手を差し出すと、
「手を繋ぐと分かる。ちゃんと恋人として花菜のことが好きなんだって。」
そう言って優しく握りしめてくれた。
それからよく言葉にして伝えてくれるようになった。
「今すっごいドキドキしてる」
それがすごく可愛かった。
幸せだった。
だけどそれも長くは続かなかった。
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