09_私が持っているパンツで一番多いのは何色でしょうか

 僕はひんやりマットに寝転がったまま、響の荷ほどきを見守ることにした。


右 : 遠

「ねえ。今日の夕食、どうするのー? なんにも無いよー」


 僕は「ウーパーでいいんじゃない」と適当に返した。


右 : 遠

「ん~? ウーパーするの? じゃあ、食器類を出すのは後回しでいっか。……となると出しておきたいのはパンツか!」


右 : 遠 : からかう気分、ほんのちょっと

「お兄ちゃん、パンツ出していい?」


右 : 遠 : おら、見にこいよ、と挑発気分

「紛失していないか、一枚一枚並べて確認していくから、見ないでねー」


右 : 遠 : 顔真っ赤なお兄ちゃんを想像して、ウキウキ気分で歌う

「ふーん♪ ふふ……♪ 白、白、ピンク~♪ 黒ッ! 黒ッ! 黒ッ! 縞はないのよ、白、白。水色、オレンジ、パープル、グリーン、イエロー! 黒ッ! 黒ッ! 黒ッ! 黒なら汚れても目だないし、パンチラしても気づかれにくい~♪」


 響は振り返り、勢いよく僕の眼前に迫ってくる。


 効果音 : ドタドタ(床の上を数歩、走り、正座する音)


 僕は寝転がったまま響を見上げる。


左前 : 近 : クイズ番組の司会の気分

「それではクイズです。デデンッ♪ 私が持っているパンツで一番多いのは何色でしょうか。なお、この問題、回答を拒否することはできません」


左右に体を揺らす : 近

「チッ……。チッ……。チッ……。チッ……チッ……。チッ……。チッ……」


左前 : 近 : 急かしつつ、からかう

「さあ、お兄ちゃん、お答えは? ほら! ……ほら! 答えは?! ヒントはお兄ちゃんの好きな色! 正直に答えて! ちょっとませた妹が穿いていたら嬉しいパンツの色を正直に答えて! このままだと制限時間がなくなりますよ! カウントダウン、開始!」


左前 : 近→耳元 : 急にゆっくり

「じゅ~う、きゅ~う、は~ち、な~な、ろ~く、ご~お……」


左前 : 耳元 : ゆっくり、色仕掛け

「よーん……。ふふっ……。耳元でカウントダウンされると別のこと想像しちゃう? 早く、最後まで言ってほしい? 我慢できないの? それじゃあ……」


左前 : 耳元 : ゆっくり、色仕掛けからの、ドッキリ大成功、大声でからかう

「さーん……。にーぃちゃん絶対、変な妄想! しちゃってる!」


左前 : 近 : ふざける

「あははっ。ゼロまでのカウントダウンは製品版に収録していますので、ご購入ください! ってやつ~。なんちゃって。あははははっ!」


 効果音 : ピンポーン(玄関の呼び鈴が鳴る)


左前 : 近 : ちょっとだけ驚く

「あははははっ! チャイム……あははっ、鳴った。この家、こんな音なんだ。いいよ、私が出るから、座ってて」


左前→前 : 近→遠 : 余所行きの声

「はーい。今、出まーす」


 効果音 : とてとて(響が離れていく足音)


前 : 遠 : 余所行きの声

「はい。空音は私です。すみません。見てのとおり引っ越したばかりなので、表札はまだないんです。でも、空音で間違いありません。はい。……え? 組み立てまでしてくれるんですか? お願いします!」


 効果音 : とてとて(響が近づいてくる足音)


前 : 遠→近 : 他人がいるので、余所行き声のまま

「お兄ちゃん。パソコン用の机が来たよ。机も椅子も、組み立てまで料金に含まれてるって。どこにする?」


 僕は北の壁を指さす。


前 : 近

「うん。やっぱそこだよね」


前 : 近→遠 : 余所行き声

「すみませーん。ここにお願いします」


 効果音 : ガヤガヤ、ドスドス(家具店の配送担当者が、机や椅子など大きな荷物を屋内に運び込む)

 響は業者さんを案内する。


前 : 遠→近 : ふざける

「それじゃ、組み立てが終わった時間に~……。ジャンプ! とうっ!」


 僕は業者さんの作業を寝転がったまま見つめる。

 響は愛想よく業者さんにあれこれ対応した。

 やがて机と椅子が組み立て終わり、業者さんは去っていった。

 僕は響の指示に従い、パソコン本体やモニターやスピーカー等を設置した。

 気づいたら夜だった。

 作業を終えた僕は、部屋にクッションがないので、なんとなくひんやりマットに座る。

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