08_好きなのは、本当だよ……

前 : 近(抱きつける距離) : 小声

「もー。調子狂っちゃう。たまにお兄ちゃん、凄い反撃してくるんだもんなぁ……」


前 : 近(抱きつける距離) : 焦りがちょっと残ってる

「で、では、正直者のお兄ちゃんには、アイドルライブ金の箔押しサイン入りカードと、銀の箔押しサイン入りカードをあげましょう」


 僕は驚き「それお前が持っていたのか!」と声を荒らげる。


前 : 近(抱きつける距離) : 申し訳ないけど、お兄ちゃんなら許してくれるよね

「ごめんて。借りパクしてた。ワカメの炒め物というか……。お兄ちゃんが私以外の女のカードを持っているのが嫌だったっていうか……。引っ越し前に掃除してたら出てきて……」


 僕は「ワカメの炒め物」の意味が分からなくて少し考え込んでいたが、「若気の至り」の間違いだろうと気づき、指摘する。


前 : 近(抱きつける距離) : 驚きついでに、ノリで借りパクを誤魔化す

「あ! ワカメの炒め物じゃなくて、若気の至りって言うんだ! 凄い! お兄ちゃん! 物知り! 賢い! いよっ! お兄ちゃん! さすが! 格好いい! 好き! 好き好き!」


 僕はあからさまなおだてなんかに騙されない。


前 : 近(抱きつける距離) : 作戦失敗。ちょっと悔しい

「あ。おだてても、ごまかされてくれないか……」


前 : 近(抱きつける距離) : あざとく媚びをうる。小さい声だけど、聞かせるつもり

「でも、好きなのは、本当だよ……」


 僕は、すん……と冷める。


前 : 近(抱きつける距離) : 予想外の反応に慌てる

「ねー。なんで、そんな顔ー。ひかないでよー。『ぼ、僕も好きだよ』って慌ててよ!」


 響は這い這いで僕から離れていく。


前 : 近→遠 : 頭の中を荷ほどきに切り替えつつあるから、真面目な声

「もー。じゃあ、引っ越したから、これから何かいっぱい書類書くでしょ? 私がサインするから。サイン、コサイン、タングステン。ほら、まだインターネットくらいしか契約してないよね? 転居届とか、あとは、えっと……。とにかく、いっぱい書くでしょ。婚姻届とか」


前 : 遠 : 驚愕。わざとらしさがバレても構わない悪ノリ

「って、婚姻届ェ?! お兄ちゃん、何を言わせてんの?!」


前 : 遠 : エッチな妄想をしている風の、くねくね声

「そ、そういうの、まだ早いよぉ……」


前 : 遠 : さすがにちょっと照れてきたから、おふざけで感情リセット

「か~ら~の?」


 僕は虚無の心で響を見つめる。


前 : 遠 : 我に返る

「あ、はい。……スルーされるとキッツ……。キツキツだよぉ……。真面目に荷ほどきします」

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