Wish the witch
麝香連理
第1話 兆候
入学から一ヶ月。ぼちぼち高校生活にもなれてきて、この道にも見慣れてきた頃。私は登校中に言い様の無い違和感を自分の身体に感じた。
「……?身体が軽い?」
手や足を眺めてみても変わりはない。
気のせ……
ドオォーーン!!!
「きゃ!?なに!?」
私の目の前に何かが落ちてきて、煙が上がる。
しばらくして煙が消えると、白衣のような服を着た女性が現れた。
「やぁやぁ、初めまして。お嬢さん。」
「えー…と?どちら様?」
恭しくお辞儀をしてきた不審者がニコニコしたまま声を出す。
「初めまして、私はノイ。魔法少女や防人を管理しているって言えば伝わるかな?」
怪人という敵や悪の組織なる集団に対抗するための力を持つのが魔法少女と防人だ。女性が魔法少女で防人が男性。それ以外にも災害や人災の時も活躍していて、アイドルを売りにしている人達もいる。
「えぇ!?ほ、本当に!?」
「あぁ…そうだ、これを上げるよ。」
「……これって!」
受け取ったそれは名刺だった。
「一応本物さ。」
「で、でもどうしてそんな人が?」
「君、身体に違和感が無いかい?」
「えっ?」
なんでこの人が知ってるの?
「それはね?魔法少女へと至る兆候なんだ。私が何で知ってるかって言うと、その兆候を私は察知できるんだ。二十歳を越えても能力は使用出来るからね。」
「………うわぁ。」
魔法少女は二十歳を越えると力ががくりと下がってしまうと聞いてたけど、今のを見た感じ、まだ戦えそうだけどなぁ。
「急で驚いただろう?今日は学校を休んで、親御さんと一緒について来て欲しいんだけど……どうかな?」
「は、はぁ………」
その後、家に帰ってお母さんに事情を伝えてそのまま二人で、ノイさんの車に乗り込んだ。学校にはノイさんが連絡してくれたみたいで、さっきの話が本当だったんだと実感する。
「ねぇ…玲。あなたは魔法少女になりたい?命をかけてまで戦うの?」
きらびやかに聞こえるけど、実態は過酷。そんな密着取材が昔テレビで放映されていた。お母さんは私に覚悟があるのか知りたいんだろう。
「……やる。」
「…………分かった、応援するわ。」
どんな結果でも私は頑張る!
難しい話は大人に任せて、私は魔法少女の訓練場に来ていた。
「はぁーい!その調子よぉ!」
チラリと見てみると、赤紫の髪にピンクと白のミニスカートを纏う魔法少女が火の玉を飛ばして、二人の魔法少女に投げつけている。
「アクアウォール!」
青と白の袖にフリルがついた服とプリーツスカートを着た、水色の髪色の魔法少女は水の壁を出して無効化している。
「もうちょっと手加減をぉ!センパァーイ!」
オレンジと黒と赤のチャイナ服を着た、茶色の髪色の魔法少女は情けない声を出しながら、速い動きで避け続けてる。
「すご……」
私は無意識に声が漏れる。
「ん?……はぁーい、ストップストォップ!休憩にしまぁす。」
「フゥ…。」
「んあぁー!疲れたぁ!」
「そこの君!だぁれ?」
「えっ!?」
ど、どうしよ!無断で見てたの怒られちゃうかな?
「怒らないから、おいで!」
火の玉を出していた魔法少女が優しい声音で手招きする。
「え、えっと…こんにちは?」
「こんにちは。あなたは……新しい魔法少女?」
「多分?」
魔法少女に変身するためのネックレスはもらってないけど、兆候はあるって言ってたし、半分は魔法少女ってことで良いかな?
「そっか、初めまして。私は魔法少女クズネ。」
そう言って手を差し出される。
「あ、私は……レイです。よろしくお願いします。」
「うん。あなた今何歳?」
「今年で十六歳です。」
「へぇ、じゃああの二人と同い年だね。呼ぼうか。」
そう言って、休んでいたさっきの二人を呼ぶ。
「初めまして、私は魔法少女ツミキ。よろしく。」
水の壁を出していた魔法少女が表情を変えずに挨拶する。
「初めまして!僕は魔法少女トミ。仲良くしてね!」
速い動きで避け続けていた魔法少女が私の手をブンブン振りながら握手する。
「私は今日魔法少女になった(?)レイです。今お母さんがノイさんと話をしていて、その間にここにお邪魔しました。」
「なるほど、だからネックレス持ってなかったんだね。東京住み?」
クズネさんがニコニコしながら尋ねてきた。
「はい、そうです。」
「なら、私もこの二人ともよく顔合わせるだろうね。聞きたいことがあったら答えるよ。」
「良いんですか!?」
「もちろん。答えられることなら…ね。」
「えっと…私魔法少女が好きで、ネットにある動画とかよく見るんですけど、あぁ!皆さんが有名じゃないって訳じゃないんですよ!?ただ私すぐに人の名前を忘れちゃって!あぁ!すみません、脱線しちゃいました!すぐにこうなっちゃって!癖なんです!それで話の続きですけど、去年から魔法少女になった人たちは能力を使うときに名前を叫んでるんですけど、今までは無かったですよね?どうしてでしょうか?」
「お、おぉー……」
「急に早口になったわね。」
う!?
「えっと、実は去年から変身するためのネックレスが改良されて、技名を叫ぶと効果が上がるらしいんだ。私やそれより前の魔法少女達は慣れなくて使ってないんだけどね。」
「な、なるほど!」
まさか、そんな事になってたんだぁ。でも技名言う方がかっこいいよね。
「他には?何かある?」
「じゃ、じゃあ!…………
そうして、楽しい時間はすぐに過ぎていった。
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