第12話 やる気を出させた
「そうそう、それで~」
「えぇ!?」
「そんな………!」
「はえぇ~。」
会話がドンドン弾んでいく度に、私の言葉が減っていく。やっぱついていけないや。
「そういえば、ユノは今どれくらい動けるの?」
ナギサさんの鋭い質問がユノさんを突き抜ける。
「ギクッ……」
「でも、私の全力は受け止めてたよ?」
すかさずクズネさんがフォローする。
「へぇ?」
だけどそれは悪手だった。
ナギサさんは目をギラリと光らせ、腕を組んで立ち上がる。
「「「あへ………」」」
突然感じた殺気に三人で呆ける。
「三人ともお腹も満たしたし、少し身体を動かさない?良い提案でしょう?」
「「「……………」」」
「ねぇ?」
「「「はい!」」」
圧で結構怖かったけど、よく考えたらあのナギサさんと戦える。こんな経験ほとんどの人は体験できないことだ。そう思うとワクワクしてきた。
「ナギサさん、どんな風にします?」
「もちろん、私vs三人でしょ?」
「え?でもそれじゃあ流石に………」
「あらユノ。そんなこと言われちゃったら私も本気出すしかないわね?」
「あ!いえ……はい………」
「クズネもレイも、全力で来なさい。」
「「はい!」」
ユノさんが真ん中前。私とクズネさんがユノさんの左右を固めている。
「「「彼方に願い(祈り)を!」」」
三人でネックレスに触れて、光が全身を覆う。
「良いわね。じゃ、私も。彼方に祈りを。」
ナギサさんもネックレスに触れると、ネックレスから発せられる光が手元に集中し、日本刀となる。ナギサさんは堂々とした態度で納刀されている日本刀をスラリと抜き放ち、私達を見据える。
「来なさい。」
緊張感から額から流れる汗が地面に落ちる。
「火の玉ストレート!」
「スネークファイア!」
私とクズネさんの同時攻撃。火の玉ストレートを避けたとしても、スネークファイアで側面から追撃をするコンボ技だ。
「弱いわ。」
ナギサさんは一言、その後は目にも止まらぬ速業で私の蛇ごと火の玉ストレートを切り伏せた。
「「っ!」」
「次はこっちからよ!」
「セイントバリア!」
カキン!と、音を立ててナギサさんの日本刀とユノさんの障壁がぶつかる。が、ナギサさんは止まらず何度も何度も切り続ける。
「う…ぐぐぐ…………」
「スネークバインド!」
「おっと、あっぶなーい。」
ユノさんがまずそうだったから、私の援護でナギサさんを離すことは出来た。あわよくば縛りたかったけど、贅沢は言えない。
「こっちのが危ないですよ?」
ナギサさんが後ろに避けたタイミングで後ろからクズネさんが攻撃する。
「わーお。」
「シャイニングバーン!!」
クズネさん渾身の殴りがナギサさんに直撃…………したかに見えた。
「鏡桜。」
「っ!?」
そう見えた拳は空を切り、ナギサさんは煙のように消えてしまった。
「はい、一人脱落。」
その瞬間上から綺麗に着地して、クズネさんの懐に入り込む。
「あう………」
日本刀の柄で鳩尾を突かれてクズネさんが倒れる。
「そんな………」
「レイ、動揺しないで。攻撃はあなたに任せるわ!」
「う……はい!」
確かに、これが本番だったらヤバい!気を取り直さないと。ナギサさんはハッキリ言って強い……
「ソニックスネーク!」
連続して蛇を打ち出す。
「効かないよぉ~。絢爛突!」
ナギサさんの高速の突き技が、すんでのところでユノさんの障壁に阻まれた。
「ひぃっ!」
「怯まないで!追撃!」
「は、はい!スネークボトム!」
上から下へと口を大きく開けた蛇での攻撃!
「おぉ!」
「今!スネークバインド!」
上の逃げ場を逃がした上で縛る!
「っ!凛独楽!」
ナギサさんは左手で全身を回すと、スネークバインドを躱しながら横に回避された。
「あぁ!」
「問題ないわ!せぇいや!」
さっきまで展開していた障壁を気合いの入った声でぶん投げるユノさん。
「おっと、あなたの得意技、それを警戒してないとでも?」
「え!?」
「断太刀!」
さっきの回転から即座に身体がピタリと止まり、ゆっくりにも見える構えでユノさんの障壁は真っ二つに断ち切られた。
「そ……んな……」
ユノさんが戦意喪失か。
「レイ、あなたは?」
「…………降参です。」
「ええ、良い判断ね。」
鋭い顔から一転、柔らかい微笑みでナギサさんは変身を解除した。
「っはあぁぁぁぁ!疲れたぁ………」
すごい……どっときた。クズネさんのひたすら避ける訓練よりも遥かに短い時間だったのに、何倍も疲れた…………!
「さ、もう一度食堂で食べましょう。」
ナギサさんがクズネさんを抱えて提案してきた。
「「え?」」
私とユノさんは間抜けな声が出た。
「疲れた時は食べるのよ。そうすれば強くなれるわよ。」
そう言って、スタスタと歩いていってしまった。
ナギサさんって体育会系なのか………
Wish the witch 麝香連理 @49894989
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