第11話 新たな出会い
復帰はしたものの、ブランクがあるから訓練からの開始。流石にぶっつけ本番は無理です。
「スネークファイア!」
訓練場の的四つに向かって、四匹飛ばす。
「んー半分は外れたか……」
やっぱり的石さんみたいに全部当たったりはしないかぁ。
「次!」
右手を銃の形にして的を狙う……狙…ね……
手がブレる!!!
焦りからか、目が回って額から流れる汗の感覚が顕著に感じられる。その状態でどれだけ時間が経っただろうか。
「んあ!ダメだぁー!
ジッとしてるとダメだ。今は身体を動かそう。」
ランニングとかかなぁ……
「おや?そこにいるのはレイちゃんじゃないかぁ。」
「あ、クズネさん!」
手を振って笑顔でこちらに向かってきた。
「久し振りだね。大丈夫?」
「はい!私は大丈夫です。えっと、クズネさんは…?」
「うん、大丈夫だよ。」
「そうなんですね………」
……やっぱりクズネさんはスゴいなぁ。それにあの話もノイさんから聞いた。尊敬しか出来ない。
「今は訓練中?」
「はい!でも集中力が足りないみたいで……自分が恥ずかしいです………」
「そっか、それで身体を動かしたいって思ったの?」
「ありゃ?聞こえてましたか?」
「そりゃもうバッチリ!」
クズネさんが自分の耳をトントンと触った。
「アハハ……」
「だから、先輩として手伝ってあげるよ。」
「…………アハハ………」
「ほぉーら!行っくよぉ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!」
ドオォォォォン!!!!!
「次々ィ!」
「うぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
チュドォォォォォォン!!!!!
「ユノォ!ごめんねー!こんなことさせちゃって!」
「本当よ!近畿からわざわざ来たってのに、何やらせてんのよ!」
クズネさんと会話したのは魔法少女ユノ。
金髪で袖と肩にフリルが付いた黒のドレススカートを着ている。能力は防壁と呼ばれ、訓練場でクズネさんが大技をバンバン使えるのはこのユノさんの防壁のお陰だ。
「さぁ!レイちゃんユノも気合い入れてね!」
「「ひえぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」
そんな訓練が一時間続き─────
「もぉ!ムリ…………」
「ありゃ、倒れちゃった。」
「ハァー、私も疲れた!クズネ、後輩ちゃん運んで。とりあえず食堂行きましょ。」
「はぁい、よっせと。」
私はクズネさんにおぶられて、食堂に入った。
「クズネ、あんたが注文しときなさいよ?私も後輩ちゃんも疲れてんだから。」
「りょーかい!何が良いー?」
「私はチャーハン。後輩ちゃんこれ飲んで。」
ユノさんから紙コップに入った水をもらって流し込む。
「うはぁ!生き返るぅ!
んー私はうどんで。」
「任せて、行ってくるよぉ。」
「じゃ、改めて。私は主に近畿地方で活動してる魔法少女ユノです。と言っても、もうすぐ二十歳だから防人だけどね。」
「そうなんですね!私は魔法少女レイです。よろしくお願いします!」
「うん、よろしくね。にしても、クズネっていつもあんなのしてるの?」
「あんな………」
思い浮かべてみる。
「…の以外してる記憶がありませんでした。」
「ホントに?アハハ!」
「笑い事じゃありませんよ!避けるの大変なんですから!」
「ハハ!ハァー……でも、それが役に立ったこともあったんじゃない?」
「……まぁそうですね。」
そこからは愚痴紛いの世間話をお互い話し合った。
「あ、ユノ。ここにいたんだ。」
「ん?」
「っ!ナギサさん!お疲れ様です!」
ユノさんがスッと立ち上がる。
「え、ナギサって……魔法少女ナギサ!?」
私も驚きで立ち上がる。
「ま、まーまー。座りなって。ユノも新人ちゃんも大袈裟だなぁ。まだ私は有名なんだね。
でも、今は防人だからね。」
私でも知ってる。日本で二番目の魔法少女であり、二年前に引退して防人になった人。当時はナギサさんともう一人の魔法少女カザリしかいなかったせいで、犯罪組織やその他の災害には全て二人で力を合わせていた。
当時は怪人がまだいなかったこともあり、メディアの露出も多かったから、今の時代で知らない人なんて、生まれたばかりの赤ちゃんぐらいだと思う。
「今日は何のようで来たんですか?」
「ユノが来るって聞いてね。そろそろ防人になるんだし、久し振りに顔を拝んでおこうかとね。」
「えへへ、その時はよろしくお願いします。」
「ホント、立派になったね。三年前にナメクジで気絶したとは思えないよ。」
「え、ちょ!?言わないでくださいよぉ!」
ナギサさんはクックッと笑い、ユノさんは焦るように私に弁明をしてきた。
仲が良いな。
「チャーハン持ってきたよ~。
あれ?ナギサさんじゃないですか!」
「お、クズネちゃん久し振り。おぉー見てたらお腹空いてきたな。」
「はい、ナギサさんもご一緒にどうですか?」
「おや、ではさせてもらおうかな。」
「あの!」
私はここで意を決して声を上げた。
「なんだい?」
「私は魔法少女レイです!昔の話、聞かせてください!気になります!」
「お、良いねぇ~。」
「確かに。」
クズネさんとユノさんにも賛同してもらった。
「………ふ、もちろん。」
ナギサさんはとても楽しそうに笑った。
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