第3話 お勉強です

「今日は能力の訓練をしましょー!良いですか?レイちゃん。」

 クズネさんがニコニコしながら立っていた。

「は、はい!よろしくお願いします!」

 今日は私と同じ火の力を操るクズネさんに、力の引き出し方を教えて貰うことになった。

「まずは!」

「まずは……?」

「私の火を避ける訓練です!」

「……はえ?」

「身体で感じるのです!……てや!」

 クズネさんはそう言うと、火の玉をぶん投げて来た。

「えぇ!ちょっ、待ってぇ!」

 上!…下!……脇腹!

「いいね!いいね!その調子!」

「ひえぇぇ!!」

「もっと激しく行くよ!」

 すると、さらに速く大きい火の玉を投げてきた。

「むりぃぃぃ!!きゃっ!?」

「あら。だいじょーぶー?」

 攻撃を止め、走り寄ってきた。

「いった……くない?ちょっと熱いけど………」

「いやー熱くなっちゃったよ。」

 ごめんごめんと言って、片手で頭を下げるクズネさん。

「あ、えっと……」

「どうしたの?」

「全然怪我とかしてないんですけど……どうなってるんですか?」

 さっきの熱さも嘘のように消えてしまった。

「え?」

「え?」

 その時、突然クズネさんと辺り一帯が凍った。

「あびゃ!?」

 私を除いて。

 

 コツ…コツ…と誰かが近付いて来る。

 それは紫色の髪に黄緑と黒と黄色のフリルスカートを着た魔法少女だった。

「どうも、初めまして。私は魔法少女サエカ、今見た通り氷の力を操るわ。」

 顔の表情をあまり変えず、僅かな微笑で笑う。

「こ、これはご丁寧に!初めまして、魔法少女レイです。火の力を操ります。

 それで、これは一体?」

「あぁ、これはバカの頭を冷やしてるのよ。」

「そうなんです…か?」

「本当は実戦の前にちょっとした座学があったはずなんだけど、ノイちゃんが忘れちゃってね。それを聞いていたのに座学をさせずに訓練させたからよ。このバカは。」

「はぁ……?」

「さぁ、レイちゃん。お勉強をしましょう。」

「え………」

 今日って……平日だったかな?











「それでは、簡単な魔法少女と怪人についてです。すぐに終わりますから、そんな嫌そうな顔をしないで下さい。」

「あ、はい。」

 すぐ終わるのは嬉しいけど、な…なんで更衣室?

「まずは魔法少女、これについてレイちゃんはどこまで知ってる?」

 あ、これは無視なんだ………

「えっと、魔法少女は後天的に発現して、能力は完全ランダム。二十歳になると力が激減するけど、自然能力ではなく、武器能力を持つ人は力の激減が最小限のため、防人として魔法少女の補助を担当しています。」

「うん、他にも有名じゃないけど、男性の防人もいますよ?」

「え?そうなんですか?」

「えぇ、ほとんど顔は合わせたことは無いですけどね。男性の場合は武器能力を持つ人しかいないため、全て防人の役職になっています。

 それと…あぁ、さっきのバカとの訓練でダメージが少なかったでしょ?」

「はい。」

「それは、魔法少女の服に防衛機能があるからよ。一定のダメージを受けると服が破損して元の姿に戻るわ。」

「そ、それって……サービスシーンがあるってことですか!?」

 あ、ダメな奴だ、これ。サエカさんの目がどんどん冷たくなっていってる。

「……すみません。」

「いえ、あなたの心の奥を垣間見た気がしただけですよ。」

 あ、ちょっと恥ずかしい。


「じゃ、じゃあ、それより前に敵を倒すか、逃げた方が良いんですか?」

「その通り、飲みこみが速くて助かるわ。

 あとね?魔法少女には覚醒と呼ばれる状態があるのよ。」

 ホッ…サエカさんの顔が元に戻った………

「覚醒って強くなるんですか?」

「えぇ、今のところ確認されてるのは六人らしいわ。アメリカに一人、日本に二人、イギリスに一人、中国に一人、ブラジルに一人ね。」

「へぇ~、そういう情報って公開されてないですよね?」

「えぇ、そういうのってデリケートだから。ネット上でも基本的に戦闘の動画はないでしょ?まぁ、個人が撮影したものは相当ヤバイものでも無い限り、放置してるけどね。キリないし。」

「そうですね!そのお陰で助かる命もありますからね!」

「そうね?」

 あっぶなー!私がいつも見てる動画、海賊版かと思っちゃった~。セーフ!セーーフ!!


「次に怪人です。怪人とは元々人で、感情の暴走により怪人に変貌してしまいます。それと、怪人はベースが黒いスーツのようなものに異形の形があるのですが、その人の元々愛着のあるものや、思い出のあるものが怪人になっても残っています。

 例えば、黒いジャンパーを着ている怪人は怪人黒ジャンパーと呼称しています。安直ではありますが分かりやすいのが大事ですからね。」

「へぇー。」

「そして、今では怪人の無力化に成功していますが、三年前、つまり怪人が出現したばかりの頃はぶちのめして人に戻していました。」

「はい!質問です!どうして今はぶちのめしちゃダメなんですか?」

「良い質問です。何故なら、ぶちのめすとその怪人が持っていた呼称の由来となるものが怪人の姿と共に塵となって消えてしまうからです。

 結構元怪人の人達はこれがショックだったようで、その感情により怪人に再発してしまったケースもあったそうです。」

 うーん、確かに私も愛着のあるものが失くなったら悲しくなるわ。

「それと、ぶちのめすと元怪人の身体がボロボロになってしまい、人権的なあれこれと、保険会社からの密やかなクレームにより、ノイちゃんが無力化に力を注いだ結果出来るようになりました、パチパチー。」

 そう言うと、にこやかに拍手をする。

 ただ、その裏事情が世知辛すぎて私は笑えなかったけど。

「その無力化の方法って?」

「前にあなたが一緒に戦ったサキなんかは長年の勘で調整していますが、基本的にはネックレスの左にボタンがあって、それを押すと力を調整した一撃を放てます。まぁ、相手が弱ってる時限定ですから、無力化するための必殺技と覚えておいてください。」

「はい!…あ、じゃあこっちの右のボタンは?」

「そっちは本人の指紋認証付きの変身解除装置です。意識的に変身の解除は出来ますが、ノイちゃんが片方しかないのも味気無いと仰ってこうなりました。」

「……あの人何者なんですか?なんでもしてますよね?」

「さぁ?変わった良い人なのは確かですね。

 さてと、それでは訓練に戻りましょう。」

「はい!」

 フゥー、でも思ったより堅苦しくなくて、こんな授業ならいつでも良いのになぁー。




 その後、訓練場にサエカさんと二人で戻ったら、放置されたクズネさんを見つけた。急いで私の力で解凍したけど、無事クズネさんは風邪を引きましたとさ。

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