第5話 でぃすいずふれんど!

「それではこれで連絡事項は以上だ。気を付けて帰るんだぞぉー。」

 担任の先生の話が終わり、緊張の糸がほどけたのか、終わったー!や、この後どこ行くー?、部活ダリーなんて声で教室が騒がしくなる。


 そんな中。不肖、入戸玲はボッチを極めていた!

 ……だって、しょうがないじゃん。やることあんだからさぁ……部活してないのに訓練で全身バキバキなんだよぉ……友達と話してる余力なんて無いんだよぉ……いっつも塩対応しちゃうんだよぉ……

 裏では付き合い悪いとか、年上のガラの悪い男と関係を持ってるとか、後ろ暗い過去があるとか。女子って怖いよねぇ。グチグチくっちゃべるくせに、表ではニコニコしてるのがさ。

 最近だって、三人の女子グループと一緒になった時に、一人がやることがあって抜けた瞬間に、その抜けた人の悪口言うんだもんなぁ。

 "アイツ胸無いくせに胸はって強調してんだよね。"

 "ペチャパイのくせにねぇ"

 "あんなんでイキんないでほしいよね"

 "ブスが調子乗らないでって話よね?"

 って、その後抜けた人が戻ってきたら、また笑顔で会話するんだもん。どう反応したら良いのよォ!

 あぁ……アニメみたいに魔法少女全員が同じ学校に通ってるとかだったら友達いたのになぁ。トミちゃんとツミキちゃんは今頃どうしてるかなぁ。ツミキちゃんはまだしも、トミちゃんは誰とでも仲良くなれそうだなぁ。

 残念ながら現実は世知辛く、戦力を全体的に行き渡らせるために、調整してるらしいです。はい。



バスン!

「この音は…弓道部だったかな?」

バスン!

「うお!いい音!」

バスン!

「うおぉ……」

 興味が湧いて少し覗いてみると、ポニーテールの女の子が弓を引いていた。

バスン!

「うわ、全部刺さってる………」

「え?」

「え?………あぁ!ごめんなさい!邪魔するつもりじゃなくて!」

「えぇ、それは知ってるけど……確か…入戸さん、でしたっけ?」

 ポニーテール美人が絞り出すように私の名字を口にだした。その瞬間、私の心臓がはね上がる。

 えっ!?もしかして同じクラス!?こんな美人いたかな!?

「一応、入戸玲と申します。えっと…失礼ですが同じクラスでしたっけ?」

「まぁ、同じクラスではありますね。喋ったのはこれが初めてですが。」

 ポニーテール美人の苦笑い、悪くない………ってそんなことよりも!マジかぁ!!!やっちゃったぁ!

「ご、ごめんなさい!私人のこと覚えるのが苦手で…お名前を聞いても?」

「えっと、はい。的石渡江です。」

 トエさんか……まぁ、美人さんだし、忘れることは無いでしょう!……多分!

「入戸さんはどうしてこちらに?何かご用でも?」  

 あ、怪しまれてるぅ……そりゃそうだよね……

「前から弓道ってかっこいいなって思ってて、それでたまたま通りかかった時に的に当たるキレイな音が聞こえてつい……」

「あ、ありがとうございます。今は自主練習なので見ていても構いませんよ。」

 的石さんがにこりと笑って、道場の中へと誘ってくれる。

 あぁ……心が浄化される…………

「ほ、本当ですか!?では失礼します!」

 やった!新しい魔法少女の技のインスピレーションが出てくるかもだし、合法的に美人を見つめられるとか、ご褒美以外の何物でもないからネ!





ー的石渡江ー


 弓を引き絞り、放つ!

 矢は弧を描き、的に刺さる。

 今日は調子が良い。後、見学者がいるからか、ほどよい緊張感もあって、私の身体にしっくり来る。

「すごぉーい……」

 感嘆の言葉を口にするのは同じクラスの入戸さん。周りのみんなが口々に悪口言ってたから、どんな人かと思ったけど、この子、多分アホだと思うわ。だって初対面の相手の言葉にホイホイ乗って、二人きりになってるのよ!?もし私が男だったら襲われてるかもしれないのに!

「フゥー………」

「的石さん、すごいです!動きもキレイで、ずっと見てられます!」

「……ありがとう。」

 そ、そんなに褒めないでぇ!嬉しさと恥ずかしさで感情がぐちゃぐちゃに!

 ……いいえ、落ち着くのよ。この期待の視線一つに負けるようじゃ、大会で良い結果なんて出せない。これは私に与えられた試練!乗り越えて見せる!



 あの後、何本が外しちゃったけど、入戸さんは感動したと言って、喜んでくれた。

 連絡先も交換したし、今度遊びに誘っちゃおうかな?それとも次の土曜日にでも……!

「……送っちゃえ!」

 メールを送ると、以外にも返信がすぐに返ってきた。

「……あぁ、やっぱり仲良くなったばっかりだからダメだったのかなぁ。感覚的に次はいつぐらいに誘えば良いんだろう?鬱陶しい人なんて、思われたくないからなぁ。」




ー入戸玲ー


 的石さんから連絡!?すぐに返さねば!

 メール画面を開くと、そこには衝撃的な言葉が入っていた。

「遊びに行こう………夢じゃないよな?」

 私は自分の頬をつねる。目一杯。

「ゆ、夢じゃない!?私デートに誘われた!」

 私がガッツポーズを取りながら、ふとカレンダーを見てみると、その日はクズネさんとの訓練が入っていた。

 ……バイバイ、私の初デート。


 私は血涙を流しながら丁寧に断りの文章を送った。



 とある土曜日の訓練中。魔法少女レイのやる気が段違いだと、魔法少女日誌に書き込む魔法少女クズネであった。


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これだけは言っておきたい。レイが話していた女子グループの会話は、そのまんま私が体験した実話です。

あの時は恐怖を感じました………    by作者

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