第7話 終始
仙人が一晩泊まった次の日。朝食をいただいた仙人は帰り支度を始める
「もう、お帰りになるんですね」
「はい、することがありますので」
「そっかぁ、まだ居てほしいな。安心できるもん」
浪江と仙人の話を聞いて帰ってほしくないと不安そうな顔で言う幸恵
「気持ちは分かるけど、わがままは駄目よ。暫くはお家の中だけの生活になるけど、安静にしていましょうね」
「家の中に居れば安心だ。それと、これを渡しておくよ」
幸恵に、蒼色の生地と水色の結び紐で出来たお守りを手渡した
「これってお守り? 昨日と違うの?」
「昨日のは、あの場だけで使うものだから別物だよ。これは、一晩かけ力を込めたお守りだ。長い間、効力がある」
蒼色のお守りをまじまじと見る幸恵
「家に居る間はいいけど、出かけられるようになったら身に着けるといいよ」
「はい! ありがとうございます」
「良かったわね幸恵。しっかり体を治さないとね」
満面の笑みを浮かべる幸恵。娘の頭を撫でながら言う浪江にお守りを、両手で握りしめ頷いていた。
その後、忙しくしている隆司・絵美にお暇する事を話すと家族みんなで見送りに出た。
「本当にありがとうございます。貴方のお陰で娘は助かりました」
「妹と久しぶりに、食事が出来ましたし、夜も一緒に眠れて嬉しかったです。ありがとうございます」
隆司、絵美の順で挨拶とお礼を述べ、その後も次々挨拶をしていった。
「また、何かあったら昨夜渡した番号に連絡下さい。では」
最後に挨拶をしてバイクを発進させた仙人。仙人の姿が見えなくなるまで、見送りをしていた暁月家族であった。
仙人は暁月家を離れた所で、何かの気配を感じてバイクを止め後ろを振り返った。暫く辺りを見回していた
「・・・・・・・・・」
前に向き直り少し考える仙人。考えが纏まるとバイクを発進させた。
ガソリンスタンド【MR】
「成る程。それで、うちに来たって訳か」
戻って来た仙人から、竜の置物を見せて貰い話を聞いていた海道。毛むくじゃらの右手を熊顔の顎に当て、左手で竜の置物の上を持ち下側を見ながら言った。
「うーむ、ここに彫ってある印。薄くなっているが、確かに似てるな。俺の遠いご先祖さんである安倍晴明さんの作った印にな」
竜の置物の裏側に彫られている3文字の印。その1文字に向けひびが入っている
「ってことは、地下の書庫でこれが書かれたもんがないか、調べりゃいいわけだな」
「ああ。ただ記憶だけでは、時代も場所も封印されていた者も分からない。
手掛かりはこの竜の置物だけだからな。俺も一緒に探す」
一緒に探すと言った仙人ににやりと笑い右手を前に突き出した海道
「その必要はねぇよ。探すのは俺の仕事だ。お前はこれからの為に体を休めておきな。いざって時に動けなかったらやべぇだろ」
少し考え込む仙人だが、諦めて軽く息を吐くと
「分かった。宜しく頼む」
「おう。俺には祓う力も何もねぇからな。あるのは、古くさい書物と店位だからな。これぐらい任せとけ」
豪快に笑いながら仙人の背中を叩く海道。その後、幾つかの話をして自宅に帰ったが、ずっと心の奥にある違和感は、拭えないでいた仙人であった。
その頃~???~
「ふふ、フフフ、ふふふふ、フフフフフ」
真っ暗な部屋の中、頭から毛布を被り体育座りしている女性。手には鋏と人形が握られていた
「ああ~ああ~そう遊ぶ そう遊ぶ私のーーーーー
遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶフフ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶふふふ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ遊ぶ・・・」
目をギラつかせ、遊ぶの言葉に合わせ、何度も鋏で人形ごと自身の手を刺していたのでした。
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