第8話 相談



 幸恵に取り憑いていた悪霊が、除霊されて数日がたったある日。

 暁月 絵美が勤める大崎医大病院。病院内にある心療内科の中年看護師が、絵美に話しかけた



「絵美ちゃん、妹さんは治ったて聞いたけど大丈夫なの?」



「はい、後は体力を回復させたりありますが、もう大丈夫です。ご心配ありがとうございました」



 幸恵の件で色々とお世話になり仲良くなった看護師でもあり、頭を下げお礼を言う絵美



「そう、良かったわね……それで、相談があるんだけど良いかしら?」



「はい? 何でしょうか」



「実は私の知り合いに、妹さんと似たような症状の人が居てね。ここの心療内科に診察に来た事もあるの。でも……」



 言い淀む中年看護師。何を言いたいか分かった絵美は



「妹を元に戻して下さった方に、1度連絡を取ってみます。可能な範囲で、症状や状況を教えて頂けますか」



「ええ、ありがとう。ここでは、あれなんで場所を変えましょう」



 ほっとした表情になり場所を変えて絵美に話をしたいと言って2人は場所を変えるのだった。


 

   病院内にあるカフェレストラン



 2人の休憩時間が丁度一緒だったのと、昼を過ぎて居たので、人はまばらだった。 それでも、余り他人に聞かせる話でもないので、隅の席に座り飲み物だけ注文すると



「ここなら大丈夫ですね。立川たちかわさん、お話し頂けますか?」



 立川と呼ばれた看護師は頷くと、話し出した



「まず、おかしな動きをやり出したのは、知り合いの娘さんで、小学校高学年の子ね。今から半月程前、近所に何年も前からある廃屋へ、遊びに行ったそうなの。それで、その日の夜からおかしな行動を取るようになったったて」



「近所の廃屋……っ?! それって、不審者が住み着いてるとか、霊が出ると言われてるあの廃屋ですか?! でも、あそこは誰も入れなかったはずでは?!」



 どの廃屋かピンと来た絵美は、驚いて大きな声を上げる



「あっ ちょ、ちょっと、絵美ちゃん声が、大きい」



「あっ……ごめんなさい」



 慌てて宥める立川に、ハッと気付いて謝りながら座る絵美



「驚くのは仕方ないわ。絵美ちゃんの言う通り、人はおろか鼠でも入れないようになってる筈だから。

 でも、本当みたい。帰って来たとき、余りにも様子がおかしかったみたい。

 それで、聞いたら、一カ所入れる所があって、廃屋の側にいた友達数人と入ったそうなの。その時は、怒られて、素直に謝ったみたいだけど……」



「その日の夜からおかしくなった……どの様に、おかしくなったのですか?」



 話をしている立川も、聞いてる絵美も、段々前のめりになっていた。そこに、頼んでいた、カフェオレとミルクティーが来たので、一旦姿勢を直す。それぞれ1口飲んで、一息入れて



「最初は、同じ所をぐるぐる回るだけで、回ってた事は本人は覚えてないみたいなの。それから、ずっとボーとしたり奇声を発したり暴れたりして、何も食べなくなって痩せ細り見た目も別人見たいになったのよ。私も、ここに診察に来たとき、見たけど、その、私は、ゾッとしてしまって」



 その時の事を、思い出し身震いしたので、1口 コーヒーを飲んで落ち着く立川



「そして、5日前、左手を人形ごと、鋏でズタズタに自分で刺して緊急で運ばれて来たの。手術は上手く行ったみたいなのが、幸いね」



5日前と言われて、驚きで目を広げて固まる絵美。

 その日は仙人が、幸恵のお祓いした翌日だったからである。絵美は落ち着こうと、ミルクティーを1口飲んで、気になる事を聞いた



「その、一緒に行ったお友達は大丈夫なんですか? 何か、おかしな事になってないんですか?」



「……なってないそうよ……そもそも、一緒に行ってないって……」



「……っえ? 何を、行ってないって」



 立川が、視線を逸らし“行ってない”と言われ、訳が分からず一瞬固まる絵美



「一緒に行ったと言われた子達に、心配になり聞いたそうなの。そうしたら、その日は家に居たり、友達の家に遊びに行ったりで、誰1人廃屋に行ってないって……」



 何とも言えない顔になり、段々下に向きながら話す立川。絵美は持っていたティーカップを静かに置いた。そして、勢いよく立ち上がると



「今すぐ連絡してきます。ええ、今すぐに!」



「えっ? あの、聞いて貰った私が、言うのもあれだけど、いきなり大丈夫なの?」



「そんな事言ってられませんよ。直ぐ、電話して……」



 驚いて絵美の顔を見る立川。ナース服を触りながら言う絵美だが



「あっ?! スマホはロッカーに……ちょっと待ってて下さい。直ぐ話して来ます」



「え、絵美ちゃん?!」



 言うや否や、スマホを取りに走り出した


 



 その頃、【MR】では




「中々、見つからないんだな。もしかして違ったとか?」




「そうだな。晴明さんより古いのか、真似て作ったのか。それとも、全く違うのか……まだ全部調べ切れてないが、分家や主本家にも聞いてみないとな」



 地下にある書物庫の中で、話す仙人と海道。

 竜の置物について、文字や形など調べて貰っていたが、数日経っても分からなかった。

 そこへ、仙人のスマホに絵美から連絡が入り、ひと言断って、上に行って電話に出る



「もしもし、お久しぶりです。もしかして妹さんに何かありましたか?」



『お久しぶりです。その節はありがとうございました。妹は、少しずつ良くなって元気にしています。

 好きな食べ物も、食べれるようになって喜んでいます。

 その今回は、違うこと何ですが、聞いて貰えますか』



 幸恵に何かあったかと考えた仙人だが、元気と言われ一瞬顔が綻ぶが、すぐに真剣な声色で話すので、口を引き締め



「大丈夫です。どうぞ」



『ありがとうございます! 実は……』



 先程聞いた立川の話をする絵美。話を聞いて



「なるほど。確かに早くしたほうが良いですね今日は、無理なので明日以降になります」



『あ、ありがとうございます。では、明日の朝、私の勤務している大崎医大病院に……』



 仙人から明日から行けると言われ、若干興奮気味に話しだした絵美に



「ちょっと待って下さい。今回の依頼は絵美さんのお知り合いの方ですよね。でしたら、まずお知り合いの方の、予定を聞いて下さい」



『あっ?! そうでした! ちょちょっと待ってて下さい』



 スマホを繋いだまま、走り出して途中、“暁月さん!正面玄関で走らない! 危ないでしょ! ”や“ご、ご、ごめんなさい~”の声が聞こえて思わず笑ってしまった仙人だが



「(半月前と5日前……タイミングは合っている。偶然か、それとも……)」



 すぐ真顔になり考える仙人であった







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る