勇者の怒り
「
応!――怒号と共に我々、
立て続けの激しい戦闘による興奮と疲労から、俺の愛馬は駆けながらも口から泡を飛ばしていた。鈍い足並みに、それでも弓兵を守るべく愛馬に鞭打っていた。
プファァァァァア!――奇怪な音が響く。それはある種のラッパのようにも聞こえたが、俺達はそうではないことをよく知っていた。
「みろ……なんともない! 我々には効かないぞ! あはははは! 嗚呼、主神様!」
第十騎団の一人が嬉々として叫んだ。確かに我々は聖堂騎士のくれた加護とやらで守られていたが、男のその
「
弓兵の前に躍り出た我々は、騎士の祝福により空中に魔力の
バンッ!――目の前で
俺と周囲の団員はその
カァァァァァァアン、カァァァァアアアン――と聖堂や街の鐘とも違う音色の、天空からの高い鐘の音が鳴り響いた。曇天の切れ間から陽光が漏れ、照らし出されたそこには巨大な――三千尺は離れているだろうに――巨大な、金と瑠璃で交互に彩られた球が見えた。球には
俺の背後では
ただただ静かだった。
「おい」
強引に腕を引かれなければその男の声も聞こえていなかったろう。
「――聞こえているのか?
「あ……ああ」
愛馬の傍には、やたら上背のある鎧姿が居た。その鎧は飾り気のない白銀で、所属を表すものは一切身に着けていなかった。
「そうか。お前の所の団長に話がある。探しておけ」
「だが騎団はもう……」
振り返ると、そこにはのろのろと立ち上がる団員たちが居た。鎧を裂かれ兜を割られている者まで居たが
「――これは一体……」
「いいか…………探しておけよ? 絶対にだ…………」
「バレッタ、負傷者を頼む。ハイトリン、行くぞ。
「わかったわ」
「あいあい」
ハイトリン――その名をよく知っていた。そう、あれは確か団長が――
そんなことを思い出しかけていると、不意にその鎧姿の男は暗い空へと舞い上がり、背の高い輝く髪の女も追って上空へ。見る見るうちに二人の姿は小さくなり、やがて目で追えなくなった。がしかし、ものの四半刻も経たないうちに――
カッ!――と東の空が光に満たされた。金と瑠璃の魔族の姿も光に包まれた。
そしてほぼ同時に激しい圧迫感と轟音!
俺は暴れる愛馬から振り落とされたが、光から目を離せなかった。
光は火の玉へと変わる。
俺を含めた団員たちが、ただただ呆けてその高い雲を見ていると、あの男が戻ってきた。
「それで? 団長は居たのか?」
「あえっ……」
「団長は居たのかと聞いている! これだ! このくだらない像を作った男だ! 型を作って大量に複製を作っただろう!? あ? 聞いているのか!?」
男は像を……そう、ハイトリン様の像を手にしていた。それも団長が精魂込めて作った裸婦像を。あれは素晴らしい出来だった。俺たちは協力してそのハイトリン様の裸婦像を複製した。みんなで――
ぐしゃり――男は裸婦像を握りつぶした。
「こんないかがわしい物を作りやがって! 団長を連れてこい! 今すぐ首を刎ねてやる!」
死と破壊の神よりも恐ろしいものを見た俺と周囲の団員は、震える足で辺りを捜索し、
--
今回は地形が変わってないからセーフ!
ハイトリンはロスタルの横で「ぐえ~」とかふざけてそうです。
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