第6話 非聖女ディジエ
クローサンはオレの面倒事を請け負い、調べてくれた。望み通りに。
オレはとうとう三人の妻たちの秘密を知ってしまったのだ。思えばオレはクローサンが言っていたように、真実を知ることをずっと避けていたのかもしれない。目の前へと突き付けられた現実に嗚咽した。
クローサンは聞いた。離縁するのか?――と。
――バカなことを言うな。平民じゃないんだ。
オレたちは魔王を倒したことで地位と名誉を与えられ、既に貴族と同じ
クローサンは言った。これ以上は見ていられない――と。
山へ帰ると言う彼はしかし、最後に親友からの頼みを聞いてくれとも言ってきた。
◇◆◇◆◇
既に三日前の話になるが、クローサンからの連絡を受け、ディジエには小言を言われながらもオレは再び休みを取り、『ハイドイン』で彼と待ち合わせた。まずディジエについての調査結果だが、情報はそう多くはなかった。だが、その内容はオレの胸をえぐった。
「お前の言ったとおりだったよ。ディジエはお前が討伐に出る度、聖堂に篭っている」
「そうか……」
「目的は、聖堂への奉仕が主だが、聖堂のお偉いさんたちへの
クローサンはあっさりとそう告げた。だが――
「直接見たわけではないのだな」
「ああ。こちらも変装をしていたとはいえ、そう易々と部屋の中にまでは忍び込めないからな。聖堂周りの建物は構造上、天井裏に忍び込むのは難しい。よくできてる」
「そうか、じゃあ――」
「だがな、聖堂ですれ違ったディジエの口元に、縮れた毛が貼り付いていたんだ。気づかれないよう取ってやったが」
「…………」
「早まるなよ。聖堂とコトを起こすのはマズい」
「ああ、心配するな。そのつもりはない」
フゥ――と息を
「――そうか、ディジエを取られたことでオレを嫌っていたはずの聖堂のお偉いさん連中が、どうしてかオレを見るたびにニコニコと満面の笑みを見せてきていた訳だ……」
クローサンはマグの中の葡萄酒に目をやり、溜息を吐く。
「もうひとつある。ディジエは神殿にも顔を出している。神殿には知っての通り
「そうか」
「驚かないんだな」
「いや、驚くさ。ただ、ディジエの付けていた帳簿に、神殿への寄付があったからな」
「寄付か…………なるほどな」
「何か知っているのか?」
「何でもない。すまん、そこまでは調べられなかった」
「いや、たったの七日でよく調べてくれたよ、ありがとう」
「ディジエについてだが、ひとつ頼みを聞いてくれないか。これはお前のためでもある」
「なんだ? 言ってみろ」
「ロスタル、悪い結果になってしまったらいくらでも恨んでくれて構わん。ディジエを襲え。押し倒してお前のモノにしてしまえ」
◇◆◇◆◇
そんなことはできない――クローサンに言った。ただ彼は――ディジエに不義が無ければ
結局、三日間悩んだ末に決意した。バレッタはおそらく朝帰りだし、ハイトリンも夜遅くまで出歩いている。オレは使用人たちが帰った後、ディジエが部屋に戻った時を狙った。
部屋に踏み込むと、ディジエはオレの手渡した討伐報酬を前に帳簿を付けていた。
驚いて立ち上がるディジエ。
「クソ勇者! どういうつもりだ! 勝手に入ってくんな!」
「オレはこの屋敷の主人で君の夫だ。好きにさせて貰う」
大股で近寄ったオレは、ディジエの細い右手首を取る。
彼女は振り解こうとするが左手首も掴まれる。体を捻ったり腰を落としたりして逃げようとするがそれもままならない。
「クソ勇者! 離しやがれ! このろくでなし!」
右腕を背中に回させ、左手首を引き寄せ、オレは強引に口づけをした。
「っ……」
オレは軽い痛みに顔をそむけた。心を許している相手に対しては、祝福も
ディジエは聖女の力は発現させていなかった。下唇に噛みついてきたのだ。
――聖域を使ってくれ。
心の中で何度もそう叫んだ。
――君がまだ清いままなら聖域を使ってくれ。
だが、オレの願いもむなしく、彼女は抱え上げられ、ベッドへと放り出された。
しばしその姿を見やるオレ。
束縛されていないにもかかわらず、ディジエは何の能力も使って来なかった。こちらを睨みつけるばかり。
「そうか……わかったよ……」
オレはクローサンの願いを聞き届けてやることにした。
半ば嗜虐的な劣情と共に、オレはディジエの衣服を引き裂いていった。
最後の一枚まで剥ぐと、彼女は諦めたように身を投げ出した。ただ――
「なんだこれは……」
オレがその異物を引き抜くと、彼女は小さく痙攣する。
オレは疑問に思うも、
それから彼女の上に覆いかぶさり、この乱暴極まりない初夜を迎えたのだが――
「――そうか、君はこんなものまで使ってオレを欺こうとしたのか……」
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