2メートル40センチ
私はコナちゃん。今日もいいお天気ね。
暑くなりそうだわ。お部屋の中はエアコンが効いているけれど、お外は蝉が鳴いていて陽炎が見えるような気がするわ。
「コナちゃん」
あら、さっきお出かけしたママの声だわ。窓の外から聞こえたわ。でも窓の外には赤い帽子を被った髪の長い人がいるだけで、ママではないわ。
「ガンちゃん、変な人が来たわ」
「ここは2階だよ、コナちゃん」
ガンちゃんは日向ぼっこから起き上がる気はないみたい。
「でもいるわよね? ショゴス」
「イル」
コナちゃんはショゴスと並んで窓辺でその赤い帽子を見たの。赤い帽子で隠れてこの人の顔は口の辺りから下しか見えないわ。
「コナちゃん」
ママそっくりな声で呼びかけてくるなんて、なんだか不愉快だわ。
「地球上でギネス記録に認定されている最も背の高い男性はトルコに住んでいるスルタン・コーセンさん、251cm。女性も同じくトルコに住んでるルメイサ・ゲルギさん、215.16cm。梯子も使わずにその窓に届くとしたらニンゲンではないよ、コナちゃん」
コナちゃんはお庭を見たの。この人が白いワンピースを着て、お庭に立っているのが見えたわ。じゃあニンゲンではないのだわ。この人。
「ダレ? ダレ?」
ショゴスが問いかけているのに、赤い帽子の人は微笑むだけでお返事をしないわ。それどころか、いきなり窓を「ばあん」って音がするぐらいの勢いで叩いたの。コナちゃんビックリしちゃったわ。こんなに乱暴なニンゲン、見たことないわ。
「乱暴しちゃいけないのよ」
「ぽぽぽ」
意味不明の声を上げたわ。それでやっとガンちゃんも窓の縁に上って来たの。
「ああ、コナちゃん、これは『
八尺様はまた窓を叩いたの。すごい音がしたわ。UV加工済み防犯二層強化ガラスだけど、ママが帰って来た時に割れていたらビックリすると思うの。それにエアコンの効きも悪くなっちゃうわ。
「ガンちゃん、窓を開けて。直接『帰ってください』ってコナちゃんお願いしてみる」
「いいけど、ダメだったら僕が対処するからね?」
ガンちゃんが鍵を開け、ショゴスが窓を開くと外の熱気と八尺様の手が飛び込んできたの。
「触らないで! 用がないなら帰りなさい!」
コナちゃんは八尺様の手を叩いて毅然とした態度で言ったの。八尺様は笑ったみたいだった。そのままコナちゃんを掴もうとしてきたのよ。
だからコナちゃん、手を引っ掻いてやったわ。ついでに齧って猫キックもしたのよ。
「封じられたいか?」
ガンちゃんがなんだかそんなことを言ったら、八尺様は後ずさったの。でも、手を引かなかったの。だからコナちゃんは腕を切り裂いたの。そしたら肘のあたりからとれてお部屋の床に落ちたの。血は出なかったからやっぱりニンゲンではないのね、って思っていたらショゴスが腕を拾ったの。
「アローハー」
ショゴスが腕を装着して親指と小指を立てて、フリフリしながら言ったから、コナちゃんも片手で「アロハ」のポーズをしようとしたの。ちょっと難しくてできなかったけど。でもちゃんと「アローハー」ってお返事したのよ。
「ショゴス、返してあげなよ」
ガンちゃんが言うから赤い帽子の人を見たら、口元がすっかり富士山みたいな唇になっていたの。悲しかったのかしら?
ショゴスが腕を窓の外へ放り投げると赤い帽子の人は慌てて腕を拾って
「ぽぽぽ」
っていいながら走り去っていったわ。
「もう二度と来ませんって言ってたよ」
あとからガンちゃんに言われたけど、せっかくショゴスと一緒にみんなで楽しく遊ぼうとしていたのに残念だわ。でも窓を割ろうとするような子とはお友達になれないから仕方ないわ。
次に遊びに来てくれる子は一緒に遊べるお行儀のいい子だといいな。
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