次の朝の出来事
コナちゃんは朝早く起きるの。
だってママかパパを起こして、ごはんを貰わなくちゃいけないから。
よいしょ
コナちゃんがベッドから降りるとガンちゃんが「わーお」と鳴きながら寝室に入ってきた。ガンちゃんは2分でパパを起こしてくれたわ。
パパが「カイシャ」にお出かけしたらママが起きてくるまでの間、退屈なの。
「ねえ、ガンちゃん」
「なあに? コナちゃん」
「昨日のおまじない、どうやるの?」
「あれはね、こうだよ」
ガンちゃんが紋様を見せてくれた。コナちゃんもやってみたらできたの。
でも「かつてニンゲンだったもの」がいないと実際には使えないから、また今度来たらコナちゃんが使ってみることになったわ。
「他にも色々あるよ」
「ご本になってたらいいのに」
コナちゃんだって本棚にあるご本には色々なことが書いてあるって知っているのよ。時々本棚から取り出して見たりもするのよ。戻せないけど。
「このお
「ガンちゃんも見たことないの?」
「昔見たことあるよ。ニンゲン用だから呪文とか儀式とかも書いてあったよ」
コナちゃんもご本でお勉強するほうがいいのかしら? でもこのお家に無いご本は読めないものね。不可抗力だわ。
「あ、おはぎちゃんが来たみたい」
ガンちゃんはそういうと窓枠に飛び乗った。
コナちゃんも隣に上ってお外を見たら、黒い柴犬のおはぎちゃんが「ご主人」の朝のお散歩をしていたわ。おはぎちゃんに限らず犬って朝晩、「ご主人」をお外へ連れ出してお散歩させるのよね、マメよね。
「おはよう、ガンちゃんコナちゃん、おはよう。今朝も会えて嬉しいよ」
「おはよう、おはぎちゃん」
「今のところ怪しい動きは誰もしていないみたいだよ」
「了解」
「それじゃあまたね、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
犬のおはぎちゃんが「ご主人」と紐で繋がってコナちゃんのお家の前を通り過ぎていく。
「ねえガンちゃん、『怪しい動き』ってなあに?」
「邪神がこの世に来ようとしてたり、悪いニンゲンが邪神を呼び寄せようとしてたりしていないか、おはぎちゃんたちは毎日見回りしているんだよ」
「邪神をやっつけてくれるの?」
「邪神はやっつけないよ。お願いして元の場所に帰ってもらうだけだよ」
「どうして? 悪い神さまなんでしょう?」
「この世の中にとって都合が悪いだけなんだ。実は邪神には悪気はないことがほとんどなんだよ。この世の中に来ちゃうと秩序が乱れちゃうだけなの。だから『古き神々』って呼ばれることもあるよ」
「フーン。悪いのは邪神を呼び出すニンゲンなのね」
「そう。悪いニンゲンがもっと強い力でもっと悪いことしようとして呼び寄せたりするんだ。おはぎちゃんたち犬はお外でデータを集めてくれるから僕たち猫が本部に連絡しているんだよ」
「だからガンちゃんはお月さまを見てたのね」
「うん。対処が必要な時もあるからね」
「そういえば対処って何をするの?」
「悪いニンゲンが悪いことをしないように他のニンゲンに説得してもらったり、力づくでやめさせたりだよ」
「でもニンゲンは力が強いから止められないんじゃない?」
「犬や兎や鳥とか魚とか、みんなと頑張るけど、僕たちだけではできないこともあるよ。だから良いニンゲンに手伝って貰ったりする」
「手伝ってくれるの?」
ママが悪いニンゲンをやっつけるところを想像できなくてコナちゃんはビックリしちゃったわ。
「うん、時々ね。でも悪いニンゲンは欲が深いから経過観察してると自滅するんだよ」
「ジメツ?」
「うん、悪いニンゲンが邪神を呼び寄せたつもりがその邪神に怒られて、代わりに来た邪神の手下にニンゲンが連れてかれちゃったりとか、しょっちゅうあるよ」
「手下が来ちゃうの?」
もしもお隣のお家にいるニンゲンが邪神の手下を呼び寄せたりしたら、コナちゃんのお家にも手下がくるかもしれないわ。
「うーん、ほとんどの場合は悪いニンゲンだけいなくなるんだけど、たまに集落ごと消えちゃったりするよ。1952年にアメリカのカンザス州のアシュリーっていう町は建物ごと消えちゃったし、1984年にはニュージャージー州のニューシティビレッジっていう小さな集落では37人みんな死んじゃったし。日本だと青森県の杉沢村ってところとか」
「ご近所メーワクだわ」
「うん、とっても。あのころは悪いニンゲンがいっぱいで監視が行き届かなかったんだ」
「ネコって忙しいのね」
「そうだよ、コナちゃん。僕たちがいなかったらこの世の中は混沌になっちゃうんだよ」
難しいのね。コナちゃんちょっと眠たくなってきちゃったわ。
ママはまだ起きそうにもないし、おひさまはポカポカして気持ちがいいわ。
「ママが起きたらまた朝ごはんもらえるかしら?」
「どうかなぁ? コナちゃんおねだりしてみたら?」
ガンちゃんも2回目の朝ごはんには魅力を感じているみたい。
「うん、そうしようかな」
窓のすぐ下におひさまが当たっているところがあるの。そこに飛び降りて仰向けに寝転がったら、ホラ、とても気持ちがいいのよ。
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