お留守番
コナちゃんもガンちゃんも、ニンゲンのパパママもみんなお出かけしている。今日は一人でお留守番だ。
まだお外は明るいしちょっと寂しいけど、怖くなんかないぞ。
キィ
何の音だろう? なんだか門扉が開いたような音だったけど?
そろそろと音を立てないように注意してお庭の見える窓へ向かう。
門扉が開いている!
パパはいつも門扉を閉めてお出かけするのに、強い風でも吹いたのだろうか?
ジャリ、ジャリ、ジャリ、ジャリ
誰かがお家の裏を歩いている。コナちゃんたちが帰ってきたなら玄関から入ってくるのに。足を踏みしめるようにして知らない足音がお家の周りを回っている。
よく聞いてみたら何人かいる。1人、2人、3人いる。
ギシッ
裏の窓に誰かが力をかけた。鍵の開いている窓が無いか、探しているんだ。知らない人は怖い。どうして誰も居ないのにお家に入ってこようとするのだろう。
ペタペタペタペタ
掃き出し窓に手形が見える。まるで、ここを開けて、と言われているみたいだ。そーっと手を伸ばして掃き出し窓の鍵を開けた。窓ガラスを割られたらコナちゃんが悲しむといけないから。きっと話せばわかる、みんながお留守だって言えば帰ってくれるだろう。
テケリ・リ! テケリ・リ!
「お父さん、変な鳥がいるみたい。あ、窓開いてるよ」
「ここんちは全員留守だ、お父さんのカンがそう確信している」
「俺もそう思う。さっさと済ませちゃおうよ」
「オマエは居間、オマエはキッチンだ。最近は空き巣対策で冷蔵庫とかに現金とかしまってるらしいからな」
そんな会話をしながら大人2人と少年が土足のまま掃き出し窓から入ってきた。ママがお掃除している床を
箪笥に向かう少年の後ろから立ち上がった。お父さんと女の人の方はキッチンに向かった。少年を包み込む。叫ぼうというのか口を開けたので喉まで手を入れて黙らせる。
まず1人。
キッチンに行くと、女の人は冷蔵庫を漁っていた。手当たり次第に物を掴みだして床に投げている。
お腹でも空かせているのだろうか?
「おい通帳あったか?」
「
お父さんは戸棚を開けて紙を掴みだしている。天井を這って近づいた。上から覆いかぶさると銀行の通帳を持ったお父さんが「うわっ」と言った。通帳は食べないように注意しながら溶かしていたら、女の人が振り返ってこちらを見た。
「何やってんの、オマエ?」
すぐに女の人は頭を押さえてうめき声をあげた。
片付けて出ていけ!と精神波で言ったつもりだったけど、強すぎたかな。女の人は大声を上げて逃げ出した。お父さんの身体を包んだまま、身体中の目で睨みつけてやったから怖かったのかもしれないけど。
女の人は急いで駐車場に停めた自動車に乗り込んだ。ドアが閉まる前に食べ終わったお父さんの頭の骨を投げつけてやったら大声で喜んだみたい。さっきよりももっと急いで自動車で立ち去っていったから、急ぎすぎて自動車を出入り口の壁に擦っていくくらいだった。
お片付けしなくちゃ。
女の人が散らかした冷蔵庫と、お父さんが散らかした紙を片付けたら聞き覚えのある自動車の音がしたんだ。
帰ってきた! おかえりなさい!
きちんとお留守番できたから、きっとコナちゃんが褒めてくれると思うんだ。
若葉台のねこ 薬瓶の蓋 @HoldTabDownTurn
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