新しいお友達

久しぶりに雨が上がったよく晴れたある日、コナちゃんは何かが這う音がしたから二階に行ったの。

虫ならママが見つけるまえに捕まえなくっちゃいけないから。

でも、そうしたら壁についている通気口から黒い液体みたいなものが垂れていたの。


「ガンちゃん、雨漏りしてるわ」


「大変、ママに知らせなくちゃ。どこどこ?」


ガンちゃんがお隣まで速足で来てくれたの。

覚えてる? コナちゃんもガンちゃんも猫なのよ。だからどうやって人間のママに知らせるかは毎回悩むのよね。


「コナちゃん、これは雨漏りじゃないよ」


ガンちゃんがコナちゃんのお隣で通気口を見上げて言ったわ。

黒い液体はどんどん薄っぺらく伸びながら玉虫色に光っていたの。それの全身が通気口からお部屋に入ってきて、床の上に落っこちたところはまるで液体化したブラックオパールみたいだったわ。ベッドに置いてある枕くらいの大きさだったけど。


テケリ・リ テケリ・リ


なんだか聞いたことのない声で鳴く虫だったのね。コナちゃんが近づいて行ったらまるで警告するみたいに鳴いたの。


「うるさくしたら、ダメなのよ」


コナちゃんが言ってもテケリ・リは止まらなかったから、コナちゃんは仕方なくテケリ・リを素早く2回猫パンチしたの。


「敵ダ!」


「コナちゃんに勝手に入ってきて、うるさくしたアナタが悪いコなのよ」


テケリ・リ! テケリ・リ!


「ここはコナちゃんなのよ。静かになさい」


ばしばし叩いていたらガンちゃんがコナちゃんを止めたの。


「キミ、野良ショゴスだね? どうしてここのおうちに来たの?」


偶々たまたま目ニ付イタカラ」


「アナタ、お家に帰らないとママとパパが心配するわよ」


「我ニワ家ワ無イ」


そう言ったショゴスはとっても悲しそうだったの。よく見たらショゴスには体中に目があってその目が全部、涙で潤んでいたわ。コナちゃんが叩いたせいだけじゃ無いと思うのよ。


「コナちゃんの言うこと聞いて良い子にしてるなら、ショゴスのお家がみつかるまではコナちゃんのお家の屋根裏にいてもいいわ」


「本当? ショゴス、良イ子ニスル。人間ヲ駆除スル」


ショゴスは嬉しそうに玉虫色に光る黒い身体を伸び縮みさせたわ。


「駄目よ。ママとパパに意地悪したらコナちゃん許さないわよ」


「ジャア人間ワ駆除シナイ。悪イ虫ヲ食ベル」


ガンちゃんとショゴスが「悪い虫とは何か」について話し合っていたら、ママが階段を上ってくる足音がしたの。


「ショゴス、隠れて」


ショゴスは慌ててガンちゃんの後ろに回ったの。でもどんくさい子ねぇ。


「コナちゃん、ガンちゃん、二人で何してるの? なんだか変な音がしていたけど、何か悪戯したの?」


ママったらコナちゃんが悪戯なんかするわけないじゃない。コナちゃんがママを見て「にゃ」って言ったらママはしゃがんでコナちゃんの頭を撫でてくれたの。


「そうね、コナちゃんもガンちゃんも良い子だから悪戯なんかしてないよね」


ママは納得してコナちゃんを抱っこしてリビングルームへ戻って行ったわ。

コナちゃんがリビングのソファーでママを寝かしつけていたら屋根裏から小さく「テケリ・リ」って聞こえてきたけど、あれはショゴスが「よろしくね」って言ったんだと思うの。

ガンちゃんも降りてきてクッションの上で丸くなってるわ。

コナちゃんもそろそろお昼寝しようかしら。

おやすみ、ガンちゃん。


おやすみ、ショゴス。


おやすみ、良いニンゲンたち。

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