第70話 5階層 VS ウツボカブテ 

 4階層内を進んでいくと、死体がいくつか転がっていた。


 死体を見ると、押し潰された死体や、なにかに貫かれた死体がある。


 これらの死体は、暴牛にやられた冒険者のむくろだと傷の具合から判断した。


 他にも、体の一部を剥ぎ取られた暴牛の死体がいくつも転がっていたのである。


 俺達はいくつもの死体が転がる道を進んで行く。


 進んでいくと、再び暴牛が現れて、突っ込んできた。


 1匹しかいなかったので、俺が対応したのである。まず、突っ込んできた暴牛をよけた。


 その後、壁に突っかかった暴牛を刀で斬った。首を一刀両断のもと斬った。


 エマさんのやり方を真似てみた。簡単に暴牛を倒せたのでやり方を真似て正解だった。


「あなた、私のやり方を真似たはね!!」


「はい。エマさんのやり方の方が効率がいいと思いました。」


 俺がエマのやり方の方が効率がいいと言われ、エマは照れたのか顔を赤くした。


「ま、まあ、私は技術力に関しては凄腕だから真似したくなるのも仕方ないわね。」


 エマは、やり方を真似てもいいわよというニュアンスをカルロスに向けて発言した。


「ありがとうございます。エマさんのやり方これから参考にします。」


 エマはさらに照れるようなしぐさをしたのだった。


 その後、さらに進んでいくと、5階層に向かう階段があった。


 階段や階段の周りの冒険者の数は今までの階層より少なくなっていた。


 俺達は、今までと違って人が少なくなっていたので、恐る恐る降りていった。


 俺をは無事に降りることができた。5階層にたどり着く。


 すると、目の前で他の冒険者がなにかと戦っていた。


 そのなにかは無数のつるで冒険者達をはたいている。


 剣などでつるを叩き斬っていたようだが、あまりにもつるの数が多くて、全部を斬ることはできていなかった。


 そして、斬られなかったつるで、冒険者達をからめとっている。


「「うわあ~~!! やめろ・・・くるんじゃねえ・・・」」


 冒険者達は悲鳴をあげていた。だが、なにもできずに全身をつるが覆っていたのである。


 その魔物は、冒険者達をからめとると、自分の方に近づけていた。


 ランタンを前に掲げるとその魔物がくっきりと見えたのである。


 その魔物は、ウツボカブテだった。


 しかも1匹ではない。複数の群れで冒険者達と戦っていたのである。


 このままでは、冒険者達はウツボカブテの体内にある消化液に溶かされてしまうと思った俺はウツボカブテに向かっていた。


 霊力を発しながら突き進んでいた。そして、ウツボカブテが気づく前に冒険者達をからめとっていたつるを斬っていった。


 つるから解き放たれた冒険者達は震えていて叫んでいた。


「「ひ、ひいい~・・・溶かされたくないよ~・・・助けて~」」


「大丈夫だぜ。俺達が助けてやる」

 後から駆けつけたディーラーが冒険者達をなだめていた。


 ウツボカブテの方は、突然現れた俺に驚愕して、動きが遅くなっている。


 そのすきに、ディーラーが冒険者達を引きずりながら、ウツボカブテから距離をとった。


 ディーラーの行動に気づいたウツボカブテは無数のつるでディーラーをからめとろうとしたのである。


 その時、ディーラーの前にエマが出て来て、火の魔法でつるを焼き払った。


 エマは焼き払われたじろいだウツボカブテの本体に向かって突き進み、そのまま一気に本体を叩き斬ったのである。


 さらに、周りにいたウツボカブテの本体も次々に斬っていった。


 斬られたウツボカブテは真っ二つになってその場に崩れ去っていた。


 斬られたところから消化液が漏れだしたため、表皮がただれていたのである。


 さらに、麦の束でできていた地面も消化液で少しだけとけていたのである。その結果地面に浅い穴ができていた。


 俺は、それを見ても気にせずに次々とウツボカブテを斬りふした。やがて全てのウツボカブテを叩き斬ったのである。


 もちろんウツボカブテが崩れ去ったところには複数の浅い穴ができていた。


 俺は、全てを斬り倒したのを確認すると、エマやディーラーの方に振り向いた。


 エマやディーラーは親指を立てて笑顔だ。冒険者達はげぼを出していたが、命に別状はなかった。


 俺はそれらを見て、親指をエマやディーラーに向けた。


 しかし、エマが火の魔法を繰り出した付近を確認すると、壁の牧草や天井・地面の麦は少しやけただれていた。


 俺はそれを見ると、苦笑いしたのだった。

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