第86話 故郷について

 俺達はクリエント街の入り口に着いた。


 クリエント街は相変わらず大勢の人が行き来していて、セントルイス街よりも少しだけ活気があった。


 多くのレンガ造りの建物がきれいに並んでおり、セントルイス街にある護衛用の建物のような大きい建物はなかったため街一帯の建物を見ることができた。


 そのため、多くの建物が立ち並ぶ中、白亜の豪邸が大きくきらびやかに見えた。


 その白亜の豪邸の持ち主は、俺と共に行動しているエマさんの父親のイムルさんである。


「セントルイスの街並もよかったけどやっぱり故郷の街並が一番ね。」


「本当っすね。故郷を見てると何だか落ち着くっすよ。」


 ディーラーとエマさんはクリエント街を見てとても心地が良いのか吹いている風を深呼吸しながら感じていたのである。


「やっぱり故郷は特別のようですね」


「ええ。とても心地がよいわ」


「あなたも故郷にいるときは居心地がよかったでしょう」


「ええ‥‥‥まあ‥‥‥」


 故郷の風景はよかったが‥‥‥俺は魔法が使えなくていじめにあい故郷にあまりよいイメージがないなんてとても言えなかった。


「なんだか渋い反応ね。なにかあるの」


「いえ‥‥‥特にこれといったことはないですよ」


「そう‥‥‥」


 俺とエマさんの間に重苦しい空気が流れていた。


 その空気を換えたのはディーラーだったのである。


「そういえばカルロスの故郷はどこにあるんだ」


「俺の故郷はガリエント王国のずっと北側にある。このクリエント街よりも大きく壮麗な建物が数多く並ぶほど豊かな街並みだ。」


「へえ~あなたの故郷よさそうじゃない。今度行ってみたいわね」


「え‥‥‥ええ。もし行く機会があれば是非案内させてもらいますよ」


「ええ。その時が来たらよろしくね」


 こうして俺達は故郷のことについて少しばかり話をした後、クリエント街の中に入った。


 その後俺達はそれぞれの家に帰り、修行するための支度を行うことにしたのである。


 現在は午後3時であったため、合流する時間は朝8時とした。合流する場所は、白亜の豪邸があるエマさんの実家とした。


 合流する場所と時間を決め終わった後は、それぞれ自分の家に向かっていったのである。


 ディーラーは実家がある街の南側に向かって帰っていった。


 エマと俺は帰る方向が同じなため、途中まで一緒に帰っていった。商店街の近くまで来たら、それぞれ分かれ、俺は宿屋に、エマは白亜の豪邸に向かって帰っていったのである。


 その後、10分かけて宿屋に着き、今日の宿屋の代金を支払い、部屋の中に入ったのであった。

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